専門学校での学びから、映画やテレビの現場における数々の著名なコラボレーションまで─。Sarah Damen(サラ・ダーメン)のキャリアは、たゆまぬ努力と情熱の積み重ねによって築かれてきました。現在は自身の経験をもとに、メイクアップを仕事にしたいと願う人々へ向けて実践的なアドバイスと想いを惜しみなく伝えています。
多くの少女たちと同じように、彼女も幼い頃、鏡の前でメイクをする母親の姿を憧れのまなざしで見つめており、自分もいつか挑戦できる日を心待ちにしていました。
「映画の世界で働くことを夢見ていました。この業界の舞台裏や制作の裏側に強い関心があり、特にメイクアップがもたらす変化には深く魅了されました。特殊効果でなくても、メイクひとつで人の印象が大きく変わることに強く惹かれたのです」と彼女は語ります。
現場経験で広がるメイクアップの可能性
情熱に突き動かされ、Sarah Damenは2006年、一般バカロレアを取得した後、ITM Parisにて2年間のメイクアップ課程に進みました。彼女はそこでメイクの基本を学びました。陰影の付け方、顔や目の形に応じたメイクの配置、眉のバランスの取り方などです。この養成課程の一環として、彼女はヘアスタイリングや特殊効果の授業も受けました。
「テレビ番組の撮影現場やファッションショー、フェイスペインティングなどの現場でインターンをする機会がありました。こうした経験を通じて、メイクのスキルを活かせる分野が非常に多岐にわたることを知ることができました」
メイクアップの第一歩
キャリアをスタートさせるにあたり、最初に化粧品ブランドの販売拠点で働き始めました。その中で、来店する顧客へのアドバイスやメイクサービスの提供を担当することになります。この経験は非常に実りあるものだったと彼女は語ります。
「私は数年間、M.A.C.で働いていました。この経験を通じて、技術を磨くことができました。なぜなら、スクールを卒業したばかりの頃は、実践を重ねることが必要だからです。そして同時に、フリーランスのメイクアップアーティストとしても活動していました」
映画業界への転機となった出会いと挑戦
映画業界に足を踏み入れるまでに時間がかかった、と彼女は打ち明けています。なぜなら、この業界は人脈がものを言う世界だからです。十分なネットワークがなければ、居場所を確保するのは難しいのです。しかし、彼女の粘り強さと情熱が実を結びました。ある日、友人のプロデューサーが、フランス人アーティストのミュージックビデオでのメイクを依頼してきたのです。
「とても順調に進んだので、そのアーティストは終了後に私の連絡先を控えてくれました。その後、彼女とは数年間にわたって一緒に仕事をすることとなりました。この出会いが、すべての始まりでした。本当に、たったひとつの出会いがきっかけだったのです」
アーティストとの特別な関係
この経験によって、テレビ番組の撮影現場やミュージックビデオ、広告プロモーションなどにおけるメイクアップの魅力を再確認します。
「メイクアップアーティストとして、私たちはアーティストと数週間にわたって一緒に仕事をすることがあり、その中で信頼関係が築かれていきます。次第に、その人が好むスタイルや演出の方向性がわかってくるので、コミュニケーションが円滑になり、私たちの仕事もよりスムーズに進みます。そして、このような世界観全体が私にとってとても魅力的でした」
テレビ番組や撮影現場で活躍するメイクアップアーティストとして
フランス人アーティストとの長期にわたる仕事は、メイクアップの世界に本格的に足を踏み入れるきっかけとなりました。彼女は、数年連続で「ミス・フランス選考会」の番組において、チーフメイクアップアーティストであるMashuのもとで活動しました。
「このような現場での経験は、とても印象深く、心から楽しむことができました。舞台裏には独特の高揚感が漂っていて、誰かが選ばれることはわかっていても、それが誰なのかは最後の瞬間までわからない。その張り詰めた空気感が、メイクアップという仕事に一層の緊張感とやりがいを与えてくれたのです」
2021年には、Sarah Damenの友人であるメイクアップアーティストのBilitys Barabasが、映画業界への扉を開いてくれました。
「彼女はドラマ『Lupin/ルパン』でチーフメイクアップアーティストを務めており、アシスタントを探していたことから、私に声をかけてくれました。私はそのオファーを引き受け、数か月間にわたって共に現場で仕事をしました。この友人とのご縁が次につながり、ドラマ『Emily in Paris/エミリー、パリへ行く』の撮影にも関わる機会を得ることができました。現場では、チーフメイクアップアーティストであるAurélie Payenから直接オファーをいただいたのです」と彼女は語ります。
華やかさの裏にあるメイクアップアーティストの厳しい現実
