【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【23】ハラテックインターナショナル① ~保湿効果の高い納豆樹脂を開発、化粧品の原料として販売~
2016.10.16
編集部
株式会社ハラテックインターナショナル(福岡県福岡市、社長 原美和子氏)は、2003年3月に大学の助教授が自ら研究していた納豆樹脂の事業化を目的として設立した研究開発型ベンチャー。2006年6月にハラテックから現社名に変更した。
納豆樹脂は、納豆の粘りを出す高分子物質「ポリグルタミン酸」に放射線(ガンマ線)を照射すると、寒天のようなブヨブヨしたゲル状になる。これを凍結乾燥させると白い粉末状の樹脂ができる。この成分が、納豆樹脂といわれる新素材。
同社は、納豆の糸を大量生産する方法として、植物のキャッサバ(タピオカ)から取り出したデンプンを原料として、納豆菌でポリグルタミン酸を発酵させて納豆菌を培養して生産している。
現在では、このキャッサバから取り出したデンプンを原料として、納豆菌でポリグルタミン酸を発酵生産し、年間数百トン生産できるようになった。
納豆樹脂の特徴は、自重の2000倍以上の重さの水を吸水し、平均2週間程度で土に分解するなど吸水性、可塑性、生分解性などの特性に優れる。
吸水性に優れているのは、納豆樹脂1gで3g以上の水を蓄えることができること。また、可塑性に優れているのは、外から力や熱を加えると変形し、力を取り去っても元に戻らないなどプラスチックと同じ性質を持つ。さらに、生分解性に優れているのは、微生物が分解すると水と炭酸ガスになり、地球環境に優しい素材といえる。
このように納豆の糸に放射線を照射して生成する納豆樹脂は、水を吸収し、膨潤した透明なハイドロゲルである。保水力は、納豆樹脂1gで5Lの水が蓄えられる。市販の紙オムツなどの約5倍の吸水力がある。
放射線照射量と納豆の糸の濃度の組み合わせで、いろいろな性状をもつ納豆樹脂が得られる。放射線照射で適度の架橋を形成し、生じた空間に水分子が閉じ込められ吸水力が生じる。
納豆樹脂の構造を照射線量40kGyと90kGyでそれぞれ合成した納豆樹脂を用いて、その蜂の巣構造を比較した(写真)。
納豆樹脂の蜂の巣構造比較は、納豆樹脂を膨潤、凍結させた後、氷の部分を除くと蜂の巣状の六角形をした構造体(氷の抜け殻)ができる。
吸水率が高い納豆樹脂(照射線量40kGy)の蜂の巣構造体の1つ1つの大きさは、吸水率の低いもの(90kGy)に比べて大きな構造体になっている。蜂の巣状の構造体の中に水が抱え込まれ、高い吸水性を示していることが明らかになった。この保湿性効果の特徴を生かしてスキンケア化粧品の原料として納豆樹脂の販売に乗り出している。