【講演レポート】プロの“手”が未来を変える──マッサージで顧客満足と収益を同時に上げる方法

お客様は、アンチエイジングや痩身に関する専門的な施術をこれまで以上に求めるようになっています。それは、マッサージによるウェルビーイング（心身の健康）にも同様の傾向が見られます。しかしながら、多くのセラピストにとって、マッサージという施術は化粧品や他のサービスを「売るため」のものではないと認識されがちです。とはいえ、実際にはマッサージ中こそ、お客様との距離がこれまでになく近くなる瞬間でもあるのです。

マッサージの原点と歴史的意義

人類は太古の昔から自らをマッサージしてきました。
インドではアーユルヴェーダ、中国や日本では伝統中国医学、そしてエジプトでは5000年以上前から行われていたのです。西洋で「マッサージ」という言葉が使われるようになったのは、はるかに後のことです。
マッサージにおける最初の動作は「こする」ことです。打撲などの際、私たちは反射的にその部分をすぐにこすり、痛みを和らげたり、長引かせないようにします。自己マッサージを行うことは、脳に対して別の情報を伝える手段になります。
情報が多すぎると、かえって本来の情報が埋もれてしまうことは、よく知られています。

スウェディッシュマッサージ：最初に誕生した「マッサージ」

西洋で初めて体系化されたマッサージ——もっとも、厳密にはマッサージではないのですが——それがスウェディッシュマッサージです。
このスウェディッシュマッサージは、19世紀にスウェーデン人の理学療法士であり、武道や体操に情熱を注いでいたHehr Henrik Ling（ヘーア・ヘンリク・リング）によって開発された技法です。
彼は、アスリートのために準備運動や筋肉の回復を目的とした体操法を考案する中で、最終的に一つのケアメソッドとして体系化しました。この手技療法であるスウェディッシュマッサージは、スウェーデン国内では「クラシックマッサージ」と呼ばれています。

プロトコルだけでは足りない！本物のマッサージに必要な感覚と知識

マッサージは、SNSやYouTubeを見ただけでできるようなものではありません。マッサージは学ぶものであり、その前にまず、施術する身体の解剖学を理解しておく必要があります。トリートメントメニューに本格的にマッサージを取り入れたいのであれば、最初に受けるべきトレーニングは「触察解剖学」です。

皮膚の重要性

マッサージでは身体、そして皮膚に触れます。ご存じでしょうか？手のひらには17,000の機械受容器に関連する求心性神経があり、指先の密度は1cm²あたり約140個にも達することがあります。このように、皮膚は身体で最大の感覚器官であり、敬意をもって扱わなければなりません。

プロトコルとマッサージの違い

トリートメントのプロトコルは、マッサージではありません。プロトコルは、施術のタイミングやリズム、動作の振付けを示すものです。私はシグネチャートリートメントのクリエイターとして、その振付けに音楽を融合させています。手の動きは音楽とともに作られ、両者が調和して一体となるのです。

手――最良の味方

触れること、マッサージすること、マッサージを愛すること。そのとき、手の中で何かが起こります。メニューの中で最も優れた施術とは、オーダーメイドのトリートメント、つまり「創造的マッサージ（マッサージ・クリエイティフ）」と呼ばれるものです。私はこの施術を「オーダーメイドマッサージの専門技術」と呼ぶ表現を好みます。なぜなら、事前に行う診断結果に基づき、マッサージが専門的に行われることを意味するからです。この診断は非常に重要です。

