ベネフィットワン・ヘルスケア、首都圏で健康増進モデル事業展開

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2013.10.18

編集部

株式会社ベネフィットワン・ヘルスケア(東京都品川区西五反田・太田努社長=画像)は、同社の「ハピルス健康増進プロジェクト」が経済産業省の平成25年度ヘルスケア構築推進事業に採用され、東京、神奈川、埼玉、千葉のうち3健保でモデル事業を展開している。

太田務社長「ハピルス」とは「ハッピー・ヘルス」の略で、幸せな健康を意味する同社のサービスブランディング名である。同プロジェクトは「インセンティブ・マネジメント」を活用した健康支援(保健)事業である。同社が企業の健康保険組合や自治体、個人に対し実施する保健指導等の健康プログラムに関して、参加者にインセンティブ(ポイント)を提供、参加率や継続率、実施成果の向上を図る。保健指導は参加や継続、体重減量などについて500、1000などポイントを与えながら行う。参加者は取り組み状況や実施成果を同社に報告し、同社は取り組みや成果に応じてポイントを付与、最終的にポイントを商材と交換し利用者に還元するシステムである。商材は運動靴、万歩計、体重計、フィットネスボールなどだが、映画鑑賞券、スポーツクラブ優待券なども検討中だ。

国(厚労省)は平成20年度に病人を出さないことを目的に法律で「特定保健指導」を定めたが、23年度の実施率はわずか15.9%に過ぎなかった。一方で国民医療費は37兆円にも上っている。いくら「運動をしなさい」「食事を変えなさい」と保健指導しても一般的にはつらいイメージが定着していて効率が上がらなかった。

そこで、保健指導にインセンティブ制度を導入し「簡便に、楽しく、うれしい」健康づくりプログラムを提供するのが狙いである。対象者はBMI(肥満度)が25以上の人で、500人を対象に120人の参加者を募った。プログラムは3カ月で最初は電話などで「体重をあと5キロ落としましょう」などの成果目標及び生活習慣の改善計画を決める。1カ月半後に指導員が電話で支援し、3カ月後には目標が達成できたか評価する仕組みだ。参加や毎月の取り組みに応じて一人当たり最大5千円に相当するインセンティブポイントが与えられる。

同社取締役の河原章氏は「ベネフィットワン・ヘルスケアの事業の方向性は二つある」として(1)ハイリスク(2)ポピュレーションのアプローチを挙げた。(1)は高額な医療費がかかるリスクを減少させること。例えば、糖尿病なら重症化で人工透析にならないように予防する指導。(2)は病気になる人を減らす指導である。

今後は企業相手だけでなく一般消費者向けに事業を展開するのが理想だ。健診代行業務の「ハピルス健診」と保健指導の「ハピルスチェンジ」が同社の二大柱である。これからはアジアで保健指導や肥満防止は必要になるだろうと予測、「ハピルス」の海外進出も企業戦略として考えられるという。

 

糖尿病の重症化予防、うつ病の職場復帰サポート
ベネフィットワン・ヘルスケアが新プログラム

ベネフィットワン・ヘルスケア(東京都品川区、太田努社長)は今年4月以降、本業の健診予約代行業務・保健指導業務以外に新しいヘルスケア事業を次々に展開している。

まず、糖尿病患者の「重症化予防プログラム」。糖尿病の三大合併症である糖尿病性腎症になり人工透析を始めるケースが増大している。人工透析が始まると、患者のQOL(生活の質)は著しく低下するとともに、医療費が非常に高額になって国の負担が重くなることもあり、国保や健保が重症化の防止を進めることが重要になっている。

同社は、国保や健保の加入者のレセプト(診療報酬明細書)や健診データの分析を実施、人工透析への可能性がある糖尿病および糖尿病性腎症の患者を抽出する。その後、6カ月間にわたり、管理栄養士と看護師が予防プランに基づいて服薬管理の徹底や生活改善のための食事・運動指導を、面接やニュースレター、電話などで行う。特別料金で利用できる全国1200店舗のスポーツクラブも紹介する。主治医や産業医と連動して指導後の経過報告をし、プログラム受講者を集めたOB会の運営や食事療法を学ぶ料理教室などのイベントも実施する。料金は6カ月間のプログラムで一人9万5千円である。

