アトピーが皮膚がんのリスクを減らす
2014.05.12
国際部
皮膚の機能障害による湿疹は、潜在的に腫瘍の形成を防ぎ、皮膚がんのリスクを減らすことになるという研究結果が5月6日、英国King’s College Londonのサイトに掲載された。
湿疹と皮膚がんの関係については、いくつかの先行研究がある。しかし、特にアトピー性皮膚炎では、使用している薬の種類が結果に影響を与えている可能性があるので、がんリスクを減らす効果を直接特定するのは困難だった。今回のKing’s College Londonの研究者らによる調査は、皮膚の機能障害によって引き起こされるアレルギーが、実際に皮膚がんを防ぐことを示した最初のものとなった。
湿疹は、皮膚バリア機能の障害につながる、皮膚の最も外側の層の構造タンパク質の欠損で起こる。研究では、アトピー性皮膚炎の患者に見られる皮膚の機能欠損のモデルとして、皮膚バリアタンパク質を欠いた遺伝子改変マウスを用いた。バリア欠損マウスと正常マウスで、がんの原因となる化学物質の影響を比較した。マウス1頭当たりの良性腫瘍の数は、通常のマウスよりバリア欠損マウスで6倍低かった。このことは、表皮バリアの欠損が、遺伝子改変マウスを腫瘍から保護したことを示唆している。
幹細胞再生医療センター長のFiona Watt教授は「我々の実験モデルでは、がんの感受性とアレルギー肌に明確な関係を見出した。この知見はまた、体の免疫システムの変更が、がん治療の上で重要な戦略であるという見解を支持している」と話した。「アトピー性皮膚炎の不快な肌の状態が、からだの健康に少しでも役にたっているということは、アトピー患者への小さな慰めとなるかもしれない」とも付け加えた。