東京生薬協会講座、薬膳による食養生や冷えの漢方処方などを紹介
2018.01.23
編集部
公益社団法人東京生薬協会(東京都小平市)主催の第5回「薬用植物・生薬に関する講座」が21日、開催され、イスクラ産業株式会社 信頼性保証室 室長の原三貴氏が「薬膳による養生の世界 II」、医療法人社団 金匱会診療所 所長の山田享弘氏が「日常診療でよくみられる症候の漢方治療」についてそれぞれ講演した。
原氏は、中医学の基礎的知識を説明する中で、未病を防ぐという考え方に触れ、普段の食養生で健康を維持する方法として薬膳を紹介した。日常、ちょっとした不調がある時に、「薬膳により体のバランスを取り戻して自分で健康になる」(原氏)ことができる。また、いくら薬膳が良いものであっても、食物を消化吸収する胃腸が弱いと意味がないので、「温かいものを食べるようにして、胃腸を冷やさない」(同氏)ことが大切だと強調した。
季節の食養生についても紹介。冬については同じ“冷え”に対しても、例えば腎の陽気不足による「内寒」による“冷え”に対してはシナモンやクルミ、牛肉などを摂るようにするほか、「黒ゴマのような黒色の食物も体を温める」(原氏)。具体的な冬のレシピとしては「羊肉の辛味炒め」「鶏出羽のスープ」などを挙げた。さらに、冬は腎の養生が重要だとして、「えびニラ餃子」「黒色食材のミートローフ」を紹介した。「薬膳は自分で自分のバランスを整えるもの。日常の生活に活かしてほしい」(同氏)と訴えた。
山田氏は、日常診療でよくみられる症候として頭痛、食欲不振、腹痛、下痢、便秘、頻尿、疲労感、冷え、のぼせ、眩暈、動悸、不眠を挙げ、それぞれに対する過去の症例の治療法について紹介した。
このうち、冷えについては、四肢末端の冷え、鼠径部から腹部へかけての痛みには「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を使用。症例では、36歳婦人の両手の凍傷に対して投与した大塚敬節著「漢方診療三十年」の一節を紹介した。「毎年、凍傷に苦しむ人は10月~11月にかけて寒さに向かう前に、3週間ほど当帰四逆加呉茱萸生姜湯を飲んでおくと凍傷を起こさないし、起きても軽症で済むことが多い」(山田氏)という。さらに、「しもやけに紫雲膏とともに用いると効果的」なことなども紹介した。
- 参考リンク
- 公益社団法人東京生薬協会