漢方薬膳を園芸療法に取り入れQOL向上に

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2015.09.2

編集部

グラフィックス1園芸療法と漢方薬膳を組み合わせることで、患者の生活の質(QOL)の向上を目指すユニークな研究を行っている大学がある。帝京平成大学 薬学部 准教授の石井竹夫氏が取り組んでいるもので、園芸療法による外側と、薬膳による内側からのケアによる相乗効果が期待できるという。

園芸療法は、季節に応じた花や野菜を種や苗から育てて、花の美しさや採りたての旬の野菜を味わうことで、身体機能の回復、心の癒しを実現する療法。石井氏は、薬剤師の漢方の知識を園芸療法に役立てる方法を模索しており、その1つとして園芸療法プログラムに漢方薬膳の導入を試みている。

実践するにあたっては、NPO法人日本園芸療法研修会(神奈川県横浜市)と協業。認知症などを患い、生活支援を必要としている高齢者の園芸グループ「ベルガーデン水曜クラブ」において、同大学の卒論生たちが高齢者とともに、苗の育成・収穫を行い、それを元に作った漢方薬膳を提供している。

「医食同源、身土不二に基づいて、身近な食材を取り入れるのが基本」(石井氏)としており、旬の食材と体質・症状に合わせた漢方構成生薬を用いて料理する。例えば、消化器系の疾患を目標にした薬膳であれば、これに対応する漢方薬「六君子湯」「補中益気湯」などに含まれるナツメ(大棗)、ウンシュウミカンの果皮(陳皮)、ヤマイモの根茎(山薬)、ニッケイの樹皮(桂皮)などを使う。

これまでに提供した薬膳料理としては、「六君子湯」に近い料理として「サムゲタン」がある。漢方構成生薬として高麗ニンジン、ナツメ、ショウガ、陳皮などを使っている。また、「六君子湯」に近いお茶としては、ほうじ茶にナツメ、陳皮、ショウガを入れた。陳皮については、皮の表面にワックスがついている場合があるので、アルコールで拭き取る必要がある。

こうした漢方薬膳料理を提供しているのは、これから薬剤師を目指そうとしている学生たちである点がポイント。「薬剤師の数は将来、飽和状態になると予想される。そんな時代が来たとき、どこで他の薬局と差別化を図るかが重要。せっかく苦労して6年間薬学を学んだのだから、その知識を活用して薬膳に生かしてほしい」(石井氏)といい、差別化要因の1つとして提唱している。

ここで使用している漢方構成生薬は、厚生労働省の定める「日本薬局方」(日局)に基づく生薬を指し、中国の伝統医学である中医学ベースの生薬とは異なる。「現在の日本漢方は、中医学の古典である“傷寒論”や“金匱要略”に基づく伝統処方とかけ離れていっている」(石井氏)といい、もともと小児の夜泣きなどに使用していた「抑肝散」が、今は認知症治療に用いられていることを例に挙げた。「日本はエビデンス重視なので、エビデンスに基づく日本漢方をベースにする」(石井氏)と強調する。

また、生薬を使う際に気をつけなければならないのが、量の問題だ。日局に記載の量を超えると医薬品扱いとなり、医薬品の効能を知らない素人は十分に気をつけなければならない。例えば、「カギカズラの刺(釣藤鉤)を薬膳に使う人がいるが、量を間違えると血圧を下げてしまう」(石井氏)と警告する。そのため、使用量によって医薬品第2類に分類される食材については、薬剤師の指導の下で調理することを推奨している。

石井氏は、薬剤師の果たす役割を強調する。「薬剤師の仕事はいかに医師の処方した西洋薬を減らすことができるかだ。或いは西洋医の守備範囲でない未病をカバーすること」で、ここに園芸療法と漢方薬膳の組み合わせが生きてくるという。特に精神疾患の患者については、抗精神病薬に対する多剤併用は大きな問題と指摘。「なんとかして西洋薬を減らしたい」という強い思いがこめられている。

石井氏は「薬局を拠点にして、薬剤師が薬膳教室を開いたり、漢方教室などを開催して、地域医療に貢献してほしい」と夢を描く。

参考リンク
帝京平成大学

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