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美容経営者が学ぶ「ノー」の力 ― 成功を導く健全な線引き

何にでも「イエス」と言い続けていると、自分自身を見失ってしまいます。創業者が自分を見失う企業は、やがて疲弊し、欲求不満に陥り、最終的には本来の目的を失う危険があります。

サロン経営者が陥りやすい“イエス症候群” ― 自分を守るための健全な線引きとは

次のような例に思い当たる方もいらっしゃるでしょう。
あるお客様が、直前になって予約を取りたいと連絡してきます。すでに予定はいっぱいで、昼食も取れていない状態なのに、手帳を開いて無理をして時間を空けてしまう。ところが、そのお客様は結局来店しないのです。それでも、あなたは何も言いません。そして、自分に言い聞かせます。

    「いつもはそんな人じゃない」

    「失いたくないお客様だから」

    「仕方ない、柔軟に対応しなければ」

けれども実際には、すべてに「イエス」と言い続けることで、自分自身をないがしろにしてしまっているのです。無意識のうちに口にするその「イエス」は、やがて目に見えない鎖のようになります。それは、自分の心のバランスに「ノー」と言っているのと同じことなのです。

「イエス」がもたらす代償

ある研修の際、一人の美容施術者がこう話してくれました。
「私は通常の営業時間外でも、たくさんの予約を受けてしまうんです。朝8時から、昼休みの間、時には日曜日までも」と。その結果、子どもたちと一緒に食事をする時間がなくなり、一日の終わりには完全に疲れ果ててしまっていたそうです。そして何より、自分の仕事に喜びを感じられなくなっている理由が分からなかったといいます。

私は彼女に尋ねました。
「最後に本当の意味で“ノー”と言ったのは、いつですか?」
すると彼女は、目に涙を浮かべながらこう答えました。
「思い出せません……たぶん、一度も“ノー”と言うことを学んだことがないんです。」

サロンを強くする「線引き」の力

「ノー」と言うことは、頑なになることでも、柔軟性を欠くことでもありません。それは、明確なルールを設定し、関係性を安定させることです。お客様は、すべてが交渉次第のように見えるサロンよりも、しっかりとした条件と透明性を持つサロンの方を、より信頼しやすくなります。営業時間外の予約を断ることは、「自分の時間には価値がある」と伝えることです。商業的な圧力を断ることは、「自分に合った選択をする力がある」という意思表示です。無礼または敬意を欠いたお客様を断ることは、あなたのサロンが相互の尊重を大切にする空間であり、誰もが自由に振る舞える無秩序な場ではないという姿勢を示すことです。こうして明確な枠組みを築くほどに、お客様はあなたを単なる「施術を行う人」ではなく、信頼できる専門家として認識するようになります。

成功するサロンが実践する“ノー”の使い方 ― ブランド価値と収益性を高める経営判断

衝動的に機器を購入した経験のある方は、少なくないのではないでしょうか。巧みな営業担当者に勧められ、その機器が自分の顧客層や理念、あるいは施術室の広さに合っているかどうかを十分に考えないまま購入してしまうのです。
その場では「チャンスを逃したくない」という気持ちから「イエス」と言ってしまう。しかし半年後、その機器はほこりをかぶり、利益を生まないまま、スペースを占有し、そして罪悪感だけが残ってしまうのです。

「イエス」と言うのは、自分の快適さと整合性に「はい」と言うこと

それは、次のようなことに「イエス」と言うことです。
―自分の快適さ
―自身の収益性
―自らの一貫性
―そして、自分の意思決定の力

あなたの企業は、あなた自身を映し出す存在です。あなたが明確に自分を打ち出すほど、企業はより強く、しなやかに成長していきます。

真のプロフェッショナルは「ノー」で自分の軸を守る

「ノー」と言うことを、誰も教えてはくれませんでした。私たちは、優しく、感じよく、誰かのために尽くすように育てられてきました。常に人を喜ばせることを求められてきたのです。

けれども今のあなたは、ウェルビーイングの専門家であり、経営者であり、プロフェッショナルです。誰にでも好かれるために存在しているのではありません。あなたの役割は、誠実に人を導き、明確な立ち位置を示し、自分の枠組みを守ることです。

しっかりとした「ノー」は、拒絶ではなく、健全な線引きです。
提案に「ノー」と言う勇気を持つことは、別の形で投資を選ぶことでもあります。自分のコンセプト、アイデンティティ、収益戦略に基づいて決断するということです。 それは、感情的な消費者ではなく、洞察力を持つ経営者であるという姿勢なのです。

自分に問うべき3つの質問

何かを購入する前に、こう問いかけてみてください。

  • 私の価値観に合っているか?
  • 実際に活用できるか?
  • 私が選んでいるのか、それとも流されているのか?

