フランス各地で実際に体験した施術をご紹介します。これらのトリートメントは、情熱を持ったプロフェッショナルたちによって考案されたものです。共通しているのは二つの点です。ひとつは、身体と心の両面から顧客に寄り添うアプローチであること、もうひとつは、五感すべてを的確に刺激する構成になっていることです。
執筆:Galya Ortega
『A Corps Bio』―自然派ケアL’Émotionで心と身体を解きほぐす贅沢なひととき
施設紹介
「A Corps Bio」は、ラ・ロシェルのやや中心部から外れた地区の小さな通りに位置しています。オーナーのSarah Thierryは一人でサロンを運営しており、スタッフを雇う予定はないそうです。
施設内には3つの個室があり、それぞれ異なる世界観を持って設計されています。Sarahは施術内容に応じて、部屋を使い分けています。ひとつは「ミネラル」をテーマにした部屋で、ハンドケア、フットケア、ネイルデザインなどの施術に使用されています。もうひとつは木の温もりを感じさせる「植物」をテーマにした空間で、ボディケア専用です。そして最後の部屋は「フローラル」をテーマに、フェイシャルケアや脱毛ケアに用いられています。
どの部屋も魅力的で、装飾のセンスが良く、明るく、そして非常に女性らしい雰囲気に包まれています。今回私が体験する施術は、「植物」のテーマに基づき、花と木の装飾が融合した空間で行われる予定です。
「L’Émotion(エモシオン)」とは
Sarahは次のように語っています。
「この施術は、私のプロフェッショナルとしての歩みを象徴するものです。それは、天然由来の製品、リラクゼーション音楽、香り、そして細部への丁寧な気配りといった要素を通して体験していただけます。このコンセプトは、使用する製品の倫理的な価値観にも支えられており、五感に訴えかける特別な感覚体験を提供します。このトリートメントは、“今この瞬間”への意識を促すことで、身体と心の再接続を図り、筋肉の緊張をほぐして血行を促進します。また、エンドルフィンの分泌を促すことで気分を改善し、良質な睡眠やストレス・不安の軽減にもつながります。」
私の体験
施術の前、私は施術ルーム内の椅子に腰掛けました。Sarahはこれから受けるトリートメントについて、シンプルで飾らない説明をしてくれました。とても自然体で誠実な印象です。彼女いわく、マッサージ中に感情が湧き上がることこそが、その効果を示す証であり、それこそが彼女が最も重視している点です。
彼女は施術前の対話を大切にしており、顧客ひとりひとりに合った内容に調整できるよう、事前のコミュニケーションを重視していると説明してくれました。施術の技法には、心身の緊張をほどき、安心して身をゆだねられるような要素が含まれています。また、その効果を高めるのが、彼女が丁寧に整えた温かく心地よい空間なのです。
私はベッドに横たわります。その上には厚みのあるフカフカのマットが敷かれていて、まるで雲の上にいるような感覚が味わえます。ベッドは温熱式で、部屋の温度も心地よく保たれており、全身が優しく包み込まれるような印象です。実際に、体がやわらかな雲の中に沈んでいくような心地よさを感じました。
施術
まず、うつ伏せになって施術が始まります。最初のコンタクトは、温かいおしぼりを足元に当てるところから。続いて、首筋や肩のあたりにも温かいおしぼりが置かれ、リラクゼーションへの導入が丁寧に進められます。
全身へのマッサージは、リラックス効果の高い手技と筋肉に働きかける動きを組み合わせたもので、身体と心の再統合を促すように構成されています。施術の締めくくりには、穏やかな手技による“目覚め”のフェーズがあり、最後に足元へのおしぼりで終了します。フェイシャルと頭皮のマッサージも、全身の流れの一部として丁寧に施されました。
施術を受けての個人的な感想
マッサージというものは、どんなものであってもリラックス効果があるものです。多くの施術者は、顧客に合わせた施術を行う努力をしています。ですので、個別対応のカスタマイズそのものが「シグネチャー(象徴的)」だとは言い難いと思います。質の高いケアであれば、それは「当然のこと」だと感じています。
