連載(下)炭酸ガスパックの特許係争を追う、医療系ベンチャー逆控訴準備
2015.08.27
編集部
19社の侵害社を提訴した化粧品メーカーは「模倣品が市場で流通することがなくなるまで法的手段に訴える」として断固たる対応で臨む方針。
だが、19社の侵害者の中で、炭酸ガスパック製剤の製造技術「ニ酸化炭素外用剤調製用組成物」という名称で特許権を取得している近畿圏の医療用ベンチャーが特許権保護を求めて逆控訴する準備に入っている。
ニ酸化炭素外用剤調製用組成物の特許は、美容効果、育毛効果および医薬品や化粧料などの外用剤の皮膚等への浸透促進効果を有する酸性外用組成物及びそれを含む化粧料、育毛剤、外用剤用の皮膚等への浸透促進剤に関する技術。
製造が容易で、公知のものより強い美容、育毛、もしくは医療効果を持つ酸性多糖の外用組成物を提供することを目的として開発した。
化粧品メーカー、医療系ベンチャーとも特許の権利である通常実施権(特許の有償使用許諾権)を炭酸ガスパックに関心があるエステなどの中小事業者に供与(技術の指導助言と技術移転)する動きも目立つ。
特許、実用新案などの知的所有権は、単に保有しているだけでは財産を生みださない無的財産権といえる。半面、実施権を幅広く供与すれば、財産を生み出す知的財産権となる。
炭酸ガスパックの特許を持つ化粧品メーカーや医療系ベンチャーがエステ事業者などに実施権を供与する動きに出ているのは、知的財産権を確立する狙いによる。同時に、特許の実施権供与を受けたエステ事業者は、独自の成分を配合して商品化を図り、市場で販売するメリットが生じる。
炭酸ガスパックを巡る特許権侵害が起きて約4年になる。が、今もって次から次へと類似品が市場に出回りそのたびに訴訟に持ち込んで争っている。
こうした状況について大手化粧品メーカーは「業界の構造的体質が今もって変わることなく続いている」として不信感を募らせる。また、侵害者の名前を事前に公表して訴訟に踏み切ることについても増悪に似た感情が漂う。
化粧品メーカーが19社の侵害者を訴訟する中で、その中の医療系ベンチャーが逆控訴する準備を見せるなど炭酸ガスパックを巡る特許権侵害は、さらに泥沼化の様相を深めている。