【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目㉓毛髪成分開発(下) ~毛髪成分ジチオビスを再生・可視化等を実現~
2020.06.3
編集部
ホーユー株式会社(愛知県名古屋市)は、毛髪の主要成分アミノ酸に着目した研究を進める中で、直近の研究成果としてホウライシダ葉エキスにアミノ酸の1種「ジチオビス」を再生させる効果があることを発見した。
毛髪は、ケラチンというタンパク質が大部分を占め、そのケラチンは多くのアミノ酸から構成されている。特に、毛髪は、皮膚に比べてジチオビスが多いことが特徴。
このジチオビスが多く含まれているため毛髪は、硬く弾力性がある特性を持っている。また、毛髪内のジチオビスは、ダメージを受けると切断されて様々な状態に変化する。しかし、毛髪は、死んだ細胞組織の集まりであるため、これまでダメージさせずにジチオビスに戻すことは難しいと考えられてきた。
そこで同社は、毛髪内のジチオビスがヘアカラー、パーマ、熱などのダメージの種類の違いによってどのように変化するか、詳細を調査するとともに、様々な成分に対する影響を研究した。
その結果、「ホウライシダ葉エキス」を傷んだ毛髪に処理すると毛髪内のジチオビスが増加することを見出した。
こうしたことから「ホウライシダ葉エキス」には、毛髪ダメージによって生成されたジチオビスを再生する効果があることを解明したもの。 この知見について同社は、毛髪成分を今後の新製品開発に応用していく方針としている。
この毛髪成分ジチオビスについて株式会社ミルボン(東京都中央区)も毛髪内部のジチオビスをミクロレベルで可視化することに成功している。
毛髪内部のジチオビスは、カラー、パーマ施術時の酸化処理によって生成し、毛髪のダメージの主要な指標として知られている。
だが、毛髪内部のジチオビスの存在部位を高精度に捉えることができなかったため、毛髪内部のどの部分が傷んでいるのか正確にわかっていなかった。
そこでミルボンは、強いエネルギーの赤外線を利用して毛髪内部のジチオビス生成部位をより高精度に可視化する技術の確立に取り組んだ。
可視化の方法として顕微FT-IR法を用いて微小領域の分析を行った。顕微FT-IRを用いて過酸化水素へ浸漬し、酸化させた女性毛髪内部のジチオビスを高精度に可視化すると浸漬時間の増加に伴い、毛髪内部にジチオビス由来の吸収ピークが強く現れる傾向を確認した。更に、女性毛髪Aと女性毛髪Bの毛髪表面に生成するジチオビスの生成度合いに差が見られないのに対し、毛髪内部に生成するジチオビスに差があることを確認した。
同社がジチオビスの可視化研究に取り組んだ背景は、パーマ等の施術に伴って生じる化学ダメージが毛髪内部のどこで起こっているかなど化学ダメージについて業界各社共通の課題があったことによる。