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⑥細胞と抗齢化、IPS細胞、ミトコンドリアで皮膚老化を解明(中)

IPS細胞技術を応用し、皮膚の老化メカニズムに関する研究に取り組む動きもみられる。皮膚細胞もIPS細胞へ誘導することで細胞年齢をリセットし、加齢による影響の多くを消去できる。しかし、その細胞が決定的にダメージを受けていると、IPS細胞へ誘導しても機能は回復できない。
加齢によって何が決定的に損なわれるのか、どの機能は適切なケアで回復可能なのか、を見極めることができる。
すでにシワやハリにかかわる真皮の線維芽細胞をIPS細胞へ誘導し、再び線維芽細胞へ誘導することに成功するなど大きな成果を得ている。

IPS細胞を経て再び誘導された線維芽細胞では、細胞のエネルギー生成工場であるミトコンドリア内の抗酸化酵素SOD2量の回復が確認されている。そもそもシワやたるみが現れるのは、年齢とともにSOD2量が減り酸化ダメージが進んだことに起因する。
これが回復可能なら適切なケアでエイジングの進行も抑えることができる。その可能性がIPS細胞研究によって明らかになった。
一部の企業においてさまざまな成分を試験したところ、シワ改善有効成分と植物エキスを組み合わせることで、細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素「SOD量」が回復し、エイジングの進行抑制につながることを発見した。
いわば、IPS細胞による研究はさまざまなエイジングの改善の糸口を示し、化粧品開発に革新を起こすことを実証した。

一方、化粧品との接点が多いミトコンドリアトランスファーの研究が注目されている。ミトコンドリアとは、抗加齢研究において注目を集める細胞内の小器官。生きるためのエネルギーを作る発電所のような存在。ミトコンドリアがダメージを受けて十分なエネルギーを作れなくなると代謝が低下して細胞全体が老化し、皮膚細胞においてはエイジングサインに直結する。
問題は、コラーゲンやエラスチンなどを生み出して肌の若々しさを保つ真皮の線維芽細胞の生まれ変わりのサイクルが遅いこと。その間に紫外線などのダメージをため込むと、ミトコンドリアの質も低下して老化が加速してしまう。

そこで着目されているのがミトコンドリアトランスファーだ。細胞間でミトコンドリアを移送する現象で、ミトコンドリアがダメージを受けて弱った細胞に、健全なミトコンドリアが移動してその弱った細胞を甦らせる現象。
これを応用して老いた線維芽細胞に若々しいミトコンドリアを移動させれば、細胞年齢を巻き戻してコラーゲン生成などの機能を回復させることが可能。科学が生んだ若返りの秘策といえるだろう。

ヌーヴェル日本版(LNE)公式サイトwith美容経済新聞 2025年6月正式リリース!

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加藤勇

顧問記者/ジャーナリスト

元日刊工業新聞編集局部長。欧州、米国特派員を含め記者歴通算45年。ベンチャー、中小・金融政策専門経済ジャーナリスト。「レバレッジ金融至上主義の崩壊」など著述多数。本誌では主に、経済部門、企業取材を担当。

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