【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目㉕制汗剤開発(中)~マンダム、不死化遺伝子を開発し制汗剤開発にメド~

2020.06.16

特集

編集部

株式会社マンダム(大阪府大阪市)は、大阪大学薬学研究グループらとの共同研究でヒト汗腺筋上皮細胞(IEMセル)の不死化による細胞株の樹立に成功した。
研究は、培養下のヒト汗腺筋上皮細胞に不死化遺伝子を導入することで、長期的に筋上皮細胞の性質を維持できるヒト汗腺筋上皮細胞の不死化による細胞株を樹立することに成功したもの。
ヒト汗腺を構成する細胞の内、筋上皮細胞は汗腺の収縮を司る細胞であり、また、汗腺の機能を維持する幹細胞としての機能もある。

このヒト汗腺筋上皮細胞の機能を制御する成分を同定できれば、新しいアプローチの制汗剤の開発や多汗症、熱中症の予防法、治療法の開発等にも繋がる。
そのためには、多くのヒト汗腺筋上皮細胞が必要となるが、これまでのヒト汗腺細胞の細胞株は、ヒト汗腺筋上皮細胞の性質を保持していなかった。
そこで両社は、これまでヒト筋上皮細胞の性質を短期的に維持する方法を確立(2016 年10 月)していたことを踏まえて2020年5月にこれまでの手法を応用して不死化遺伝子を導入することで、長期の培養が可能な不死化ヒト汗腺筋上皮細胞(IEMセル)の樹立に成功したもの。
今度の開発によって次世代制汗剤の開発や多汗症や熱中症の予防法、治療法の早期確立、あるいは汗腺の再生技術の確立に繋がることが期待されている。

マンダムと大阪大学の両社は、共同成果に伴い、IEMセルに関する共同特許を出願するとともに、欧州皮膚科学会(フランス、2019年9月)で発表した。
一方、両社は、今回樹立したIEMセルの委託販売について遺伝子組み換え細胞やその作成用の製品の開発・販売を行うカナダのバイオベンチャー「Applied Biological Materials社」とライセンス契約(ロイヤリティに関する覚書を締結)を締結した。また、今回のライセンス契約にMTA(Material Transfer Agreement=研究機関間で取り交わされる物質の移転・譲渡)が含まれていることにより世界各国へのIEMセルの譲渡ができる。

両社がIEMセルを開発した背景には、日常生活における汗による悩み(多汗や汗臭)を解決することは、生活のクオリティの向上に繋がる。
そこで、両社は、発汗機能の制御に着目し「発汗機能を制御するためには、汗腺を構成する細胞の性質を理解し、汗腺機能を調節する必要がある」と判断。
ヒト汗腺を構成する細胞のうち筋上皮細胞は、汗腺を収縮させ汗を体外へ押し出す機能と幹細胞として汗腺組織の恒常性を維持する機能を持つ。
そのため「筋上皮細胞の活動がヒトにおける発汗に重要なカギを握る」としてヒト汗腺筋上皮細胞の性質を保持したまま長期間培養する方法をみいだした。

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