
Frédéric Granotier氏(『Lucibel.le Paris』 CEO/創設者)
現代の利用者は、効果的でありながら自然で副作用のない技術を求めています。こうした背景から、LEDの人気が高まっています。クリームとは異なり、LEDは真皮と表皮の境界を通過し、深層の細胞にまで作用するため、その効果は比類のないものといえます。LEDテクノロジー専門の美容機器メーカー『Lucibel.le Paris』のCEOで創設者であるFrédéric Granotier氏が、LEDのすべてを解説します。
取材・文:Laure Jeandemange
進化するLED美容―技術革新が生む新たな価値

LED(Light Emitting Diode)は、電流が流れることで光を発する電子部品です。従来の電球と異なり、ほとんど熱を発せず、消費電力が非常に少なく、耐久性にも優れています。
LEDは紫外線を含まない冷光を発し、色ごとに異なる波長を持っています。この光が皮膚に吸収されることで、自然な生体メカニズムを活性化します。たとえば、コラーゲンの生成促進、炎症の軽減、抗菌作用などが挙げられます。
光の色ごとの特徴と作用
- 青色光(415〜450nm):ニキビの原因となる細菌を除去し、皮脂分泌を調整します。
- 緑色光(520〜550nm):肌の色を均一に整え、シミを目立たなくします。
- 黄色光(590nm):赤みを鎮め、血行を促進します。
- 赤色光(630〜660nm):コラーゲン生成を活性化し、肌の老化を防ぎます。
長い歴史を持つLEDが、なぜ今注目されているのか
フォトバイオモジュレーション(光による生体調整)は1960年代から研究されてきました。しかし、近年になってようやくLED技術の進化により、目に見える美容効果を得るための出力が実現され、医療機関以外でも利用できるようになりました。
さらに、注射や手術を伴わない穏やかな非侵襲的アプローチへの需要が高まったことが、この技術の発展を後押ししています。現在、利用者は効果的で自然かつ副作用のない技術を求めており、その結果、サロンや自宅で使用できるLEDマスクが広く人気を集めています。
LEDマスクとフェイスブリッジの違いとは
LEDマスクとフェイスブリッジの主な違いは、光源と肌との距離にあります。光が肌に近いほど、エネルギーが細胞により効果的に伝わります。マスクタイプは顔の輪郭に密着するため、光の損失を最小限に抑えることができます。
安全に活用するためのLED機器選びとリスク管理

