【連載】台頭する創薬・再生医療ベンチャー【1】 中小機構のファンド出資、創薬・再生医療ベンチャーに活路
2013.09.26
編集部
バイオ創薬、再生医療ベンチャーへの投資と上場が顕著だ。こうしたベンチャーへの投資を行う投資ファンド組成を牽引しているのが経産省所管の独法中小企業基盤整備機構(中小機構)が行うファンド出資事業。そこで、民間VC(ベンチャーキャピタル)が組成するファンドを牽引し、ファンド組成の主力出資者にのし上がった同機構のファンド出資事業の実態と同機構が出資したファンドから投資を受けて上場したバイオ創薬、再生医療ベンチャー各社の事業展開に迫った。
独法「中小企業基盤整備機」のファンド事業は、1999年3月に経産省がファンド法を改正し、中小企業、ベンチャー企業のリスクマネーを供給する狙いで、同機構の前身中小企業総合事団を起点に行ったのが始まり。以来、来年3月で、同機構のファンド出資事業は、満15年になる。
同機構は、1998年度からファンド出資事業として「ベンチャーファンド」「中小企業再生ファンド」「がんばれ中小企業ファンド」「事業継続ファンド」「地域中小企業応援ファンド」の5ファンドを順次、立ち上げた。しかし、個別の政策ニーズごとに細分化されたファンドの区分やベンチャー、中小企業向け投資比率の硬直性が指摘され、多様化した資金ニーズに応えるファンド組成に対し、十分に対応できない側面があった。また、リーマンショック(2008年)以降、民間VC、機関投資家のリスクマネー供給が減少。これに伴い同機構の出資ベースも減少した。
このため、同機構は、2010年7月にそれまでの5ファンドを新たに「起業支援ファンド」「中小企業成長ファンド」「中小企業再生ファンド」の3つに再編(表)。同時に、創業初期段階のベンチャー企業向け投資「起業支援ファンド」の重点化、中小企業向け投資比率の弾力化、出資限度額を従来の30億円から60億円に引き上げるなど出資要件の見直しを行った。
起業支援ファンドは、設立5年未満の事業立ち上げにあるベンチャー企業への投資を目的としたファンドに出資を行う。ファンドは、株式公開(IPO)を目指すベンチャー企業に対して株式や新株予約権付き社債などで投資を行う。
中小企業成長支援ファンドは、新事業の展開や事業の再編、事業承継などで新たな成長・発展を目指す中小企業のへの投資を目的とするファンドに出資を行う。ファンドは、株式取得を基本にしながらプロジェクトファイナンス型の投融資など各種の手法を用いて投資する。中小企業再生ファンドは、中小企業の再生・再建を支援するファンド。
同機構が出資の主要対象とする起業支援ファンドの出資・投資形態は、民間VCがファンドの組成、運営など全ての責任を負う無限責任組合員となって組成した投資ファンドに同機構が出資の範囲内で責任を持つ有限責任組合員として2分の1を出資してファンド組成を牽引。また、無限責任組合員のVCは、投資対象とするベンチャーの成長性、発展性、収益性、上場の可能性などを精査して投資の可否判断を行う。
VCが組成したファンドからベンチャーに投資を行った場合、ベンチャーの株式、社債を取得し、出資額に応じた利益分配を得る権限や意思決定の議決権を持つ。また、投資先のベンチャーが株式公開した段階で、取得したベンチャーの株式を売却して株式売却益(キャピタルゲイン)を得て投資資金を回収する。
一方、ベンチャーにとってファンドからの投資は、重要な資金調達手段の1つ。だが、ファンドやVCといった外部の投資家が株主になることで、自らの将来性や成長性を約束しなければならず資金を得るためのハードルは、極めて高い。
同機構のファンド別出資契約累計(表)の中で、ファンド出資事業を始めた1998年度から2013年3月までの出資先ファンド数は、累計で180本、出資総額5,191億円にのぼる。この出資総額の内、同機構が出資した出資総額は、2,191億円となっている。また、投資先企業数は、累計で3,079社を数えこの内、130社が上場した。
こうした同機構とVCが組成したファンドは、ベンチャー、中小企業の成長支援に大きく貢献している。(続く)
※「連載 台頭する創薬・再生医療ベンチャー」は毎週木曜日掲載です。