【連載】大手化粧品会社の研究㉕伊瀬半とグループ企業の会社研究 ~7社でグループを構成、産業遺産紅ミュージアム~(上)

2018.05.29

特集

編集部

国内屈指の化粧品老舗企業株式会社伊勢半(東京都千代田区、未上場)は、文政8年(1825年)に江戸日本橋で創業した紅屋を起源とする。以来、現在まで193年の歴史を刻み7社でグループ(表参照)を形成し、2025年に創業200年を見据えながら一段と成長の軌跡を辿る構え。

伊勢半は、本社機能を担う「株式会社伊勢半本店」を筆頭に、合計7つの企業でグループを構成。その役割は、ブランドメイク・単品メイク・スキンケアなどの化粧品製造販売を主軸に、医療系化粧品販売、文化事業、不動産事業、祖業である紅の製造販売など、トータルプロデュース力で顧客サービスに努めている。

7社のグループ会社は、グループの本社機能を担い、不動産を含む資産運用管理及び本紅(小町紅)化粧品、食紅の製造・販売、紅ミュージアム(東京都港区)の運営管理を行っている伊勢半本店(設立1947年)が担当している。

伊勢半本店は、文政8年(1825)の創業以来、日本の伝統的な「紅」を当時の製法と変わりなく作り続けている。口伝でのみ受け継がれた秘伝の製法のもと職人が丹精込めて仕上げた「紅」は、玉虫色に輝く「小町紅」として昔も今も変わることのない紅(くれない)の華やかさを紡ぎだしている。

一方、同社が運営・管理する紅ミュージアムは、紅の歴史と文化、創業時から今日まで守り続けている紅作りの「技」を伝えるためのミュージアムを市民に開放している。

同社が紅ミュージアムを開設したのは、2003年8月に東京都の江戸開府400年の記念行事(1月~12月)に同社が協力事業として行ったのが契機。同時に、女性の唇を優しく彩ってきた赤色は、時代の変化や紅屋の衰退とともに失われつつある。そこで、江戸時代から続く最後の紅屋としてこれから先の世にも紅の文化と技を途切れることなく繋げていくことを狙いに紅ミュージアム開設に踏み切った。

紅ミュージアムは、紅の歴史的背景や諸相を紹介する資料室と紅の色彩的な魅力を体験するサロンの2つのゾーンから構成されている。写真は、紅ミュージアムに展示の小町紅資料。

紅を見て、紅に触れ、紅を知る―。日本人の生活を豊かに彩ってきた美麗な赤を演出する紅ミュージアムの遺産は、極めて貴重な産業遺産といえる。

 

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