マッサージに必要な知識と技法

マッサージを提供するには、身体の解剖学、各種マッサージ技術、それぞれの手技の目的について理解しておく必要があります。例えば、エフルラージュ（軽擦法）、グライディングプレッシャー（滑らせる圧）、ペトリサージュ（揉捏法）などが挙げられます。また、各技法が身体に及ぼす生理学的効果についても把握しておかなければなりません。
マッサージをしているとき、自分が何をしているのかを意識していますか？筋肉がどこにあるか正確に理解していますか？なぜお客様がマッサージの後に涙を流すのか、その理由を考えたことはありますか？
マッサージにおいて強引さは無意味です。施術台に横たわるその人間に対して、敬意と配慮をもって接してください。その人はあなたの「お客様」であり、同時に「招かれたゲスト」でもあるのです。
そのための「聴く力」は耳だけでなく、診断によって、そして何よりも優れた道具である「手」によって実現されます。あなたの手は、最も優れたツールであり、最大の利益を生む最良の味方なのです。

値引きはもう卒業！“手技の価値”を正しく伝える価格戦略

あなたの給与はコストの中でも最大の割合を占めていますが、それ以外にもさまざまな経費があります。例えば、備品の購入、マッサージベッド、リネン、化粧品、音楽、開業費用、従業員の給与、税金、会計士や銀行の手数料、マーケティング費用、店舗の運営管理費などが含まれます。
これらをすべて合算すると、60分のマッサージで1分あたり1.50〜2ユーロ以下の料金では採算が取れないことが明らかです。
もちろん、現在の経済状況は厳しく、戦争や新型コロナウイルス、税金の負担など、世代を超えて私たちは常に不安定な時代に生きています。しかしながら、料金の見直しを定期的に行わなかったり、原価を計算していなかったりすれば、施術の収益性はゼロとなります。場合によっては、お客様に来店していただくために、あなた自身が負担をしている状態にもなり得るのです。
施術ごとに、少なくとも25〜38%の利益率を確保できるよう計算しましょう。それが達成できているのであれば素晴らしいことですが、そうでなければ、料金体系を見直す必要があります。

値引きしないでください

自分自身を安売りしてはいけません。施術も同様に、安価に提供すべきではありません。あなたはエステティックの資格を持ち、専門的な技術を習得しています。
手技を磨き、快適さとウェルビーイングを提供できるようになれば、お客様が10ユーロ、15ユーロ、あるいは20ユーロ多く支払ったとしても、後悔することはありません。お客様はその金額に見合う理由を理解し、そして何よりも、あなたの手が次回の予約を引き寄せるのです。

ストレス緩和だけじゃない！マッサージで売上も満足度も引き上げる方法

マッサージは実に多くの恩恵をもたらします。ストレスを軽減し、心を落ち着かせ、睡眠の質を向上させ、痛みを和らげる効果もあります。私にとってマッサージは、インドのアーユルヴェーダのように、薬のような存在です。
さらに、マッサージは「購入のホルモン」と私が呼ぶ快楽ホルモンも分泌させます。つまり、施術中のお客様との距離はこれ以上ないほど近く、身体の状態を細かく観察できる絶好の機会なのです。
例えば、マッサージ中にムダ毛の処理が必要だと気づいたり、肌をより美しく、明るく見せるために角質ケアやラップトリートメントを提案することができます。脚に触れたときに乾燥が見られれば、それに応じたケアを提案するチャンスです。スクラブ、包み込みトリートメント、長持ちする脱毛など、マッサージはこうした提案への扉を開いてくれるのです。

触れる力が信頼を生む：短時間マッサージで差がつく顧客満足の極意

脱毛施術の際に

お客様に脱毛を行う際、マッサージの提案をためらわないでください。施術が終わったら、ただオイルを塗るのではなく、丁寧なタッチで美しいマッサージの手技を加えてみてください。
私たちの世界は非常にストレスの多い環境です。だからこそ、ほんの数分でも、落ち着いた手の動きでオイルを塗る時間を持つことが大切です。お客様はその瞬間に、あなたの「手」の良さを実感し、次はマッサージの予約を取りたいと感じるかもしれません。ただオイルを塗布するのではなく、マッサージによって身体的にも心理的にも新たな接点を生むのです。