では、「この施術のシグネチャーとは何か」と問われたら、私は迷わず「それはSarah自身です」と答えます。実際に体験してみて、そのことをはっきりと実感しました。これまでに受けたどのカリフォルニア式マッサージよりも、技術的な完成度が高く、しかも繊細で的確な動きに驚かされました。
彼女はまさに「身体と心の統合」を体現している施術者です。だからといって、「想いを込めて施術をする人がいれば、それだけでシグネチャーになる」とは思いません。このケースは明らかに特別です。
何が唯一無二かというと、Sarahのマッサージは、すべての動きが非常に的確であり、存在感があり、そこに喜びすら感じられるほどなのです。
施術時間と価格
L’Émotion:1時間/80ユーロ
『À Corps Bio』
303 avenue Jean Guiton, 17000 La Rochelle
『Baume』―五感に響くフェイスリモデリングトリートメント体験
施設について
このサロンは、サン・ピエール・ド・オレロン村の中心にある一軒家の1階に設けられた、コワーキング型の施術スペースです。広々とした空間には複数の個室が設けられており、到着時の受付として、また集団での瞑想やヨガ、ピラティスといったアクティビティにも活用される大きな共用スペースがあります。さらに、健康志向のドリンクを提供する小さなバーカウンターも併設されています。各施術者は、それぞれの顧客を迎えに行き、個室まで案内します。
今回の担当であるAurélieも私を迎えに来てくれました。私たちはまず、小さなサロンルームに入りました。そこには流木を使った木製のアームチェアと、施術前の準備やカウンセリングに使われるローテーブルが設置されています。施術ルーム自体は、ナチュラルな空間で統一されています。明るい色合いの木材を使用した大きな作業台が置かれ、海辺の雰囲気が漂っています。備品類はすべて整理されていて、使用予定の機器類も目に入らないように工夫されています。
施術「OsteoFace」のコンセプト
この施術が「ハイブリッド型」と呼ばれる理由は、Aurélieの持つオステオパシー(整骨療法)の知識と、彼女の補完的な専門であるフェイシャルケアの技術の両方に基づいているためです。施術は高いパーソナライズ性を持ち、環境にも配慮されており、地元に根ざし、「ウェルエイジング」やメンタルヘルスを支援する効果が期待されています。
このトリートメントは、上半身の緊張をほぐすことで、全身に軽やかさをもたらします。その目的は、顔の骨格、筋肉、皮膚、リンパ液といった複数の層にアプローチしながら、フェイスラインを再構築することにあります。
「OsteoFace」はホリスティック(全体的)なケアであり、顔と首の筋肉に宿る“記憶”に働きかけることで、深い心理・感情的なリラクゼーションをもたらすことを目指しています。
Aurélieは、この施術を五感すべてで体験してもらえるよう配慮しています。使用されるすべての要素には、彼女自身が大切にしている意味が込められており、コンセプトの一部として組み込まれています。
触覚:温かさや冷たさの変化、そしてオステオパシーとフェイシャルケアを融合した独自のマッサージ技術によって刺激されます。
嗅覚:オレロン島に自生するイモーテル(ヘリクリサム)の香りによって刺激されます。Aurélieは、Héliophytos社のイモーテル浸出油と、Herbes et Traditions社のイモーテル芳香蒸留水(ハイドロラ)を使用しています。
視覚:空間全体の装飾は、自然で落ち着いた雰囲気を持ち、視覚的にも癒やしをもたらします。
聴覚:施術中は、活力を与えるタイプ、もしくはリラックス効果の高いタイプの音楽が流れます。選曲は感情の解放を促すリズムに合わせて調整されています。
私の体験
第一ステップ:カウンセリング(アナムネーゼ)
施術のはじめに、Aurélieは私に対して、今日の身体的・感情的な状態について質問してきました。現在感じていることや、美容面での期待を確認し、それに応じて施術の意図を定めるためです。さらに、これまでの医療歴や心身のトラウマに関しても質問されました。
彼女は主に手技による施術を行いますが、必要に応じて非侵襲的なテクノロジーも使用可能であることを説明してくれました。それには「ジェットピール」、「フォトバイオモジュレーション(光バイオ調整)」、「エンドサーマル式ラジオ波」などが含まれます。
施術環境の準備