次は、最近増えているうつ病患者の職場復帰支援である。うつ病は国の4大疾病に加えられて5大疾病となった。全国健康保険協会が平成23年度に発表した「現金給付受給者状況調査報告」によると、傷病手当金支給状況のうち「精神及び行動の障害」が26.31%と、平成7年当時の約6倍にもなっている。うつ病など心の病が原因で休職する社員が急増している。そこで同社は、「職場復帰支援プログラム」を作成、休職中の社員に、メンタルヘルスケアの知識と技術研修を受けた保健師・管理栄養士等の専門スタッフがヒヤリングやレセプトの分析をして病状を把握。健康運動指導士の運動療法や精神科医や臨床心理士による認知行動療法、ストレス対処プログラムなど支援プログラムを組む。重症化が懸念される場合は、臨床心理士が訪問カウンセリングを行う。これも6カ月プログラムで電話指導8千円、訪問カウンセリング1回5万円である。

そのほか、提供する特定保健指導事業の付加価値サービスを続々と追加している。昨年10月からは、家族による介入・サポートのために、他人に知られることなく家族だけで写真やメッセージのやり取りができる家族SNS「wellnote」を展開、家族のサポートを通じて生活習慣や健診結果の改善につなげている。また、昨年11月からは大手スポーツクラブ9社1200店舗と契約、運動習慣の定着に向けた利用優待サービスも始めている。

 

<解説>
病気にならない予防が主眼~ベネフィットワン・ヘルスケアの事業

株式会社ベネフィットワン・ヘルスケア(東京都品川区、太田努社長)の事業は「病気になった後のケア」ではなく「病気にならないためのケア」に主眼がある。「未病予防」に力点を置いて働く人、家族を健康にし、結果的に医療費を抑制し、社会を明るくしていこうというのが創業の精神である。

第一は予防。健保や企業の人事部から健康診断の予約代行の委託を受け、医療機関への予約や健診結果のフィードバックなど一切の業務手続きを全て引き受ける。健保や企業は煩雑な手続きをしなくて済むわけだ。同社は全国の医療機関3千カ所と契約し、専用サイト通じて、契約企業の社員から直接、人間ドックなど健診の申し込みを受ける。健診を受けているかのチェック、健診結果の会社への報告、料金の精算も代行する。女性専用のフロアや駐車場有無の検索など、個人のニーズにマッチした、ホテル選びの感覚で個人の嗜好に合った健診機関を選択できる。

健診結果は過去3~5年前とどう変わったか、過去のデータも伝え、このままでは将来、どういう病気になる恐れがあるか、医療費はどのくらいかかる可能性があるか等の将来のリスク予測も伝えていく。
また健康診断とは別に、人間ドック等の自由診療(有料)の健診を専用サイトを通じて個別に予約することもできる。自由診療の健診には繁忙期と閑散期があって、閑散期には最大半額にディスカウントして、健診者にサービスを提供できる利点がある。ゴルフや旅行と同じように直前割引や曜日限定割引など割引での利用がメリットである。

第二は保健指導である。健診結果を保健師や管理栄養士などの専門職と相談し、体質改善をした方が良い人に病気予防のお手伝いをする。厚労省も「特定保健指導」ということで自治体や健保に従業員の腹囲や肥満度の数値を測り、メタボリックシンドローム及びその予備軍に対して、生活習慣の改善を目的とした保健指導をすることを法律で定めている。その業務の代行を同社が行っている。例えば、1万人規模の企業に1千人のメタボの従業員がいたとすれば、その人々に6カ月間の保健指導プログラムを用意する。管理栄養士と保健師が独自の保健プログラムを作成、食事生活と運動習慣の改善を中心に、マラソンのペースメーカーと同じように寄り添って見守る。最終的に自分で食生活の管理ができるまで見届ける。

現在、同社に特定保健指導、健康診断代行等を委託している団体は410を超えており、太田社長は「未病予防と保健指導で健康寿命を伸ばしていくことが我々の目的である。これは国の方針と合致している」と語った。

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