【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑲毛髪染料技術、カネボウ・日華化が新染料剤開発(下)

2020.04.30

特集

編集部

花王株式会社(東京都中央区)傘下の株式会社カネボウ化粧品(東京都中央区)は、手や皮膚に染まらず毛髪性に優れた染毛料を開発した。新染毛料は、手や皮膚に染まらず毛髪に対して高い染毛性を有し、毛髪の仕上がりやコンディショニング効果に優れた特性を持つ。
これまで最も汎用されてきた染毛剤は、酸化染料を用いた2剤型の酸化染毛剤。これは、使用時にアルカリ性下で過酸化水素を作用させて酸化・発色させるもので、扱い方によって毛髪損傷や皮膚刺激を引き起こすケースもみられた。
このため、酸化染料を用いず酸性染料を用いた頭皮や頭髪に対して影響の少ないベンジルアルコール配合のヘアマニキュアなど半永久染毛料が開発されてきた。しかし、直接染料として酸性染料を用い、芳香族アルコールを用いているために、手や皮膚に染着しやすいこと。毛髪の仕上がりやコンディショニング性に劣るなどの課題があった。

そこで、同社は半永久染毛量の欠点を払拭を図った、手や皮膚に染まらず、毛髪に対しては高い染毛性を有した気軽に使用でき、しかも毛髪の仕上がりやコンディショニング効果にも優れた染毛料の開発が強く望まれていた。
化粧品と化学の2つの領域を主軸に事業展開する日華化学株式会社(福井県福井市)は、従来のヘアカラー用染料とは異なる新染料剤「グロス染料」を開発した。2018年1月に特許出願を行っている。
グロス染料は、同社が長年培った合成技術を活用し、アレルギーリスクの低減を図った艶やかな発色を実現する染料。

現在、ヘアカラー用の染料には、主にアルカリカラーに含まれる「酸化染料」、ヘアマニキュアに含まれる「酸性染料」、カラートリートメントに含まれる「塩基性染料」、ヘナ等の「植物染料」の計4種類が存在している。
それぞれの染料の特徴として「酸化染料」(アルカリカラー)は、分子が小さくアルカリ剤によって髪の内部まで浸透し、過酸化水素の働きにより染料同士が結合(酸化重合)して発色する。しかし、アルカリ剤や過酸化水素は、髪へのダメージや頭皮への刺激を引き起こす要因となる。また、分子の小さな酸化染料が頭皮に入り込むことで、アレルギー反応を起こすケースがある。
一方で「酸性染料」「塩基性染料」「植物染料」は、分子が大きく髪の内部まで浸透せずに表面に染着するため、髪や頭皮への刺激が少なく染毛力が弱いこと。また、皮膚に染まりやすい傾向がある。

こうした中、同社が開発し特許を出願した「グロス染料」は、酸化染料よりも分子が大きい二量体(分子2個が結合してできた化合物)でダメージレス・低臭・低刺激のカラーリングが可能になり、髪のキューティクル層付近に染まりやすい特徴を有する。
現在、グロス染料を使ったトリートメント、ヘアカラー等を商品化して市場に投入し、拡販を図っている。

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