【連載】開花するか遺伝子(DNA)ビジネス(6)経産省、個人対象の遺伝子ビジネスサービス実態調査へ

2013.04.8

特集

編集部

経産省、個人対象の遺伝子ビジネスサービス実態調査へ

個人の肥満、メタボ、禿頭、生活習慣病などの体質改善や健康志向の高まりに伴って 私的な個人を対象(DTC=ダイレクトツ―コンシューマ)に検査キットや採取キットで、遺伝子検査を行う遺伝子取扱ビジネスやヒト遺伝子をデータベース化して遺伝子情報をネットで提供するサ―ビスに乗り出す動きが顕著になってきた。しかし、医療機関を介さずに肥満、メタボ、禿頭などを鑑定・診断するケースもあり経産省は、個人に対する遺伝子サービス事業者の実態調査に乗り出した。

個人の遺伝子情報1人歩き、サービス活動歯止めなし

遺伝子取扱ビジネスに参入しているのは、製薬、通販、健康サービス、歯科、美容クリニック、スポーツジムなど。最近では、バイオベンチャーも参入するなど百花繚乱の状況。
製薬企業の場合、血液や粘膜などを採取する検査キット(販売価格平均1万円)を作製し、代理店やネット通販で販売。また、歯科、美容クリニックなどは、検査キットを購入して体質検査代行(鑑定、検査は、外部の鑑定、検査会社に依頼)するケースが多い。また、医療・検査機関などと提携して個人のDNA情報の保存や提供を行うテーラーメイド医療サービスに乗り出す動きもある。

こうした中で、消費者の要望に沿うことを優先して検査サービスを行っているケースが見られる。遺伝子サービスを行う事業者がダイエットの遺伝子解析データを正しく理解していないことによるサービスの提供やメタボの鑑定診断でダイエットにつながる高額なサプリメントを購入させられたなど消費者センターへ苦情・相談するケースが年間平均30件寄せられている状態。また、遺伝子検査ビジネスのダイレクトメール、バナー広告、パンフレットなどによる事業者の販促活動は、なんの歯止めもなく拡散一途にある。
一方、個人の遺伝子情報を収集して肥満、メタボ、禿頭などの評価・分析をネットでサービスし、病院やクリニックなどと提携して個人の遺伝子情報を収集し,データベース化した個人の遺伝情報を製薬企業、医療機関などに販売する事業者もある。
我が国において遺伝子ビジネスが立ち上がったとはいえ、診断の有効性が確立されていない中で、確率の低い検査結果が一人歩きするなど遺伝子ビジネスに疑問を投げかける専門家が多い。

経済産業省は、個人に関する遺伝子情報の保護と遺伝子検査の標準化を図る観点から「個人遺伝情報保護ガイドライン」を策定し、個人情報保護に関するルールを整備した。しかし、民間企業の検査サービスに関する科学的根拠(エビデンス)や情報提供の有り方(ラベリング)など事業者自身の個人情報の取扱いに関する業界指針がない。
このため経産省は、遺伝子情報サービスの実態調査に乗り出し、来年度中にも新たな業界指針を定めて取引のルール、消費者への徹底を図る計画。同時に、厚労省と連携して事業者と医療機関の間にある検査ビジネスに対する共通認識、検査ビジネスに医師の診断、処方を義務づけることも検討する。個人やサービスを提供する事業者双方にとって遺伝子検査の科学的、医学的な妥当性があって初めて消費者の病気予防、治療が図れることを認識する必要がある。それは、正確な遺伝子解析によって「人間が健康で生きられるか」という、パラダイムと自らの病気が、いかに遺伝子に関わっているか、を理解する二つパラダイムを手に入れることができる。 このようにヒトの遺伝子を検査・解析して病気の解明や予防、再生医療、新薬の開発、健康の維持・管理などを行う遺伝子ビジネスは、一段とすそ野が広がってきた。

現在、遺伝子解析装置(シ―ケンサ―)やDNAチップ、受託解析を中心とした遺伝子ビジネスの市場規模は、約350億円にのぼる見込み。先行き、高速で解析データを正確に読み取る次世代型シ―ケンサ―の実用化やDNAチップの用途拡大、iPS細胞の新市場創出などを要因に遺伝子ビジネス市場は、2018年度に1000億円の巨大市場に膨らむ見通し。

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