【連載】大手化粧品会社の研究(59)ロート製薬の会社研究 ~再生医療事業に軸足を置く、幹細胞コスメ実用化~(中)
2018.11.13
編集部
ロート製薬は、化粧品事業が好調なうちに新規分野に進出し、さらなる成長・発展を図る戦略に打って出ている。新分野への軸足が再生医療への挑戦だ。同社がなぜ再生医療に挑戦するのか。理由は2つある。
再生医療に欠かせない「細胞を扱う技術」と「無菌製剤技術」を持っていること。目薬やスキンケア製品の研究開発で築いた礎が、新規事業を支える基盤になり得るとの考えによる。すでに「脂肪由来間葉系幹細胞」に着目した研究に着手しており再生技術を応用した幹細胞コスメ(化粧品、育毛品)の開発に拍車をかけている。
同社は、再生医療の研究開発に取り組むため、社内体制を整備した。
2011年6月に「先端技術研究室」を設立したのに続き、2013年5月に「再生医療研究企画部」を新設して再生医療研究に大きく舵をきった。また、細胞加工施設(CPC)を設置し事業体制を整えた。さらに、2013年11月に琉球大学医学部と再生医療の共同研究をスタート。2014年4月には、大阪大学医学部内に「最先端医療イノベーションセンター」を設置し、IPS細胞を中心とした再生医療の臨床応用と産業化プロジェクトへの参画をおこなった。2014年10月には、東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター内に、先端的再生医療社会連携研究部門を設置するなどして、再生医療の共同研究に関し布石をうった。
特に、再生医療技術を化粧品開発に応用する取り組みとして「脂肪幹細胞のコラーゲン産生能力をいかに活かすか」を研究テーマに取り組んだ化粧品開発では、新成分「ステムSコンプレックス」を開発した。
ステムSコンプレックスの最大の魅力は、脂肪幹細胞の遊走にある。脂肪幹細胞が属する間葉系幹細胞の能力の一つに、創傷部位を感知して移動、修復するという働きがある。
ステムSコンプレックスには、この移動、修復する働きを高め、脂肪幹細胞を増やしてコラーゲンの産生を高める。同時に、コラーゲン、エラスチンを生む真皮内の線維芽細胞を増殖させ、表皮のターンオーバーを促進させる配合成分「バイタライズコンプレックス」(大豆芽エキスやオリゴペプチド保湿成分)や特許出願中の高浸透処方「ディープターゲットデリバリー」を採用するなどして、幹細胞コスメ「エビステーム」の商品化を実現した。
現在、化粧水、クリームなど7品目を市場に投入し、百貨店での対面販売を中心に個客への提案販売を行っている。
同社は、新保湿成分「ステムSコンプレックス」に続いて、2017年9月に保湿成分「ステムCM」(加水分解幹細胞順化培養液=培養上清由来成分)を開発し、ステムSコンプレックスなどと一緒に配合して商品化した美容液「ステムサイエンス RXショット」を百貨店ルートに追加投入し百貨店内でのイベント開催やDM等に力を入れて取り組んでいる。