【特別企画】大手各社の化粧品事業戦略に迫る[2] 双日コスメ、東南ア進出・健食に新規参入

2013.07.9

特集

編集部

医薬品分野参入検討へ、総売上高100億円計画

総合商社双日の子会社双日コスメティックスは、新たに東南アジア市場で化粧品の販売に乗り出す。また、健康食品事業に新規参入するほか、医薬品分野にも新規進出する方向で検討を始めた。一連の事業領域を拡大することで3年から5年後に総売上高100億円乗せを狙う。

化粧品の海外事業展開は、インドネシア、ベトナムなどを主なターゲットに現地のマーケット規模や市場の成長性、価格・購買消費動向を鑑みながら、販売チャネルなど総合力に優れたパートナーを代理店にして今年後半から販売に乗り出す。同社の信頼性、品質保証に裏付けられた高機能性化粧品を市場に投入し、訴求力、ブランド力の浸透を図り市場を牽引する中間層に売り込む狙いだ。

化粧品販売のグローバル化と合わせてOEMメーカー(相手先商標)と共同開発した健康食品を今年7月から国内の生協ルートに乗せて販売する。また、一般市薬品のネット解禁に合わせて親会社双日のライフサイエンス事業室と共同開発した運動器症候群(ロコモティブシンドローム)対応の健康補助食品を市場に投入する方向で検討を始めた。さらに、今年度から来年度にかけてエイジングケア基礎化粧品など新製品5品目を生協ルートに投入する。

こうした一連の事業領域を拡大して3年から5年後に総売上高を現在の60億円から100億円の大台に乗せる計画。

同社が化粧品の国内販売に乗り出したのは、2010年4月に「ナチュレシア」(商品名)を通販市場に投入したのが最初。現在まで、美白、アンチエイジング(抗齢化)対応の化粧品7品目を市場に投入している。いずれも原材料サプライヤー、化粧品メーカー、0EMメーカーなどと共同開発したもので「全国生活協同組合連合会」(総組合員数2,700万人)の453店舗で販売。最近では、チラシ頒布による共同購入に力を入れるなど拡販に打って出ている。

特に、1986年から取引を開始した同社最大の販売チャネルに位置付ける生協に対しては、新商品販売前に生協職員対象の研修会(工場見学会兼ねる)を実施している。生協の組合員に商品知識や販売方法などを懇切丁寧に教えることで信頼関係が醸成され、収益の向上に繋がっている。

現在、化粧品事業(製造は外部委託)は、販売の最前線営業部門と市場ニーズの把握や商品、販促戦略を行うマーケティング部門、最新の化粧品原料を使って顧客対応の化粧品開発を行う商品企画部門が連携してスピーディに事業展開する体制を敷く。機敏な組織が化粧品事業の選択と集中を活性化させる源泉とも言える。

国内化粧品市場が成熟期に入り化粧品事業が大きな分水嶺に立たされる中で同社は、新たな成長の道標を示した。会社設立(2007年4月)6年にして事業領域の拡大を打ち出し、事業の進むべき羅針盤を明確に位置付けた。双日グループと連携を図った今後の事業展開が極めて注目される。

 

100億円達成に強い意欲

運動器症候群対応の医薬品を共同開発

双日コスメティックス株式会社 代表取締役社長 濱中通陽氏

IMG_3584双日コスメティックス (2) ━国内と海外の化粧品市場をどのように
評価・分析していますか。

「国内化粧品市場は、2008年のリーマンショックを契機に需要の伸びが鈍化傾向を辿り、消費人口の減少も加わって構造変化を起こしています。2012年度は、伸び率が対前年度比100数%と若干上向きに転じていますが新規参入の動きもあり競争は激しさを増しています。一方、世界市場を牽引してきた中国市場は、一服感の状態です。今後、海外市場の軸足は、東南アジア市場に移って行くと見ています。」

 ━グローバル化への対応は。

「マーケット調査を踏まえて今年の後半にも経済成長著しいインドネシアや経済復興を目指すベトナムなど東南アジア市場で双日のネットワークを生かしながら現地のパートナーを代理店に化粧品の販売に乗り出す計画です。日本との政治問題などが絡んでいる中国へは進出するつもりはありません。一方で、経済成長率が4.5%台に伸びており、金利が14%台に上昇しているベトナムなどが候補地の対象になります。
(※経済成長率と金利の記載について誤認がありましたので、強調部分を7月24日に訂正致させていただきました。)

 ━成熟した化粧品市場の中で国内での事業展開をどのように進めて行く考えですか。

「東南アジアでの事業展開と合わせて化粧品事業のボリュームアップを図る考えです。今年度から来年度にかけて新たに家族全員で使える化粧水や既存商品を進化させたシミ、しわ対応の基礎化粧品などを生協ルートに投入します。当社の独自ノウハウであるチラシを使っての共同購入や個客の掘り起こしを一段と推進して行く考えです。また、新たな事業領域の拡大に打って出る考えです。今年7月から0EMメーカーと共同開発した飲料や食品などのサプリメントを生協ルートに乗せて販売します。また、中期的に医薬品事業に乗り出す方向で検討を始めています。」

 ━具体的にどのような医薬品を市場に投入する考えですか。

「双日のライフサイエンス室と共同開発した骨や関節、筋肉などの運動機能が衰える運動器症候群(ロコモティブシンドローム)対応の医薬品(第1分類市販薬)を考えています。2009年6月に施行された改正薬事法で副作用などリスクの高い順に市販薬は、1類から3類に分類されています。第1類は、もともと医師が処方していた高リスク薬で胃腸薬、解熱鎮痛剤など約100品目にのぼります。市販薬のネット販売が原則解禁されましたが20品目程度の市販薬販売が不透明な状態です。同時に、生協ルートに乗せて販売する場合の問題点を含めて新たな流通チャネルの創設、生産・販売、カスタマなどのインフラ整備について双日のライフサイエンス室と詳細にわたって詰めている段階です。中期的なテーマですが新たな事業領域の拡大に向けて当社の事業規模を3年から5年で現在の60億円から100億円に持って行きたいと考えています。」

 

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