「我が社の生薬配合化粧品ビジネス」【9】アートネイチャー、界面活性剤を使わずに育毛剤などの乳化を実現(下)
2015.06.16
編集部
アートネイチャーが合弁会社を設立して5年半を経過した現在までに市場投入した主な共同開発品は、瞬間増毛パウダーの「アートミクロンプラビ」やまつ毛美容液「アートラッシュセラム」がある。
「アートミクロンプラビ」は、白髪をカバーし、髪のボリュームアップを図る増毛パウダーに美容機能を追加するため、佐賀県固有の香酸柑橘類果物「ゲンコウ」から抽出した生薬のチンピエキス(保湿成分)を配合したもの。パウダーとスプレーの2タイプある。
同社は「かつらや稙毛に抵抗がある。また、増毛では、落ちそうで心配といった顧客の声を生かして開発した」という。
増毛パウダーのプラビは、2013年10月から全国の直営ヘアーサロンショップや自社の通販、TVショップ専門チャンネルなどで販売。
同社は「増毛パウダーがTVショップ専門チャンネルにおいて2014年度にもっとも売れた商品の3位にランクされるなど好調な売れ行きを見せている。現在でも1回の放映終了後、平均2000セットのオーダーが舞い込むなど人気が高い商品」と鼻息が荒い。また、生薬を配合したスカルプケア商品として最も注目されるのが2013年8月にネット通販サイトに投入した医薬部外品のスカルプケア商品「ラボモ スカルプ・アロマシリーズ」(写真=シャンプー、コンディショナー、育毛剤各2タイプ6品目)である。
ラボモ スカルプ・アロマシリーズは、共通保湿成分として新疆(しんきょう)ウイグル自治区タクラマカン砂漠の過酷な環境下で育つ植物“カンカ”の抽出エキスに育毛作用があることを確認(2012年3月、日本薬学学会でアートネイチャなど3社発表)するとともに、神奈川大学で開発した三相乳化技術を採用(技術移転)して商品化を図った。
三相乳化技術は、本来、溶け合わない水と油に対して界面活性剤を使わずに安定して乳化させることができる新乳化技術。
頭皮角質層の水分・油分の構造に似た三相乳化球状と類似したラメラ構造(図)の形成に成功し、角質層まで潤いを浸透することに繋げた。これにより1種類の“ナノ粒子”で、様々な乳化が可能になるため、これまでの乳化方法のように複数の界面活性剤を組み合わせて使用する必要がない。また、“ナノ粒子”で囲まれた乳化物は、安定して水に分散するため、界面活性剤の様にお互いが簡単に結合しない。いわば、化学的な乳化ではなく柔らかい親水性ナノ粒子が油滴の周りに付着する物理的作用によって乳化させる結果、シャンプーやコンディショナーの界面活性剤の使用を抑え、髪や頭皮にやさしい処方が可能となるなど100%界面活性剤フリー処方を実現した。
現在、同社の売上高に占める育毛剤、ヘアケア関連商品の売上比率は「約3%程度。引き続き、コンシューマーに近い育毛剤、ヘアケア商品を開発して顧客サービスに努め、収益向上を図って行く考え」としている。