化粧品の消費構造変化とグローバル市場【3】化粧品各社2極化の分水嶺に立たされる
2014.09.17
編集部
化粧品の需要があるところで事業を展開するのが市場原理からいって自明の理。国内市場が先細りする中で、需要が旺盛で高い成長が期待できる海外化粧品市場に打って出る大手化粧品メーカーの動きが顕著。すでに海外進出による現地化を進め、軌道に乗ってきた。
資生堂は、2014年3月期総売上高(化粧品売上高)7,620億円に占める海外売上比率は、50.5%(売上高3,847億7,400万円)と国内売上比率49.5%(同3,772億7,200万円)を上回った。2014年3月期の海外売上比率が2013年3月期の44.9%から5.6%アップの50.5%に増えたのは、経済成長を持続するアメリカ市場で好調に推移したのが主因。
アメリカ市場での化粧品事業は、現子会社のベアエッセンシャル株式会社(2010年1月、約1,800億円で買収)の業績が寄与することなどから、海外売上比率はさらに高まる見通し。先行き3年間で、海外売上比率を60%にまで引き上げる方針。
コーセーや花王の子会社カネボウ化粧品、ファンケルも引き続き海外事業を強化する。中でも新規参入組のロート製薬の海外攻勢が目立つ。
同社は「スキンケアの海外売上高と海外比率を開示していない」としているが、2014年3月期では、中国市場を中心に街中の小規模小売店を掘り起こしてチャネルを確立するなどドミナント戦略が功を奏して、アジア市場での売上高が38.8%増の391億円と大幅に伸びた。また、アメリカ市場は11.9%増の62億8,800万円、ヨーロッパ市場は21.2%増の48億円を売り上げた。今後、アジア市場に加えて新興国やイスラム諸国、アフリカなどにも海外展開を加速する考え。2019年3月期までに海外での売上高を1,000億円規模に持って行く方針。
こうした国内大手化粧品各社の海外事業を牽引しているのが中国とタイの化粧品市場。
高い経済成長を背景とした急速な個人所得の増加及び生活水準の向上に伴い、中国市場は巨大な消費市場として存在感を示している。経済発展の恩恵は、沿岸大都市に限らず、周辺の中小都市や内陸地域にも高所得者層を生んでおり富裕者層に次ぐ「新中間層」と呼ばれるような購買力のある消費者層の形成を促すなど消費市場が一挙に広まった。
ジェトロ調査による中国化粧品市場は、2010年で1,221億元(小売出荷ベース)と年率10%で成長。しかし、経済成長が8%台に落ち込んだ影響で伸び率が鈍化、2013年の市場規模は、約1,500億元程度と見られている。
ここへきてタイの化粧品市場も急速に拡大している。タイ化粧品化学者協会調査によるタイの化粧品市場規模(スキンケアとメイクアップ合算)は、2007年の約449億バーツから2012年には約663億バーツへ約48%拡大。年平均成長率は8%を超える水準にあると分析。これまでの高級ブランド志向から個別の需要を満たすカスタマイズ志向に進んでいることが市場拡大を後押ししている。
ともあれ大手、中小を問わず原料、化粧品、OEM事業者にとって需要が先細りにある国内市場で事業を行なうか、あるいは海外に進出して需要を積極的に取り込んで行くか、我が国の化粧品各社にとって2極化といった大きな分水嶺に立たされている。