メイクアップアーティストが関わる媒体によって、求められる要件は大きく異なります。例えばテレビでは、スタジオの強い照明を考慮し、テカリを抑えるとともに、カバー力を調整することが不可欠です。一方、映画の現場では、より自然な仕上がりが重視されます。さらに、レッドカーペットでは、セレブリティそれぞれの好みに合わせたメイクが求められます。このように、媒体ごとに異なるニーズがあるからこそ、メイクという仕事には常に新鮮な刺激があり、現場で働くことへの大きなモチベーションになっていると、彼女は実感しています。
ストレスの多い職業でもある
メイクアップアーティストという職業には夢が広がります。スターたちのそばで仕事をし、飛行機で世界を飛び回り、映画の撮影現場やカンヌ国際映画祭などに常に関わっているようなイメージを抱かれるかもしれません。もちろん、それは素晴らしい仕事です。しかし同時に、この職業が常に激しい競争の中にあることも忘れてはなりません。さらに、報酬は固定されておらず、不安定さを伴うこともあります。
「この仕事で十分な収入を得ることは可能ですが、月によっては仕事の量に波があるため、その不安定さを理解しておくことが大切です。ストレスを感じやすい場面も多く、それを受け入れる覚悟も必要になります。とはいえ、それを受け入れることは、決して簡単ではありません。」
学び続ける姿勢が支えるプロのメイク技術と発信力
技術を磨き、トレンドを追い続けるために
メイクアップの分野では、毎年新たなトレンドが登場します。2025年の傾向はスキンケア領域と密接に関係しており、そのため、これまであまり深く関わってこなかったこの分野にも注力するようになったと彼女は語ります。
「施術の前には、俳優の肌状態に応じたコスメで肌を整えます。撮影中に何度もメイク直しが入っても、肌は自然に輝いていなければなりません」と強調します。
そのため、まずセラム、次に肌タイプに合わせた保湿クリーム、そしてアイクリームを使用して肌を整えます。さらに、メイクを一日中キープするために、保湿効果のあるフィックススプレーも使用しています。こうした肌準備の考え方の一環として、彼女は今後、ツールを用いたフェイシャルマッサージの技術習得にも取り組みたいと考えています。
「それを取り入れれば、お客様にご提案できるようになりますし、リラックスできる時間を提供できることで、肌にも良い影響を与えられるはずです」
スキルを広げるために
今日、メイクアップアーティストに求められる能力は、もはやブラシの使いこなしだけにとどまりません。メイク以外の技術も学び、スキルを幅広く磨くことが重要であり、それがこの職業において特に重視される「多様性」につながります。
「私は最近、Nouvelles Esthétiquesで糸による眉毛の脱毛を学びました。眉は視線の印象を大きく左右しますし、この技術で美しく整えることができるようになったことで、私の施術全体に確かな価値が加わりました」と彼女は述べています。
メイクアップアーティストとしての技術を発信する
SNSやインフルエンサー全盛の時代において、プロのメイクアップアーティストが注目を集めるのは、決して簡単なことではありません。もちろん、長年の経験が評価につながる場面もありますが、それだけで道が開けるわけではないのです。そのため、彼女は「常に学び続ける姿勢が何より大切です」と語ります。優れたメイクアップアーティストであるためには、基本的な技術をしっかりと身につけていることに加え、日々進化する新たな技術に柔軟に対応する力が欠かせないからです。
「学ぶ姿勢を持ち続けること、そして進化し続ける技術に対して心を開いていることが大切です。常に新しいものに目を向け、探求し続ける姿勢こそが、この仕事では重要なのです」と彼女は力強く語ります。
さらに、近年増えているメイクアップインフルエンサーとの違いについても、次のように指摘します。
「インフルエンサーの多くは、自分自身にメイクを施しています。でも、他人にメイクをするというのは、まったく異なる技術が求められるんです。見た目は似ていても、実際にはまったく別の仕事です。」
メイクアップアーティストを目指すための心得と努力
メイクアップアーティストは、一朝一夕でなれる職業ではありません。コツコツと積み重ねる努力が何よりも大切です。Sarah Damenは最後に、次のようなアドバイスを寄せてくれました。
「すぐに結果が出なくても、あきらめないことが何より大切です。チャンスは思いがけないタイミングで訪れるもの。スクールを卒業した後は、自分が目指す分野でのインターンシップを優先して選んでください。そして、自分が素敵だと感じるメイクアップアーティストには、思い切ってアシスタントを申し出てみることをおすすめします。本気でその道を目指すのであれば、自ら行動し、チャンスをつかみにいく努力が必要です。覚悟を持って続けていれば、夢はきっと形になります。」