【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【50】ウィズアルファ①~即装着・低価格のかつら開発、特許取得
2017.02.9
編集部
オーダーメイドかつら専門会社の株式会社ウィズアルファ(福岡市、社長 宮崎弥生氏)は、自然なボリュームで薄毛をカバーする男性用かつらをはじめ、がん化学療法や円形脱毛症などの医療用かつら、ファッション用途の女性用かつら、脱毛症の子供用かつらなど、多種多様なオーダーメイドかつらを製造・販売している。
オーナー経営者で現社長の宮崎弥生さんは、2002年1月の創業当初、OLを経てフリーでホームページ作成代行業を行っていたが、「何か自分で売れる物はないかと思っていたところ、かつらの販売を紹介され、それまで全く理美容と関係のないかつら業界へ参入した」。
以降、インドネシアの大手毛髪加工会社と直接契約を行い、日本国内へ安定輸入することに成功。原価削減をはかり、採寸と納品は、提携の理美容室に外注するというビジネスモデルを構築した。
インドネシアとの取引には、発展途上国の農産物や雑貨などを適正な価格で継続的に輸入・消費する取り組み「フェアトレード」を導入している。フェアトレードは、日本では「公正な貿易」「オルタナティブ・トレード」などともよばれる。
同社がインドネシアとの取引にフェアトレードを導入したのは、「発展途上国から先進諸国への輸出にあたり、立場の弱い発展途上国から搾取することなく、公平さ保って健全で継続的な 開発や生産活動を促す」のが狙い。
「劣悪な環境の中で、工場の工員さんが苦しい思いをしながら嫌々作製されたカツラだったら、当社はお客様にご提供 することはできません。なぜなら、当社は、関係している皆様全てが幸せになるためのカツラ作りを目指していることを企業理念にしているからです」―。
同社が独自のかつら技術でベンチャーとしての存在を高めたのが、生え際部分をはさみで切って短時間で仕上げられるかつら(写真)を開発し、特許を取得(2014年)したことが挙げられる。
単髪の男性向けに開発したもので、2010年から市場に投入した。特徴は、生え際を見せるかつらで、頭の型を取らずに済み、来店した日から装着できるのがミソ。
これまで男性用かつらは、装着する人の頭を型取りして成形したレース生地に植毛するため、完成するまで1~2ヵ月かかる。
そこで、生え際部分に切ってもほつれないレース生地を使用。大きさや後頭部の形が異なる6種類の既製品から合うものを選んで、美容師が額やもみあげ、襟足部分の生地をきって仕上げる。価格は、14万8千円で型取りする従来品より2万円から4万円程度安い。
こうしたかつら技術と急な脱毛症で早く利用したいとのユーザーニーズに応えて、すぐに使える従来比70%減の低価格かつらの開発が特許取得につながった。