質の高いマスクを選ぶには、まず信頼できる臨床試験が独立した研究機関によって実施されていることを確認することが大切です。さらに、出力(mW/cm²)やエネルギー量(J/cm²)が適切であるか、また使用されている部品が安定性と性能を考慮して厳選されているかを見極める必要があります。
純粋なマーケティング的な宣伝には注意が必要です。LEDの数が多いことや、表示上の出力が高いことは、必ずしも効果の高さを保証するものではありません。
技術パラメーターの正確さこそが重要
美容サロンで使用されるLEDマスクの品質を判断するには、いくつかの要素があります。
臨床試験の証拠
まず、独立した研究機関による臨床試験が実際にその機器を対象に行われていることが不可欠です。これは、推奨される使用プロトコルの効果を実証するために重要な条件です。市場に出回っている多くのマスクは、信頼性にばらつきのある科学文献、利用者の証言、写真などに基づいており、正式な臨床試験による証拠が存在しない場合が少なくありません。これはきわめて重要な点です。
技術パラメーター
マスクの効果を得るには、皮膚細胞に適切な出力密度と適切なエネルギー量を与える必要があります。出力は「mW/cm²」(皮膚に届くパワー密度)で、照射中に与えられるエネルギー量は「J/cm²」で表されます。エネルギーが不足すれば組織は反応せず、過剰であれば無駄または不快になります。重要なのは「高出力」ではなく「正確な調整」です。
部品の品質と選定
LEDコンポーネントの選定は極めて重要な工程です。LEDの色の安定性はとても繊細な要素であり、高品質なLEDを用いることで、製品すべてにおいて同一の波長と光強度を維持し、長期的に一貫した結果を得ることができます。したがって、誤解を招くマーケティング表現には注意が必要です。LEDの数が多いからといって性能が高いとは限りません。重要なのはJ/cm²単位で測定される出力です。
LED機器が効果を発揮しない場合
LED機器は、波長が適切でない場合や照射エネルギーが不足している場合、効果を発揮しません。
例えば、赤色光(630nm)は、抗老化や創傷治癒を目的として使用されますが、適切なエネルギー量で照射しなければ、線維芽細胞に届かず、コラーゲンやエラスチンの生成を刺激することはできません。
赤色光630nmは真皮層まで深く到達する特性を持ち、クリームでは届かない細胞層にまで作用します。この波長に関しては、50年以上にわたる研究と5,000件以上の科学的検証により、その効果と安全性が確認されています。
なお、照射されるエネルギー量が1J/cm²に満たない場合、細胞を十分に刺激できません。LEDの出力が弱いマスクでは、必要なエネルギーを届けることができず、効果は得られません。
LEDによるリスクはあるのか
適切に設計され、光生物学規格(EN62471)に準拠している限り、LED技術は安全です。赤色光は、規定の使用条件下では肌や目に対して危険性はありません。ただし、施術中の快適性向上のため、保護用ゴーグルが付属しています。
一方、基準に適合していない製品や誤った使用法は、有害な影響を引き起こす可能性があります。
LED機器を導入する前に確認すべき項目
導入を検討する際には、次の点を確認することが重要です。
- 製品のコンポーネントがCE規格に適合しているか
- 照射出力とエネルギー量が明示されているか
- 科学的および臨床的検証が実施されているか
- トレーニングやサポートを提供する販売業者であるか
また、製品の設計・製造国にも注目すべきです。安全基準を十分に満たしていない中国製品には注意が必要です。
LED施術の活用法―単独使用とケア併用で広がる可能性
LEDは、ニキビケアやエイジングケアなどの特定の目的に単独で使用することもできますが、トリートメントと組み合わせることで効果を高め、持続させることも可能です。特に、ピーリングや保湿・浄化ケアの後に用いると効果的です。このハンズフリーの技術は高い効果と収益性を持ち、美容サロンに確かな付加価値をもたらします。
光が導く肌の再生力―自然治癒を促すフォトテクノロジーの可能性

LEDは高精度で優れたツールであり、施術を高め、顧客の信頼を築くための重要なパートナーです。ただし、正しい選定と使用が前提となります。
現在の成長市場では、科学的根拠が製品選びを導くべきです。流行に乗った市場には、科学的裏付けの乏しい製品や、品質の低い部品を使った製品も存在します。
そのため、導入を検討する際には、臨床試験の有無、波長、出力、照射時間、プロトコルなど、科学的データを慎重に確認することが必要です。
本来、優れたフォトバイオモジュレーション機器は、単なる光の装置ではなく、再現性のある精密な治療装置です。
フォトバイオモジュレーションの革新性
フォトバイオモジュレーションは、美容分野における技術的革新です。その効果は従来の化粧品と同等か、それ以上でありながら非侵襲的である点が特長です。
プロ仕様のデバイスでは、週1回20分の施術で十分な効果が得られます。光は深部の組織まで到達し、化粧品では届かない層に作用します。これは、技術的パラメーターの最適化によって強化された自然なメカニズムです。
光が導く未来―肌が自ら再生する時代へ
フォトバイオモジュレーションは、肌にコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を外から注入する技術ではありません。光が細胞に「それらを自ら生み出す方法」を教えることで、自然で持続的な効果をもたらします。
「人に魚を与えるより、釣り方を教える方が良い」と孔子が説いたように、光は肌に“生み出す力”を学ばせます。
 