「ノー」と言うことは、あなたの企業に「イエス」と言うことです。

断る勇気が信頼を生む ― 美容プロフェッショナルが実践すべきセルフマネジメント術

「ノー」と言うことは、次のような状況から自分を守ることです。

  • 無理な勤務時間
  • 敬意を欠いた交渉
  • 衝動的な買い物
  • エネルギーを消耗する関係

そして、こう伝えるのです。

  • 「ご要望は理解いたしますが、私には対応が難しいです」
  • 「こちらが私の運営方針です」

こうした対応によって、関係性の質は向上し、心の平穏が生まれます。そして、あなたが模範となるのです。「ノー」と言うことは、自らの力を取り戻す行為です。それは、自分のビジネスを再び自分の手に取り戻すことなのです。

「ノー」がもたらす変化

やがて、次のような変化を実感するでしょう。

  • お客様からより深い尊敬を得るようになります。あなたが“オーダーに応じる人”ではなく、プロフェッショナルとして見られるからです。
  • 時間の余裕が生まれます。キャンセルや急な変更が減り、精神的な疲労も軽くなります。
  • 収益性が高まります。意識的に投資を行い、自分のペースで働けるようになります。
  • そして、あなた自身がより輝きます。自分を尊重することで、その姿勢が周囲にも伝わるのです。

優しさをもって伝える「ノー」は、あなたの企業、エネルギー、そしてビジョンへの「イエス」なのです。また、「ノー」を受け入れる側にとっても、同じ意味を持ちます。それは、相手に対しても誠実であり、自分を尊重する文化を築くことだからです。

「ノー」はフィルターのようなものです。あなたのルールを尊重しない人は去り、 あなたを真の専門家として認める人だけが残り、やがてあなたを推薦してくれるでしょう。

今すぐ実践できる「ノー」の例

  • 「営業時間外の予約は現在お受けしておりません。」
  • 「この施術は、現在のメニューには含まれておりません。」
  • 「当サロンではこのブランドを扱っておりません。私たちの理念に合わないためです。」
  • 「ご予約には前金をお願いしております。」

そして、忘れないでください。「ノー」に長い説明は不要です。それは、ただ静かに、しっかりと伝えればよいのです。

Physiobell’所属セラピストの声

「特定の依頼に“ノー”と言うようになってから、自由を感じています。働く時間は減りましたが、収入は増えました。お客様からの信頼も深まり、営業時間外のメッセージにも焦りを感じなくなりました。 自分のあり方と仕事が、ようやく一致した気がします。」

「ノー」と言うことは自分を大切にする第一歩

「ノー」と言うことは、相手に背を向けることではありません。それは、自分自身に心を開くことです。自分の時間、エネルギー、価値を尊重する行為なのです。この文章を読んでいるあなたに問いかけます。

  • 最後に「ノー」と言えなかったのは、どんなときでしたか?
  • そして今日から、その言葉を自分の味方にしてみませんか?

あなたの成功は、まさにそこから始まります。 自分の限界を定め、明確な立場を持ち、 そして、二度と自分自身を置き去りにしないことが大切です。

Inner Beauty Award 2025 ―受賞商品発表―

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FLORENCE ANSAR

FLORENCE ANSAR

コーチングスペシャリスト

フランス雑誌『Les Nouvelles Esthétiques』の寄稿者であり、エステティックコーチングのパイオニアです。哲学修士号と美容分野のCAP資格を取得後、Neuro-estheticsスクールを創設し、スリミングやボディトリートメントのトレーニングを提供する中で、心と体の相乗効果を探求してきました。2018年以降は、美容、神経科学、コーチングを融合させた最先端のトレーニングプログラムを設計し、専門知識を提供しています。また、トレーニング組織「Physiobell」を創設し、eラーニングモジュールを開発。さらに、エステティック界初となるフランス語圏のカンファレンスを立ち上げ、医療と美容の専門家が一堂に会する場を提供し、ケア全体を再考・未来のトレンドを予測する機会を創出しています。

  1. 美容経営者が学ぶ「ノー」の力 ― 成功を導く健全な線引き

  2. 恐れを手放しサロンを『育てる』経営の考え方とは

  3. AIでは代替できない価値とは?今エステティシャンに求められる“人間力”とウェルビーイング視点

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