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冬の肌は“守るより巡らせる”——冷えと乾燥を同時にケアする新常識

寒さが深まる冬、肌が「乾く」「くすむ」「固くなる」と感じることはありませんか?多くの人が乾燥対策に“保湿”を重ねますが、実はそれだけでは不十分。冬の肌トラブルの根本には、「巡りの滞り」=血行不良や代謝低下が隠れています。今年の冬こそ、“守るだけ”から“巡らせるケア”へ。肌の内側から温めて潤いを引き出す新常識を、美容と生理学の視点からご紹介します。

「加湿器をつけても、クリームを重ねても、なぜか潤わない」——そんな経験はありませんか?
冬の乾燥は、外気の湿度低下だけが原因ではなく、“身体の内側からの冷え”が大きく関係しています。

冷えによって体温が下がると、血液循環が滞り、肌細胞へ栄養と酸素が届きにくくなります。すると、肌の新陳代謝(ターンオーバー)が遅れ、古い角質が肌表面に留まってごわつきやくすみを引き起こすのです。

特に女性は、男性に比べて筋肉量が少なく、熱を生み出す力(基礎代謝)が低いため、冷えやすい体質になりがち。さらに冬は、厚着や暖房によって体の外側だけ温まり、内側(末端・内臓・皮膚下)が冷えたままという“隠れ冷え”状態に陥りやすい季節です。その結果、下記の3つのような連鎖が起こります。

  1. 皮脂や汗の分泌が減少し、肌の天然保湿因子(NMF)が不足
  2. 血流が悪くなり、肌細胞への酸素供給が低下
  3. 肌表面の保水力が落ち、乾燥小ジワ・くすみ・ハリ不足が進行

このように、冷えによって肌の“巡り”が滞ると、いくら外側から保湿しても潤いが長続きしません。
つまり、「保湿しても潤わない」「朝起きると肌がつっぱる」と感じるとき、それは単なる乾燥ではなく、“巡りの低下サイン”なのです。さらに、皮膚温が1℃下がるだけでも、角層の水分量は約10%低下するといわれています。
これはつまり、“温度=潤いの鍵”ということ。肌が冷えていると、保湿成分を浸透させる力も弱まります。

💡 ポイント:冬の肌トラブルの根本原因は「乾燥」ではなく「循環の停滞」

肌を“潤わせる”前に、“温めて巡らせる”ことが、美しさを守る第一歩です。

「たくさん塗っても潤わない」肌を根本から立て直す鍵。それが“巡らせるケア”です。
これは、単にスキンケアアイテムを重ねることではなく、肌の内側でめぐる「血液・リンパ・体温」の流れを整えるという発想。いわば、“塗るケア”から“流すケア”へのアップデートです。

外側からの「温めて巡らせる」アプローチ

肌のめぐりを助ける外的ケアのポイントは、「温める」「ゆるめる」「届ける」の3ステップ。

① 炭酸×温感の血流促進

炭酸パックや温感クレンジングには、血管を拡張して血流を促す作用があります。
炭酸ガス(二酸化炭素)は皮膚から吸収されると血中の酸素濃度を一時的に下げ、身体が“酸素を届けよう”と反応することで血流が活性化します。その結果、肌がほんのり温まり、酸素と栄養が細胞へスムーズに届くのです。
→ 「肌がふっくら」「色が明るくなる」と感じるのは、この血流改善のサイン。

② ホットタオル&導入美容液で“浸透ルート”を開く

洗顔後、ホットタオルを1〜2分のせてからブースター(導入美容液)を使用すると、角層がやわらかくなり、美容成分が角層深くまで行き渡りやすくなります。特にナイアシンアミド(ビタミンB₃)は、毛細血管の血流をサポートしながら皮脂分泌とターンオーバーを整える成分。乾燥によるくすみ・ハリ不足に効果的です。

③ バリアを立て直す“守りの保湿”

巡りを整えた後は、潤いを逃がさない膜をつくることが大切。
セラミド・ヒアルロン酸・スフィンゴ脂質などの成分は角質細胞間の“すき間”を埋め、
温めて柔らかくなった肌の上でしっかりと“うるおいのフタ”をします。💡ヒント:温めた後の肌は「吸収力のゴールデンタイム」。このタイミングで美容液・クリームを重ねると、浸透効率が最大化します。

内側からの「温活×めぐり」サポート

肌をめぐらせるのは、スキンケアだけでは不十分。身体そのものを温め、血液の質を高める生活習慣が重要です。

① 食べる温活

体を内側から温める食材として、ショウガ・シナモン・黒豆・ナツメなどが代表的。
さらに、ビタミンE(血流改善)・鉄分(酸素運搬)・アルギニン(血管拡張)などの栄養素を意識的に摂ることで、
血の巡りを助け、冷えによる乾燥を予防します。

《例》

朝:白湯+ショウガ蜂蜜

昼:根菜入りスープ

夜:黒豆茶やシナモンティー

② 動かす温活

デスクワーク中心の人は、筋肉がこわばり血流が滞りがち。
肩や首を大きく回すだけでも、顔色がパッと明るくなるのを感じるでしょう。
入浴も有効で、38〜40℃のぬるま湯に10〜15分浸かると、末梢血管が拡張して全身がリセットされます。