私は、脚を支える補助クッションが付いた加温ベッドの上に横たわりました。掛け布団と肌に触れる布はコットンガーゼでできており、極めて感覚的な快適さが得られます。
施術の導入
彼女はまず、私の腹部と横隔膜にそっと手を当て、筋肉そのものだけでなく、リンパ系の緊張を緩め、バランスを整える意図で触れていきます。その際、心拍と呼吸のリズムを整える「心拍変動トレーニング(コヒーレンス・カーディアック)」を指導してくれました。彼女自身も私に合わせて呼吸をし、そのリズムを私にも伝えてくれます。
頭部へのアプローチ
彼女は私の頭部に手を当て、内部の自然なリズムを整えるよう働きかけていきます。そのタッチは非常に繊細でありながら、同時に驚くほど正確です。ごく小さな圧を丁寧にかけながら、微細な調整が施されていきました。
施術の詳細
彼女は首筋に移り、頸椎一つひとつを優しく動かしていきます。
顔のメイクを軽く落とし、イモーテルの芳香蒸留水を含ませた温かいタオルを顔にのせます。その後、別のタオルでやさしく水分を拭き取り、再びイモーテルのハイドロラをスプレーします。さらに、イモーテルの浸出油を顔全体から首、デコルテにかけて丁寧に塗布します。
鎖骨の後ろ側にあるリンパ節を、小さなポンピング動作で刺激します。続いて、大胸筋に対してはストロークとストレッチを組み合わせたマッサージを施します。
頭部を片側に軽く回し、片側の顔の筋肉をほぐし始めます。反対側の頬の下には丸めたタオルを置いて支えます。
トラペジウス筋(僧帽筋)をボールで刺激し、リンパ節、顎、頬骨、側頭筋、前頭筋へと順にアプローチしていきます。再び僧帽筋へと戻り、今度は右側の筋肉に対して深いストロークを施します。それは、筋肉全体を「統合」し「連続性をもたせる」ことを目的とした一連の動きであり、大胸筋、僧帽筋、咬筋、側頭筋、前頭筋と順に繰り返し行われます。
続いて、大胸筋、僧帽筋、広頚筋(プラティスマ)、胸鎖乳突筋、頬の筋肉、額、目の周囲に対して筋肉レベルのマッサージを施し、可動性が損なわれている箇所を丁寧に探っていきます。各部位には微細な動きを加えて筋膜のリズムを活性化させ、可動性を回復させます。
最終ステップは「統合」のフェーズです。頭の向きをまっすぐに戻し、左右両側の首の筋肉に対して同時に深いマッサージを行います。一部の部位には温かいグアシャを使い、しわ、顎の緊張、むくみなどの改善を目指してストロークを加えます。その後、肩と頭部をなで下ろすようにして全体をまとめあげます。
オイルを温かいタオルで拭き取った後、オーガニックブランドEndroの美容液とクリームを塗布し、最後に、冷たいローズクォーツのローラーでリンパを流し、循環を整えます。ボディへと移り、足裏に両手を置いて施術を締めくくります。
その後は、ブランケットの上から脚から肩までを包み込むように手を滑らせていき、身体を再び活性化させます。少し休息を取った後、ヴェルヴェーヌ(レモンバーベナ)のハーブティーでやさしく目覚めさせてくれました。
私の感想
まるで雲の上にいるような心地よさでした。このケアは、もはや単なる美容トリートメントの枠を超えた、本物のセラピーだと感じました。鏡で自分の顔をじっくり観察すると、再生のプロセスが深く作用しているのがわかります。筋肉の深層にある緊張、しわ、硬直がすっかり消え去っていました。感情面でも、まるで瞑想のセッションを終えたときのような、深い静けさと調和を感じています。
施術時間と価格
OsteoFaceトリートメント:1時間/95ユーロ
『Baume』
2 rue Franck Massé, 17310 Saint-Pierre d’Oléron
『L’Instant Botanique』―フローリストの感性が息づく美容空間
施設について
ノルマンディー地方の小さな町に、「L’Instant Botanique(ランスタン・ボタニーク)」という名のサロンがあります。この施設は、大きな花屋の店内に併設されています。施術室へ向かうには、美しく咲き誇る花々の中を通り抜けていきます。
サロン内には、まずネイルケア用のコーナーがあり、そこから小さな通路を進むと、マッサージ用の個室にたどり着きます。空間全体が実に見事で、色彩、香り、そして花屋のスタッフが詩的かつ創造的に束ねた花々の美しさが調和し、訪れる人を魅了します。
コンセプト
