【連載】化粧品各社のイノベーション研究⑦表情・印象技術、印象効果で化粧品需要狙う(下)

2020.02.27

特集

編集部

化粧品メーカー各社は「人の見た目の印象」を科学的に解明する研究に取り組んでいる。若く、美しく見られたいという見た目の効果を化粧品に求める需要は根強い。

花王株式会社(東京都中央区)は、外見的な顔の「若々しさ」がどのように認知されているのか、について30代および50代女性を対象として検討を行なった。
その結果、どちらの年代においても「若々しく見える顔」は「イキイキ感」が特に重要であることを見出した。また「イキイキ感」には、目の状態や目周りの肌状態等が影響を与えており、この影響度は年齢を重ねるほど高いことが示唆された。

同社は「顔や容姿が若い」とはー、見た目の印象について年齢を外見から判断する場合、何を手掛かりとしているか、について研究を行った。「若々しい」という言葉も、日常的に年齢の低さのみならず元気さや活力をあらわす意味で使われている。
このことから同社は「若さ」を年齢という側面でのみとらえるのは不十分と考え、外見的な顔の「若々しさ」はどのような印象と関連が深いのか、そしてそれはどのような顔の特徴によって認知されているのかを明らかにすることを目的に分析した。

分析方法として30代(30名)、50代(32名)の日本人女性の素顔、無表情、正面の顔画像について、美容専門評価者が「若々しさ」の度合い、「推定年齢」、顔画像から受ける印象および「目力がある」「透明感がある」など顔の特徴 を評価した 。これらの評価に対して統計解析を行ない、「若々しさ」と「印象」「顔の特徴」の関係性を分析した。

「若々しく見えるための印象」について重回帰分析を行った結果、「若々しさ」は、30代においても、50代においても「推定年齢」のみならず「イキイキ感」や「清潔感」といった意味も包含する複合的な印象であることが示された。また、若々しく見えるためには「推定年齢よりも、元気、疲れて見えないなどイキイキ感が重要であることが分かった」という。

今回の研究成果について同社のスキンケア研究所は、第21回日本感性工学会大会(2019/9/12~14)において発表した。
今回の研究と合わせて同社は、頭顔部を3次元(3D)計測して年齢印象を研究。目尻が下がるなど加齢変化の特定の組み合わせが実年齢と異なる見かけ年齢を決めていることを突き止めている。

医療分野でも印象研究が進む。株式会社ノエビアホールディングス(兵庫県神戸市)の子会社である常盤薬品工業株式会社(兵庫県神戸市)は、皮膚疾患患者の顔を対象にアイトラッキング分析で他人の視線の動きから印象を測定。化粧によって視線が顔の皮疹部分以外に誘導されることを明らかにした。

ともあれ、大手化粧品メーカー中心に「人の見た目の印象」を科学的に解明する技術開発を推し進めている。だが、顔の動きやメークの仕上がりが他者の潜在意識にどのように働きかけるのかは、いまだに研究途上にあり未知な部分が多い。化粧品メーカー各社の表情・印象技術開発の挑戦は続く。

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