市民公開漢方セミナー、漢方治療が有効な症候などを紹介

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2016.11.24

編集部

全体日本漢方生薬製剤協会(会長・加藤照和氏)主催の第19回市民公開漢方セミナー「漢方は素晴らしい!漢方薬の特長」がこのほど、都内で開催され、同協会 一般用漢方製剤委員会 委員長の長島義昌氏がフリーアナウンサーの柴原紅氏の質問に答える形式で、漢方の基礎的知識の紹介を交えながら、漢方治療が有効な症候などについてわかりやすく解説した。

漢方は、元をたどれば中国から伝わった伝統医学だが、日本人の身体や気候に合わせて独自の発展を遂げてきた医学。現代の西洋医学が各臓器を診たり、データで判断するのに対して、漢方は人を診て、現象や肉眼で判断し、個人差(体質の違い)を重視する。

そのため、漢方では同じ疾患でも患者に現れる症状や体質に合わせて薬物や治療法を決定、身体全体の調子を整えていくことになる。「自分で治す力を助けて、身体を元に戻す」(長島氏)のが漢方治療の大きな特徴となる。

漢方は自覚症状を重視する。「自覚症状を身体からサインが出ていると捉える。これは本格的な病気の手前の“未病”であり、漢方治療の対象となる」(長島氏)。具体的に、漢方治療が有効な症候として、「症状を引き起こしたきっかけがなく、特に強いといえる症状がない」「冷えやだるさ、めまい、肩こりなど他の薬が効きにくい、あるいは一つの西洋薬を選びにくい」「以前からある不快な症状が続いている」「何となく体力が落ちた、体調が崩れた、不快な症状がじわじわと出てきたと感じる」「検査値は正常だが自覚症状がとれない」「精神神経の不調」を挙げた。

漢方薬は生薬の最適な組み合わせで構成されており、バランスの良さ、完成度の高さに特徴がある。「顆粒や錠剤などは日本の最先端技術で作られており、安全性が高い。日本製は安心して使える」(長島氏)。

長島体質別の漢方薬の使い方にも触れた。栄養が足りないタイプの「血虚」に対しては当帰芍薬散の他、疲れやすく痩せている人向けの十全大補湯、眠りの浅い人向けの加味帰脾湯などがお勧め。血行が悪いタイプの「瘀血」には、桂枝茯苓丸を紹介。「足は冷えて、身体の上半身がのぼせるのは瘀血の代表的な症状」(長島氏)という。

エネルギーが足りないタイプの「気虚」には補中益気湯などがお勧め。気虚は胃腸の弱さと相関関係があり、六君子湯も代表漢方薬の1つ。五臓の脾が弱いと、抵抗力が下がり、カゼもひきやすくなる。そのため、「補中益気湯は胃腸が弱くカゼをひきやすい人にもお勧め」(長島氏)。

ストレスが発散できないで気が滞るタイプの「気滞」には、更年期に良い加味逍遥散、イライラして眠れない人向けの柴胡加竜骨牡蛎湯、喉のつまり感がある人向けの半夏厚朴湯などを紹介。漢方薬だけでなく、香りに目を向けるのも大切だとして、「香味野菜を食べると気持ちがリラックスして、気のめぐりがよくなる」(長島氏)という。

潤いが不足するタイプの「燥」には麦門冬湯がお勧め。痰の出ない苦しい咳に良い他、「しわがれ声にも効能がある。カラオケでいつもより高い声で歌えるようになる」(長島氏)と一風変わった効果も紹介した。水が溜まっているタイプの「水滞」には五苓散や防己黄耆湯などを挙げた。「五苓散は2日酔いにも良い。防己黄耆湯は膝の水が溜まって痛む場合にも使える」(同氏)。

この他、40代以降に見られる尿トラブル対策についても言及。尿トラブルは、生命活動を維持する腎の働きが減少(老化)していく「腎虚」に原因があるとして、八味地黄丸を勧めた。

漢方は西洋医学では対応が難しい症状に効果を発揮するものの、「漢方は現代医学に取って代わるものではない。漢方を取り入れれば、治療の幅が広がり、QoLの向上にはつながるが、不調があればまずは西洋医に診察してもらうのが大原則」(長島氏)と喚起を促した。

参考リンク
日本漢方生薬製剤協会

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