【連載】化粧品各社のイノベーション研究【27】アイビー化粧品③ ~皮膚外用剤と美容添加剤を開発し化粧品に応用~
2016.06.8
編集部
アイビー化粧品の化粧品基盤技術に関わる研究開発成果も注目される。
ここへきて埼玉県の北西部に位置する美里町に美里工場(ISO9001認証取得)と同じ敷地内に建設(平成4年)された開発研究所は、真皮の細胞を元気づける成分「老化防止用皮膚外用剤」を開発し特許を取得(2015年3月)した。また、機能性美容添加剤「シルクフィブロイン水溶液」(写真)とその製造法を開発するなど、大きな成果を生み出している。
老化防止用皮膚外用素材の開発は、線維芽細胞活性化効果を有し、加齢による皮膚の老化を防止することを目的に開発した。
老化防止用皮膚外用剤の提供方法として、ホエイタンパクを皮膚外用剤基剤に含有させる方法とワサビノキおよびその抽出物、ならびにアセチルテトラペプチドよりなる群から選択した1種または2種以上を組み合わせて含有させることで、皮膚真皮内の線維芽細胞を活性化し、加齢変化に伴うシワ、タルミなど皮膚の老化症状の発現または進行を防止することを見出した。
真皮の細胞は、肌の結合組織の中にあるコラーゲンやエラスチンを生み出し、シワやたるみと大きく関わっている。真皮の細胞が元気に分裂を繰り返し、常に新しい細胞を生み出すことができれば、肌のハリは保たれる。
そこで着目したのが、再生医療の考え方。肌本来の機能を取り戻すために、細胞を元気づけ活性化できる成分はないか、実験を繰り返した結果、数多くの成分の中からホエイタンパク、ワサビノキ、アセチルテトラペプチドを有用成分として選定、3成分を組み合わせることで細胞活性化に繋げた。
この細胞を元気づけ活性化できる成分の開発に続き、2018年4月にシルク繊維状のタンパク質を高分子の状態で、水溶液中に安定的に溶解した機能性美容添加剤「シルクフィブロイン水溶液」とその製造法を開発(特許出願済み)した。共同研究先との共同研究により開発したもので、共同研究先の名称については「先方の希望により非公開」としている。
共同開発したシルクフィブロイン水溶液は、シルク繊維に含まれる絹シルクフィブロインを水溶液状態で長期に安定化することができ、合わせて水溶液に配合した有用成分の経皮浸透性を高めることを特徴とした機能性美容添加剤。
これまでのシルク素材を基にした化粧品原料は、主にシルクの加水分解物や誘導体であったが、今度開発したシルクフィブロイン水溶液は、シルク繊維から抽出したシルクフィブロインを高分子の状態で、水溶液中に安定的に溶解できるのが特徴。
現在、シルクの持つ高級感と経皮浸透性を高める効果が実現できる化粧品開発に取り組んでおり実用化が待たれる。