③ 眠る温活

夜の冷えは翌朝の肌乾燥につながります。
就寝前のホットミルクや湯たんぽ、電気毛布などで“内臓を冷やさない”習慣をつけることがポイント。
眠りの質が上がり、自律神経のバランスが整うことで、肌の再生力も高まります。

“巡らせるケア”を始めるのに、特別な道具や高価なコスメは必要ありません。大切なのは、日々の「ちょっとした温め・動かす・補う」の積み重ねです。肌・身体・心をゆるやかにめぐらせる3つの柱を見ていきましょう。

 ① スキンケアで「温め+届ける」

乾燥しやすい冬は、“守るケア”よりも“めぐるケア”の工程を意識。血流を促してから美容成分を届けることで、潤いの“質”が変わります。

表1:冬の巡り美肌を育てる4ステップケア

💡ワンポイント:
夜のスキンケア時に、“手のひらを温めてから塗布”するだけでも、浸透効率が高まります。
「冷たい手は冷たい肌をつくる」温度こそ最初の美容成分です。

② 食と内側ケアで「温め+栄養補給」

血のめぐりと潤いは、食の選び方にも現れます。
冬の食卓では、“温める・潤す・整える”食材を意識的に組み合わせましょう。

表2:冬の“巡り美肌”をつくる温活フードチャート

💡「肌は食べたものでできている」。潤いを支えるのは、日々の食卓の積み重ね。コンビニでも、温かいスープやナッツを選ぶだけで“温活美容”になります。

③ ライフスタイルで「整えて流す」

いくら良いコスメや食材を取り入れても、ストレスや睡眠不足で自律神経が乱れると血流は停滞します。
生活習慣の“小さな改善”こそ、巡りを底上げする一番の近道です。

🛁 入浴:一日の「冷え」をリセット

38〜40℃のぬるめの湯に10〜15分。
「少し汗ばむくらい」で上がると、毛細血管が活性化し、就寝時の体温も上昇します。
入浴後の5分以内にスキンケアをすることで、“潤いの密封”効果も倍増。

🧘‍♀️ 体をゆるめる:1日1回“深呼吸+肩回し”

スマホやPC作業で凝り固まった肩や首を回し、
鼻から息を吸って、口からゆっくり吐く。
これだけで、交感神経の緊張が緩み、血流とリンパの巡りがスムーズになります。

😴 睡眠:めぐりの「ゴールデンタイム」

22時〜翌2時は、肌細胞の再生が最も活発になる時間。
寝る1時間前のスマホ断ち・温かいハーブティーで副交感神経を優位にし、
「眠りながらめぐる肌」を整えましょう。

“守る肌”は一時的、“めぐる肌”は持続的。

体温と血流を味方につけたスキンケアは、冬だけでなく、

季節の変わり目・春先のゆらぎにも強い“巡り美肌”をつくります。

冬の肌ケアは、「乾燥を防ぐ」だけでは本質的な改善にはつながりません。
外から“守る”だけでなく、内側で“巡らせる”ことこそが、冬の美肌を左右する鍵です。

冷えによる血流の滞りは、肌の代謝・ハリ・透明感に直結します。しかし、その流れを少し整えるだけで、肌は自ら潤いを取り戻す力を発揮します。つまり、「潤いを与えるケア」から「潤いを生み出す肌づくり」へ——発想を変えることが、美しさの持続力を高める第一歩なのです。

“めぐる肌”を育てる3つのキーワード🌱

  1. 温める:肌も体も冷やさない。温かさは美容のベース。
  2. 流す:血流・リンパ・呼吸を整え、滞りをリセット。
  3. 補う:ナイアシンアミド・セラミド・ビタミンEなど“巡り成分”で潤いを支える。

これらを日常に取り入れることで、
「肌が冷えている」「くすんでいる」と感じた日でも、
肌が内側からふっくらと“生きているような温かさ”を取り戻していきます。

参考文献・情報源一覧

  1. 日本皮膚科学会『皮膚科学』(中山書店, 2021)https://www.dermatol.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=3
  2. 日本栄養・食糧学会『栄養学レビュー:冷えと栄養素』(2022)https://www.jsnfs.or.jp/
  3. Bissett, D.L. “Niacinamide: A B Vitamin that Improves Aging Facial Skin Appearance.” Dermatologic Surgery, 2005.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16029679/
  4. Di Marzio, L. et al. “Topical ceramide therapy for dry, inflamed, and sensitive skin.” Dermatologic Therapy, 2019.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31365130/
  5. Tominaga, K. et al. “Protective effects of astaxanthin on skin deterioration.” Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition, 2017.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28751806/
  6. Singh, M. “Dietary factors in skin aging and regeneration.” Nutrients, 2020.https://www.mdpi.com/2072-6643/12/8/2402
  7. 日本化粧品工業連合会『化粧品成分ガイド 第5版』(2021)https://www.jcia.org/
  8. BHN「冬前の温活&めぐりケア完全ガイド」美容経済新聞, 2024. https://bhn.jp/articles/184583

Inner Beauty Award 2025 ―受賞商品発表―

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  1. 冬の肌は“守るより巡らせる”——冷えと乾燥を同時にケアする新常識

  2. “香りの重ね使い”でつくる冬の印象美——肌・空気・心をつなぐ、冬のフレグランスレイヤリング術

  3. 金木犀の香りで整える夜のスキンケア習慣—— 心と肌を同時にほぐす“ナイトリチュアル”のつくり方

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