【連載】化粧特許と知的財産権⑭ホソカワミクロン、PLGAナノ粒子作製技術開発(上)

2019.07.22

特集

編集部

ホソカワミクロン株式会社(大阪府枚方市)は、1916年4月に創業し、1980年10月に現社名に変更して以来、2019年10月で会社創立100年を迎える。独自の「超微細パウダー技術、機械装置技術」は、粉体機械メーカーとして国内外から高い評価を得るなど金字塔を打ち立てている。

同社の社史の中で一躍、注目を浴びることになったのが「PLGA(乳酸・グリコール酸共重合体)ナノ粒子技術」の開発。
同社は、1980年代に微細技術「ナノテク」の重要性に着目し、岐阜薬科大学と共同でPLGA(乳酸・グリコール酸共重合体)ナノ粒子の共同研究に取り組む中で、2002年~2005年、NEDOの大型国家プロジェクトに公募して採択され、PLGA(乳酸・グリコール酸共重合体)ナノ粒子の開発にメドをつけた。

PLGAナノ粒子の開発は、岐阜薬科大学の研究グループらが考案した高分子球形晶析法のひとつである「水中エマルション溶媒拡散法」(ESD法)にてナノ粒子を作製し,それを利用した「ドラッグデリバリ―システム」(DDS・薬物送達システム)機能を有するもの。
PLGA は「乳酸」と「グリコール酸」がランダムに共重合したポリマー。疎水性で非晶質のポリ乳酸(PLA)と親水性で結晶性が高く有機溶媒に不溶であるポリグリコール酸(PGA)の性質を相補した物性をもつ。

作製したPLGAナノ粒子は、平均粒子径160nmの球形微粒子で,有用成分を内包し,加水分解を制御することで内包成分の粒子外部への徐放機能を有する。
リポソームやエマルションといったDDS基材と異なり,固体粒子であるため、固形製剤化が可能。また、水共存下でエステル結合部位が加水分解するため,体内に取り込んだPLGAは、生体内に存在する乳酸とグリコール酸に戻り,さらに酸素呼吸を行う生物全般にみられる「TCA回路」(クエン酸回路)で水と二酸化炭素に分解して体外へ排泄されることから、体内残留のない安心で安全な材料。

PLGAナノ粒子の利用は、生体中で酵素分解を受けやすい薬物(核酸医薬等)を封入してその酵素分解を抑制しつつ、微細粒子であるがゆえの粘膜への高付着性・滞留性によって薬物吸収性を向上させること。また、PLGA の加水分解制御によって薬物徐放による持続的治療効果を得ることにある。

粉体技術の立場から見たPLGA の大きな特徴は、他のDDS 用微粒子素材(高分子ミセルやリポソーム)に比べ保形性のある固体高分子材料のため機械的粒子複合処理が適用しやすい。例えば賦形剤がマトリックスでPLGA ナノ粒子が分散相として構造制御されたマイクロサイズのPLGA ナノコンポジット粒子が作製できる。
これにより保存安定性とハンドリング性が大きく改善でき、更に従来の固形製剤処理を施すことで、注射の他、顆粒(吸入)や錠剤(経口)、エマルション(経皮)化できるなど幅広い投与法に対応できる。

ともあれ、国家プロジェクトで医薬品等へのナノ技術の応用を大学と取り組む中でナノ粒子技術とDDS技術からPLGAナノ粒子を生み出した。
同社は、PLGAナノ粒子の特許として「粒子表面への被覆技術」を含めて関連特許が2008年から2019年までの累計で「ナノコンポジット粒子」「薬物含有ナノ粒子の製造法」など約25件に上っている。

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