マンダム、清涼成分「l-メンチルグリセリルエーテル」にTRPV1の活性を抑制する効果を発見
2021.06.3
編集部
株式会社マンダム(大阪種大阪市)は、1-メンチルグリセリルエーテル(化粧品成分表示名 メントキシプロパンジオール)に不快刺激を抑制する効果と、 清涼感が持続する性質があることを確認したと発表した。
尚、同研究成果は、2021年7月15日に開催される、 第86回SCCJ研究討論会(Web開催)において発表する予定。
清涼感を得られるアイテムは多種多様だが、強さや持続時間など、 使用シーンやアイテムによって求められるものは異なることに着目。
一般的によく使われる清涼成分l-メントールは、 強い清涼感を感じられるといったメリットとともに、 高い外部温度で引き起こされる不快刺激を抑制する効果も持っている。一方、 揮発しやすい成分であるため清涼感が持続しにくいという課題点がある。
そこで、不快刺激が少なく持続力のある清涼感の実現を目指し研究を進めた。
〇l-メンチルグリセリルエーテルがTRP(トリップ)V1の活性を抑制することを発見
高い温度や化粧品に使用される一部の成分により、 痛みや灼熱感などの不快刺激が引き起こされることが知られている。この不快刺激には、 細胞の感覚センサーであるTRP(トリップ)チャネル※1の一種で、 トウガラシの成分の受容体でもあるTRPV1が関与している。
この不快刺激を低減するためには、 TRPV1の活性を抑制することが効果的なので、清涼成分l-メントールにTRPV1 の活性を抑制する効果があることが研究でわかっていたが※2、 そのl-メントールと構造の近い(図1)l-メンチルグリセリルエーテルには、 さらに高いTRPV1抑制効果があることを見出し(図2)。
〇l-メンチルグリセリルエーテルが有する皮膚への浸透性・残存性
汎用されるl-メントールは揮発性が高いため、 清涼感の持続性が低いことが課題であったが、l-メンチルグリセリルエーテルは揮発性が低く、皮膚上や皮膚内に長時間残存すると考えられる。
そこで皮膚モデルを用いた浸透性試験で検証したところ、 l-メンチルグリセリルエーテルはl-メントールよりも多く皮膚へ浸透し、 長く留まることを新たに確認した(図3)。よって、l-メンチルグリセリルエーテルは、 l-メントールよりも長時間に渡って清涼感を感じられると推察される。
〇l-メンチルグリセリルエーテルでマスク着用時でも不快刺激が少なく、 持続的な清涼感を実現できる可能性
コロナ禍によりマスクを着用する生活が日常になっている中、 多くの生活者がマスク内の暑さやムレといった不満を感じているのに対し、同研究技術が活用できると考え、 検証を行った。
≪検証内容≫
l-メンチルグリセリルエーテル、 l-メントールについて、 それぞれを2.5%配合したモデルマスク用ミストを塗布したマスクの着用試験を行い、 清涼感・刺激感について比較検証を実施
≪評価方法≫
不織布マスクの内側にモデルマスク用ミストを2 プッシュ(約0.2mL)噴霧し乾燥させたマスクを着用し、 60 分後の清涼感・刺激感について着用評価を実施
≪評価結果≫
・清涼感:l-メンチルグリセリルエーテルの時間経過に伴う清涼感スコアの減少は、 l-メントールよりも緩やかで持続性が見られた(図4)
・刺激感:目刺激感、 肌刺激感ともに l-メンチルグリセリルエーテルはl-メントールよりも刺激感が低かった(図5)
上記により、 l-メンチルグリセリルエーテルの方が、 不快刺激が少なく持続的に清涼感を得られる成分であると言える。
≪考察≫
TRPV1をはじめとするTRP チャネルの活性化温度閾値はpH によって変化することがわかっているが、皮膚の弱酸性という性質がTRP の温度閾値を低下させ、夏場の外気温やマスク内の温度によってTRPV1が活性し、 灼熱感等の不快刺激が引き起こされている可能性がある。しかし、 清涼成分 l-メンチルグリセリルエーテルの配合により、TRPV1の活性を抑制し、灼熱感等の不快刺激を低減したことで快適な清涼感を感じることができたと考えられる。マスクの着用は日常的に長時間であり、なおかつ顔は皮膚が薄く全身の中でも刺激を感じやすい部位であるため、持続性があり不快刺激が少ない清涼感を得られるl-メンチルグリセリルエーテルは、適した清涼成分だと言える。
さらに、 l-メンチルグリセリルエーテルには発汗時に清涼感強度が高まるという特徴もあり※4、上記の結果と合わせて夏場のマスク生活において、 マスク内の暑さ等のストレス軽減に繋がることが期待できる。
今回の結果から、 TRPV1抑制効果の高い l-メンチルグリセリルエーテルを清涼感のキー成分として使用することで、 不快刺激が少なく持続する清涼感を提供できると考え、より快適な清涼感を提供できる製品を上市しることに生かしていきたい意向。
※1 TRP=Transient Receptor Potential。 様々な感覚受容に関与する陽イオンチャネルファミリーで、 化学物質や温度などを感知して電気信号に変換するセンサー
※2 「マンダム、 メントールによる鎮痛のメカニズムを解明」 2015 年12 月10 日リリース
https://www.mandom.co.jp/release/pdf/2015121001.pdf
※3 2020 年6 月/16 歳~24 歳/男性/n=204/NET 調査/マンダム調べ
44 「マンダム“心地よい清涼感”の研究と応用 清涼感に対する発汗の影響」 2009 年4 月10 日リリース
https://www.mandom.co.jp/release/pdf/2009041001.pdf
- 参考リンク
- 株式会社マンダム