連載・異業種から化粧品分野に新規参入した上場各社の化粧品事業に迫る【4】大塚製薬、有効成分AMPを10年かけて開発(上)

2014.12.1

特集

編集部

大塚ホールディングス(HD)傘下の大塚製薬が化粧品分野に参入したのは、1990年に滋賀県・大津スキンケア研究所(写真)を設立して製品開発に着手したことに始まる。

肌の健康を考える「健粧品=コスメディクス」という概念のもと「皮膚や毛髪は、エネルギー代謝と密接に関連している」として2年近くかけて植物の発芽や成長に寄与するエネルギー代謝関連成分を探索。その中から細胞でのシグナル伝達物質としてアデニンとリポースの化合物「アデノシン」にリン酸が1つ結合した「アデノシン1リン酸」(AMP)に着目した。AMPは、若竹の節、種子、母乳などに含まれるエネルギー代謝の中核物質として知られていた。しかし、細胞のエネルギーであるATP(アデノシン3リン酸)の量は、加齢とともに減少するため、肌細胞のエネルギー代謝を活発にするAMPの優れた働きをどのように肌に生かして有効な成分とするかが課題となった。

090410_そこで、皮膚に天然酵母由来の「エナジーシグナルAMP」を塗布すると細胞内でAMPと同じ作用で働き、ATPの産生(増産)を高めることを突き止めた。ATPの産生を高めるとき゛シグナル〟として働くのがAMP(アデノシン1リン酸)。細胞内にAMPが十分に存在するとATP産生の燃料となる糖(グルコース)の細胞への取りこみが促進されて代謝が活性化、ターンオーバーを促進する作用があることを解明した。

ヒトの角質細胞を使った試験では、3%のエナジーシグナルAMPを添加すると糖の取りこみが約1.5倍増え、ATPの量が増えることを確認した。さらに、提携する大学の臨床試験で肝班(かんぱん)というシミのある20代から60代までの女性患者27人を対象に1日2回、患部に3%のエナジーシグナルAMP配合の美容液を16週間塗り実際のシミにどれだけ効くかを確かめた。

その結果、医師が患部を診断する方法で判定したところ「改善した」(38.5%)と「やや改善した」(53.8%)を合わせて92.6%に効果が見られた。また、角質細胞の面積は、870μm2から830μm2に縮小し、角質層のメラニン量は68μm2から64μm2に減った。

これによりAMPは、細胞の代謝を高め、細胞の若返りを促す働きをすることから、肝斑を含めたシミ全般、ハリ、たるみ、シワなどを改善することを実証した。

このメラニンの蓄積をおさえ、しみ・そばかすを防ぐ効能を持つ薬用成分AMP(正式名称 アデノシン1リン酸二ナトリウム OT」(愛称・エナジーシグナルAMP)を2004年10月に厚労省から承認を受けた。AMPの開発に着手してから薬用成分の承認を受けるまで実に10年の歳月がかかった。

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大塚製薬株式会社

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