この施術の基本理念は、五感を通じて「植物の世界の中心に身を置く」ような体験を提供することにあります。Justineは、自身が運営するフローラル・インスティテュートから着想を得て、顧客をまるで自然の中へといざなうような演出を目指しています。その想いは細部にまで息づいています。
嗅覚:空間にはローズの香りが広がっています。バラの香りのミストが空気中に拡散され、Green Spaのマッサージオイル「Rose & Oud」が使用されています。
聴覚:施術中は、自然の音(風、雨、水のせせらぎなど)と楽器の音色が交互に流れる特別な音楽が流れます。
味覚:ローズの花びらを使用したハーブティーが提供され、味覚にも優雅な余韻が残ります。
視覚:最も印象的なのは視覚的な演出です。花々が咲き誇る店内を通り抜け、キャビンの外側には見事な植物の壁があり、内側にも植物の装飾が施されています。その緑の壁には照明が組み込まれており、特別なエネルギーを空間全体に与えてくれます。
Justineは五感すべてへのアプローチを徹底的に考え抜いています。それゆえ、この施術はまさに「シグネチャーケア」と言える内容です。
私の体験
私はキャビンに入り、まずその空間を見回しました。そこはまさに植物の調和が息づく場所で、木材のナチュラルな温もりが全体を包み込んでいます。施術ベッドの上には、洗練された美しいフラワーアレンジメントが飾られており、目を引きました。側面の壁にはグリーンのLEDライトに照らされた植物の装飾があり、同じ色調のLEDキャンドルも添えられていました。その幻想的な雰囲気はまるで森の中にいるような気分をもたらしてくれます。
私は椅子に腰掛け、Justineが正面に座ります。まずは健康に関する記入シートを手渡され、それに沿っていくつかの質問を受けました。内容は、体調や好みに関するもので、施術前の準備として行われます。
その後、Justineはこれから行う施術について説明してくれました。ただし、彼女はあくまでも「これは単なるマッサージではなく、全体的な体験の一部である」と強調します。私はうつ伏せでも仰向けでも、好きな体勢からスタートして良いと言われ、施術は私の希望に合わせて柔軟に対応してくれるとのことでした。
施術の流れ
施術は頭部のマッサージから始まります。そこから徐々に全身へと移っていきます。マッサージは非常にやさしく、包み込まれるような感覚で、まさに“コクーニング”の名にふさわしい内容です。
Justineはこれまでの経験の中で学んできた多様な技術を、その場その場でお客様の状態に合わせて組み合わせていきます。具体的には、揉みほぐし、パルペ・ルレ(皮膚をつまみ転がす技法)、軽擦法、ロミロミなどが用いられます。最後に、再度の頭部マッサージがあり、顔にも少しタッチを加えて仕上げます。手足には温かいタオルが丁寧にあてられ、心身を締めくくるような余韻が残ります。
施術が終了すると、Justineはバラの花びら入りのハーブティーを勧めてくれ、私は再び花々に囲まれた店内へと戻りました。
なぜこの施術を作ったのか?
施術の誕生背景を知ることは、つねに興味深いものです。Justineはもともと情熱的なフローリストでした。彼女は花の仕事を深く愛していましたが、同時に美容ケアへの関心も長年持ち続けていました。やがてCAP(フランスの職業資格)を取得し、複数のサロンで実践を重ねた後、自身の夢であった「花」と「美容」を融合させたこの場所を創り上げたのです。
この施術は、まさに彼女のふたつの情熱の結晶であり、「シグネチャーケア」と言える存在です。
Justineはすべてにおいて、自分らしさを大切にしています。可能な限りオーガニック製品を使用し、サステナブルな選択を心がけています。彼女の施術には、花への深い愛情、そしてそのやさしさやぬくもりがそのまま込められているのです。
私の感想
まるで赤ちゃんのように、深いリラックス状態に包まれました。肌にはローズの香りが残り、花々に包まれた繭の中にいるような感覚です。施術後、花屋の空間を再び通り抜ける瞬間、幸福感で全身が震えるようでした。気づけば…私は自分へのご褒美に、花束をひとつ買っていました。
施術時間と価格
Soin L’Instant Botanique トリートメント:1時間/65ユーロ
『L’Instant Botanique』
75 avenue de la 2ème DB, 61200 Argentan