【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【48】バイオマスター② ~カネカの傘下に、乳房再建など高度美容外科治療開始~

2017.02.2

特集

編集部

バイオマスターは、男性型脱毛症や先天的無毛症、やけどなどで髪がなくなった人の毛髪再生医療に取り組む一方で、患者自身の脂肪と脂肪幹細胞を使って乳がん切除後の乳房再建など高度美容外科医療の提供を行っている。
同社は、脂肪由来幹細胞を用いて体の軟部組織を増大させる高度美容外科の具体的な取り組みとして、2006年7月にかながわバイオ医療産業特区に「セルポートクリニック横浜」を開設した。

同社が運営するセルポートクリニック横浜は、日本で唯一の高度美容外科医療(厚生労働省告示)専門のクリニック。

特区法に基づく日本初の株式会社が運営する診療所として認可され、患者自身の脂肪と脂肪幹細胞を使って乳がん切除後の乳房再建など高度美容外科医療の提供を行っている。
これまで美容外科クリニックなどで行ってきた人の体型を理想的に変える脂肪吸引や豊胸等の美容整形手術は、シリコンバッグによる豊胸のように、人工物の移植により行われてきた。しかし、人工物は、人体にとって異物で、異物特有の様々な問題を惹起するケースが起きていた。また、脂肪吸引術や脂肪注入術という方法においても注入された脂肪が定着しないという欠点が指摘されてきた。

こうした中、同社は、CAL組織増大術と呼ばれる術式による治療で、患者自身の組織と細胞を用いて所望の部位を増大する術式「CAL組織増大術」を開発した。
同増大術は、脂肪組織から取得した細胞群(ADC)を利用し、従来の脂肪移植の有効性、安全性を高めることを目指した治療方法。
この術式の開発によって乳がん切除後の乳房再建や顔面変性疾患治療など高度美容外科治療の実現に繋げた。

同社は、2011年9月にカネカが再生・細胞医療における研究開発を加速させるため、株式の83%を取得し子会社化した。

再生・細胞医療市場は、2020年に国内市場が1200億円規模に成長すると見られている。カネカでは、2009年から血液浄化用吸着体事業で培った病因物質吸着技術や各種医療用製品の設計・製造・品質管理などのノウハウを生かして、間葉系幹細胞分離デバイスを理化学機器として販売開始、分離デバイスと自動培養装置との一貫したシステム開発も行うなど再生・細胞医療分野での事業展開を図ってきた。
バイオマスターを買収したことで、脂肪由来幹細胞に関連する技術・製品開発を加速させるとともに細胞の分離・培養の技術・製品開発を拡充させて2020年に売上高500億円を目指す。

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