ヤマトトウキの葉を使ったハーブティーを開発

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2015.07.30

編集部

トウキ茶畑背景201507奈良県は、古くから漢方薬の生薬と深い関わりがある。日本書紀には、610年に推古天皇が山で薬狩りをしたという記述があり、奈良の野山には様々な生薬が自生していたといわれている。

中でも、ヤマトトウキは奈良を代表する生薬の1つ。株式会社パンドラファームグループ(奈良県五條市)では、このヤマトトウキの葉を使ったお茶の製造・販売を行なっている。

同社は、農業生産と加工食品の製造・販売を行なっている会社で、主に梅干と柿の生産を手掛けている。ただ、以前から梅と柿だけでなく、新しい産品に取り組みたいという思いがあった。

同社に近い西吉野では、古くからヤマトトウキが栽培されており、特に大深で採取できるトウキは「大深トウキ」とも呼ばれ、現在もトウキの中でも最高品質といわれている。しかし、近年、中国からの漢方薬輸入が盛んになり、生薬が大幅に安く取り引きされるようになったことで、次第に生薬栽培・採集も廃れ、栽培農家も激減していた。

そのような背景の元、国・同県の研究事業でヤマトトウキがテーマに挙がっていたため、同社はその栽培に興味を持ち、数本のトウキの苗を入手して、休耕田を使って独自で栽培を試みた。今から約4年前のことだ。

トウキ葉と根20131130トウキの生産は、栽培期間が長く、生産者の負担も大きい。通常、種を植えて苗を育てるのに1年、それからもう1年かけて根を育てるため丸2年を要する。

このことが、生産量の減少につながっているため、2012年から同県農業研究開発センター(当時:同県農業総合センター)と共同で、ハウスを用いた優良苗の短期栽培技術研究に着手。具体的には、発芽から苗を育てる時期にハウスを利用することで、天候に左右されることなく、適切な温度コントロールの元、確実に苗を育成。その後、定植して「1年半の短縮に成功した」(パンドラファームグループ マーケティング企画担当 加藤由美氏)。

栽培期間が短縮されたとはいえ、トウキの栽培は簡単ではない。「原因ははっきりわからないが、昨年まで発芽率の低い状態が続き、収穫量が大きく減った」(加藤氏)。原因については研究中だが、「今年は比較的順調に発芽しており、昨年より手ごたえがある」(同氏)という。

トウキ茶の製造についても“トライアンドエラー”を繰り返し、現在の安定した製造技術を完成させた。特に、茶葉の「揉捻工程」には工夫が凝らされている。「揉みすぎるとトウキの重要な成分が抜け出てしまう」(加藤氏)ので、揉む時の力加減が重要になるという。また、トウキ葉独特の青臭さを飛ばすための温風乾燥なども試行錯誤を重ね、飲みやすいお茶に仕上げた。

現在、ヤマトトウキ葉のお茶はストレートのほか、レモングラスブレンド、ショウガブレンド、シナモンブレンド、チンピブレンドの5種類をラインナップ。トウキ独特の甘い香りが効いて、一風変わった味を楽しめる。「ほぼ100%女性が買う」(加藤氏)ほど女性に人気のお茶となっており、リピーターも多いという。ヤマトトウキ葉の成分分析によると、大葉と比較して抗酸化力に優れ、特にスーパーオキシド消去活性とヒドロキシルラジカル消去活性は大幅に高い値を示しており、健康にも良い。

試飲会などでは、「すっきりする」「身体に合う」などの声が聞かれ、漢方薬の「当帰芍薬散」で使われているトウキ根を知っているお客からは、葉を使った応用製品への期待が高い。同社の「旬の野菜レストラン農悠舎王隠堂」では、“てんぷら”としても提供しており、「塩をつけて食べると美味しい」(加藤氏)。このほか、煮込み料理などのブーケガルニのような使い方もあるという。

今後は、ヤマトトウキ葉の用途として、お茶だけに限らず「ミントのようなスパイスとして、生で食べることができる市場をつくっていきたい」(加藤氏)としており、年間通して3~4回出荷できる栽培体制を整えていく計画。このほか、ヤマトトウキ根の栽培・普及にも注力していく考えだ。

参考リンク
農業生産法人 農悠舎王隠堂

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