【連載】美容漢方~漢方の新たな市場を創出~【13】金匱会診療所、国産生薬にこだわった処方で健康と美を実現

2017.09.28

特集

編集部

医療法人社団金匱会診療所(東京都中央区)では、西洋医学や漢方製剤(エキス剤)では効果が今一つで悩んでいる患者にニーズがある。日本古来からの伝統的な漢方を重んじ、国産の生薬を使った昔ながらの湯液(煎じ薬)治療を中心に行うことで、患者の様々な疾患に対応している。

同所は1957年(昭和32年)に、当時の津村順天堂社長が、昭和漢方復興の祖と言われる大塚敬節氏の指導を受けて設立。法人組織として日本最初の漢方専門医療施設となる。設立当時は大塚氏をはじめ、藤原健氏、伊藤清夫氏、相見三郎氏、吉村得二氏、山田後胤氏と日本漢方を代表する錚々たるメンバーが並ぶ。このうち、山田氏が現在、理事長を務めている。

同所の基本方針は、「漢方を研究しようという強い志を立てる」「散木になるな」「師につけ」など大塚氏の遺訓を受け継いでおり、漢方の本質である経験医学を日々丁寧に積み重ねて、患者に対するケアを重視している。

現状、漢方と言えばエキス剤が主流だが、「本来の漢方は湯液。エキス剤が無効であっただけで漢方が効かないと考える使い手と患者が増えると、漢方が捻じ曲がってしまう」(理事・薬局長兼事務長の針ヶ谷哲也氏)と危惧する。現在、多くの漢方は公的医療保険制度の枠の中で使っているため、病名に合わせた漢方薬が処方され、必ずしも患者の症状に合致した処方となっていないことが課題としてある。

本来の漢方は、現段階の体の病態、いわゆる「証」を決定して、その証に合せて処方する。同所では、この漢方独自の診断方法で患者一人ひとりの体質・症状に合わせた、オーダーメイドの処方を提供しているので、西洋医学的にみて病名や原因のはっきりしない病気や、逆に原因はわかっていても治療法がない難治性の疾患でも多くの治療実績がある。

証を決定する上では、陰陽、寒熱、表裏、内外、虚実といった漢方独特の概念を駆使して、四診(望診、聞診、問診、切診)と呼ばれる診察法を用いる。切診では脈診のほか、日本独自の腹診も使うのが特徴的。「陰陽、寒熱、表裏、内外、虚実をきちんと判断していくことが大切。そうでなければ副作用が起きやすくなる」(針ヶ谷氏)といい、単純に病名に合わせただけの漢方処方に対して警鐘を鳴らす。

漢方薬は、複数の生薬で構成される。同所では、その一つ一つの生薬に対して強いこだわりがある。現状、生薬の多くは中国からの輸入品に依存しているが、“身土不二”という言葉があるように、「日本人には日本の土地で育った生薬の方が合う」(針ヶ谷氏)と考えており、国産の生薬を積極的に取り入れている。

例えば当帰では、奈良県大深のヤマトトウキを採用。「市場流通量はとても少ないが、湯液にして飲んだ時に美味しく、長年使ってきて有効な症例がたくさんある」(針ヶ谷氏)と品質の高さに自信を示す。また患者に対して、日本の農家の栽培風景などの写真を見せながら国産の生薬であることを説明すると、「より安心感を持ってもらえて、湯液の効果が上乗せされる傾向がある。併せて生薬の自給率向上にも貢献できる」(同氏)。

同所では、美容やアンチエイジングを目的に来所する患者は少ないが、皮膚疾患のお悩みは多い。若い人ではニキビやアトピー性皮膚炎、年配の人では関節炎といった病気が挙げられる。「これらの疾患は、視点を変えれば美容でありアンチエイジングとも言える。具体的な処方としては、ニキビには清上防風湯、十味敗毒湯、当帰芍薬散などを主体に使う。アトピー性皮膚炎には桂枝加黄耆湯や十全大補湯などを用い、痒みに特化した荊芥、連翹、樸樕などを加えて処方する」(針ヶ谷氏)。

また、美容の観点から見ると、楊貴妃や西太后も愛用したとされる阿膠はとても有効な生薬。「本物のロバのにかわを使っている」(針ヶ谷氏)ほどのこだわりがあり、肌の潤いを助けてくれる。このほか血流に良い当帰、芍薬、川芎や、イボ取りなどに有効な薏苡仁なども肌を健康美に導く。

「超高齢化社会を迎えている日本では、今後、漢方はますます重要な役割を担っていくことになると思う。病名ではない、証に基づいた本来の正しい漢方をこれからも伝えていきたい」(針ヶ谷氏)と意気込む。

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医療法人社団金匱会診療所

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