化粧品各社「チャイナプラスワン」加速
2013.04.15
編集部
化粧品各社「チャイナプラスワン」加速
中国市場に軸足を置いて事業展開してきた化粧品各社にとって尖閣の領土問題に伴う中国国内での暴動、日本製品の不買活動、中国の労働賃金上昇などに直面して中国市場戦略の抜本的見直しに迫られている。ここへきてベトナム、ミャンマーなど中国以外の国に拠点を設けるチャイナプラスワンの動きが急速に高まってきた。
中国での失速を象徴するのが国内トップの資生堂。同社の2013年3月期連結決算は、営業利益が前期比37.4%減の245億円、当期利益同27.7%減の105億円と減収減益になった。よりどころとしていた中国市場の失速が響いた。反日デモ発生当初、100店を超す百貨店売り場を5日間休業、1000店を超える現地化粧品専門店の売り上げも大きく落ち込んだ。同3月期の中国事業売り上げは、891億円と前期並みを確保したが期首に1000億円10%台の成長を見込んでいただけにチャイナショックが業績にまともに反映した格好で経営トップ交代にまで発展した。
同社は、今期の見通しを「上期減収、下期持ち直す」と見ているが本格回復の足取りは鈍い。鎌倉工場の閉鎖と2015年度までに1000人の合理化、ベトナム工場の中・低価格のスキンケア生産移行など中国事業の痛手は大きい。
対中進出を果たした多くの化粧品各社にとって「いつ資生堂と同じ状況に陥るか分からない」と警戒しながら新たな拠点として経済が急成長しているインドネシアやマレーシアをはじめ労働賃金が安く政情が安定してきたベトナム、ミヤンマーなどの新興国に拠点を設ける「中国プラスワン」の思考を一段と加速する構えだ。すでに、日本と経済協定を交わしたベトナムやミヤンマーなどは、日本からのインフラ支援で工場団地の建設が始まっている。今後、インドシナに進出する日系化粧品メーカーが急速に増える見通しで、海外流通網の整備や現地生産の統配合などを含めてチャイナプラスワンの流れは、より加速して行くだろう。
異業種から化粧分野になだれ込む
国内に目をやると異業種から化粧品分野に参入(表)する動きが引き続き顕著だ。原料の有効活用を図りこれまで培ってきた生産技術を化粧品開発に応用して事業化するケースが製薬、酒造メーカーを中心に目立つ。コンビ、ヤマダ電機なども新規参入した。
この中には、大塚製薬や富士フイルム、ロート製薬など活路を海外に求める企業も少なくない。大塚製薬は、韓国の男性化粧品市場に参入。富士フイルム、ロート製薬は、中国市場に参入し激しい争奪戦を展開している。
国内化粧品各社の海外事業展開は、日本の少子高齢化と国内化粧品需要の鈍化が要因。しかし、日本流の商法や商品が海外で受け入れられ、確実にアジア市場で業績向上に結び付けられる保証はない。欧米企業と激しい戦いに打ち勝たなければ生き残れない。その生死を賭けた戦いが現実にアジア市場中心に始まっている。
引き続き、国内化粧品分野に新規参入が増える一方で、アジア新興国の人口増加と経済成長を支えにしながら現地に根差した商品開発と売り方、販売チャネル、販促、拠点網を含めた海外事業のトータル戦略を再構築することが焦眉の急といえる。
参入企業 | 事業概要 |
---|---|
アンジェスMG | 特許保有ペチプド活用の化粧品をサンルと共同開発。販売 |
ロート製薬 | 2001年参入。スキンケア事業が約60%超え海外事業を強化 |
森下仁丹 | 子会社エムジェイラボを設立(2011年)し本格参入 |
大塚製薬 | 韓国の男性化粧品分野に参入。当面100億円目指す |
富士フイルム | フイルム技術を応用し美白、高齢化化粧を国内、海外で販売 |
日本盛 | 「米ぬか美人」をシリーズで販売。2015年度50億円目標 |
山田養蜂場 | バラと蜂蜜配合の自然派化粧品を通販中心に展開 |
菊正宗 | 酒粕エキス配合のスキンケアなどをドラッグストア中心に販売 |
ヤマダ電機 | 子会社プインプルで事業展開、ポイントアップによる集客増狙う |
双日コスメ | 双日から分離独立。海洋深層水、アミノ酸配合化粧品販売 |
白鶴酒造 | 酒粕エキス成分配合のスキンケア開発。商品開発を強化 |
シルヴァン | 昭和電工、ニチレイバイオサイエンス共同設立 |
月桂冠 | 日本酒の醸造技術を応用した保温性の基礎化粧品を開発・販売 |
マルホ | 皮膚治験を応用した化粧品開発・販売 |
全薬工業 | 皮膚病薬開発を応用の基礎化粧品開発・販売 |
コンビ | 粧品「ナナローブ」を開発・販売。ベビーカーに次ぐ事業目指す |
ミキモト | 真珠ブランドを前面に押し出した化粧品を開発・販売 |
*正式名サンルイインターナショナル
**正式名双日コスメティックス