資生堂、ファンケルの基礎研究動向(上)

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2014.08.18

編集部

資生堂とファンケルは、肌の免疫力向上や紫外線遮蔽(UVカット)に視点を当てた研究開発に力を入れて取り組んでいる。資生堂は、肌の免疫をつかさどる細胞「ランゲルハンス細胞」に直接働きかけて肌の免疫力を高める複合成分を開発。複合成分を応用したスキンケアの商品化に繋げる。また、ファンケルは、紫外線を遮蔽する機能を持つ無機粉体「酸化セリウム」の形状を変えてUV効果を高めた新素材を開発。新素材をパウダータイプのファンデーション開発に応用して実用化する。両社の基礎研究は、細胞レベルから肌への効果を実証し、高品質の化粧品開発を実現しようというもの。そこで両社の肌の免疫力向上や紫外線遮蔽の研究開発にスポットを当て研究開発の取り組みに迫った。

資生堂、複合成分を開発し肌の免疫力向上を実証

資生堂_ランゲルハンス細胞イメージ図資生堂の肌の免疫力を高める複合成分の開発は、骨髄で作られる樹状細胞で、表皮上部に網目状を形成した「ランゲルハンス細胞」(写真=イメージ図)の自己防衛機能(肌トラブル、炎症)が加齢によって低下することを見出した。

この低下したランゲルハンス細胞の機能を回復させるため、独自開発の成分アクアインプールと酵母やキノコ類に多く含まれ免疫賦活効果が高いベーターグルカン、ブルガリアローズウオーターの3成分を組み合わせた複合成分を開発し特許申請した。また、3成分を配合したプロトタイプ美容液(試作品)を使って被験者12人に6週間治験を行なったところランゲルハンス細胞の自己防衛機能が64%増加し、肌の免疫力が高まることを実証した(図1、図2)。

資生堂_図1-2

同社の肌の免疫に係るランゲルハンス細胞の基礎研究は、米国・ボストンの皮膚科学総合研究所との共同研究を含めて20年以上にわたる。1993年に同研究所との共同研究でランゲルハンス細胞を介して肌と脳が密接に繋がっていることを科学的に立証し、新しい皮膚生理学分野を創出。2007年には、加齢とランゲルハンス細胞の自己防衛機能の関係を解明。今年(2014年)に入り肌の免疫力を高める複合成分開発と試作品によるヒトでの実使用でエビデンスを実証した。

同社は、複合成分の開発とヒトでの実証を踏まえて現在、新たなスキンケアの開発に取り組んでいる。

2014年3月期における資生堂グループ全体の研究開発費は、146億7200万円(売上高比2.2%)でその内、各事業に直接配賦しない基礎研究費用は65億6000万円にのぼる。

また同社は、今年5月、神戸医療産業都市に「資生堂細胞加工培養センター(SPEC、呼称:スペック)」を開設。米レプリセル社が開発した毛髪再生医療技術の事業化(2018年度)に向けて本格研究を始めるなど関心も高い。

 

参考リンク
資生堂グループ企業情報サイト

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