【連載】化粧特許と知的財産権⑨ヒカリ、腱鞘炎にならないシザーズを開発(中)

2019.06.21

特集

編集部

ヒカリは「刃物の角度と研磨法」の特許を取得。その技術を用いて販売後も最高のコンディションで使ってもらうために、研磨サービスを提供している。また、各ユーザーの手や指に合わせて部位の形状などを調整するカスタマーサービスも実施。
理美容師にとって、フィットするハサミは、仕事のしやすさだけでなく腱鞘炎を防ぐためにも非常に大事なことから細かい希望にも丁寧に応えている。

従業員は、入社後、配属された部門にかかわらず、全員がハサミの構造や刃付けなどを勉強する。すべての従業員がハサミに関する深い知見を持っていることが、同社を高く評価する理由の一つといえる。
現在では、使い手の負担を軽減する「SEV」を搭載したモデルをはじめ、35シリーズ110種類以上のラインナップを展開するまでに至っている。
この一貫した開発とサービス力が、理容師・美容師の使い勝手の向上を実現した大きな原動力になった。

ところで同社は、約50年前に蛤刃のシザーズを作った時から、常識を変える製品を生み出し、業界のパイオニアに躍り出た。現在、同社が次の世に送り出そうとしているのが、腱鞘炎にならないシザーズの開発。
理容師・美容師は、一人のヘアスタイルをつくるのに、700回もシザーズ開閉の動作を繰り返すといわれる。シザーズの開閉は、手に負担をかける動作のため、理美容師にとって腱鞘炎は、職業病ともいわれる。
そこで同社は、人間工学に則り、手に負担がかかりにくい構造のシザーズを開発に取り組み実用化にメドをつけた。

上級の材質を使用し、切れ味と長切れを実現したヒカリブランドの最高級シリーズ「SEV COSMOS S-16M」を開発した。特許技術「SEV」を用い、手の負担の軽減を目指したシリーズ。鋭い刃付けをした3段の階段状のくし刃は、業界初の試み。また、「Stella COSMOS803」は、特許技術のカーブリングとクォーターリングで、手首の負担と指にかかる無駄な力を軽減。指に合わせて静刃の曲がりを実現した。できるだけ早い時期に理容業界で高い知名度を誇る製品へと成長させる計画。

かつてどこにもなかった蛤刃のシザーズが業界の常識となったように、他社が追い付き追い越そうとしている環境の中、同社は、業界きっての開発力を生かして「どこにもない製品」を生み出し、理美容業界に新たな驚きと感動を与える考え。

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