フェイシャルトリートメント中に

フェイシャルの施術中、マスクの放置時間にキャビンの外へ出るのはやめましょう。その時間を活用して、頭部や手、足、お腹をマッサージしてください。これだけで、お客様の満足度は大きく向上します。
もしリンパドレナージュの基礎を習得していれば、排泄器官（エモンクトワール）に働きかけることもでき、その効果は素晴らしいものになります。適切なタッチと身体の理解があれば、マスク中にお腹を軽くマッサージするだけで、お客様は瞬時にリラックスするでしょう。
足のマッサージも非常に効果的です。日本式リフレクソロジーなどを完璧に習得している必要はありません。やさしく丁寧に足をマッサージするだけで、お客様は深くリラックスし、施術台と一体化するような感覚を得られます。
あなたを他と差別化するのは、あなた自身の「触れる力」なのです。

ハンドケア・フットケアの施術中に

ハンドケアやフットケアを行う際には、単なる作業にとどまらず、本物のマッサージを取り入れてください。それによってお客様の緊張は解け、あなたの「手」の技術を体感していただけます。そしてその体験が、他のトリートメントへの興味や購入へとつながる可能性があります。
実際に、頭部、手、足といった部位をマッサージした後は、全身マッサージの提案が格段にしやすくなります。お客様はすでにあなたの手技の心地よさを知っているからです。

痩身プログラムにおけるマッサージの活用

痩身ケアにおいては、マッサージとテクノロジーは相反するものではありません。両方を組み合わせて提供することは十分に可能です。
もしお客様がテクノロジーを用いた施術を50回も連続で受けているようであれば、やがて身体が反応しにくくなり、痩せにくくなってしまいます。そこで手技によるマッサージを取り入れることで、精神面のブロックを解放し、彼女自身とその身体に対する新たなイメージを築くことができるのです。

痩身プログラムにおいて最初に行うべきマッサージは「カリフォルニア式マッサージ」です。これは最初に誕生した、セラピーおよびエネルギーケアとしてのトリートメントです。
このマッサージは、アメリカ人心理学者2名によって、統合失調症の患者を身体と心のバランスへと導くために開発されたものです。カリフォルニア式およびスウェディッシュマッサージは、どちらもホリスティックでウェルビーイングを目的としたセラピーとして知られています。

美容サロンは医療機関ではありませんが、お客様と非常に密接な関係を築いている空間です。したがって、提供するのは「医療行為ではない」ウェルビーイングを重視したマッサージなのです。

あなたが売るのは施術だけじゃない──“世界観”が顧客を惹きつける

あなたのトリートメントメニューには、さまざまな施術が含まれているはずです。競合他社が何をしているかに執着するのではなく、自分自身のコンセプトや哲学、提供したい施術への情熱に集中しましょう。
お客様があなたのサロンを訪れるのは、「あなたに会うため」です。他人の真似をしても意味はありません。お客様が求めているのは、あなたの施術、あなたの空間、あなたが選んだコスメ、インテリア、そして心を込めたサービスです。
例えば、施術前や途中、または終了時に出す温かいおしぼり（オシボリ）などの細やかな気配りが、あなたの世界観を形作るのです。

プロとして、自信を持ってください

マッサージを導入する際は、自信を持ってください。あなたはプロフェッショナルなのです。マッサージは、施術だけでなく製品の販売にもつながります。オイル、バーム、スクラブなどの製品を提案することが可能です。
価格を決めるのはあなたであり、決断するのはお客様です。あなたはお客様の財布の中を気にする必要はありません。優れたセールススキルを持ち、製品知識がしっかりしていれば、お客様は信頼を寄せてくれるでしょう。なぜなら、それが自分のためになることを理解しているからです。
販売時には、必ず「メリット」を伝えるようにしてください。有効成分の説明に終始する必要はありません。それよりも、「このマッサージオイルを使えば、肌が柔らかくなり、しっとりと潤いますよ」といった表現を心がけましょう。
あなたは、まさにお客様が求めている「アドバイス型販売」を体現する存在なのです。