【連載】幹細胞化粧品開発元年【8】コーセー、iPS細胞を次世代化粧品開発に応用(上)
2015.10.13
編集部
コーセーは、皮膚線維芽細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製し、細胞の初期化によって老化した細胞の「テロメア」(染色体の末端部分に見られる塩基配列の反復構造)が回復していることを解明した。
研究は、細胞の初期化によって老化した細胞の「テロメア」が回復可能かを調べたもの。「テロメア」の長さを比較するため、iPS細胞とそれらの元となる線維芽細胞を用いて評価した。その結果、36 歳から67 歳までの間に線維芽細胞の「テロメア」の長さは次第に短縮するが、初期化されたiPS細胞の「テロメア」は、いずれの供与年齢においても長さが回復していることが明らかとなった。
これにより36歳から67歳までの供与者から提供を受けた皮膚線維芽細胞から作製したiPS 細胞をケラチノサイト(皮膚の構造図=表皮の一番下にある角化細胞のこと)に分化させることが判明した。
このことから、異なる細胞に分化する特性を持つiPS細胞は、細胞の供与年齢に関わらず正常に機能することを確認。これにより「ヒトの皮膚などの体細胞に、遺伝子などの特定因子を導入して培養することで、分化した細胞から未分化の多能性幹細胞に初期化することができる」ことを突き止めた。
いわば、老化した細胞が初期化したとき、どの程度回復するか、という研究である。老化の指標として染色体の両端にある「テロメア」は、細胞分裂を繰り返すと共に短くなり、ある限界を超えて短くなると細胞分裂が止まることが知られている。
研究では、細胞の初期化によって老化した細胞の「テロメア」が回復可能かを調べた。
「テロメア」の長さを比較するため、iPS細胞とそれらの元となる線維芽細胞を用いて評価した結果、36歳から67歳までの間に線維芽細胞の「テロメア」の長さは次第に短縮。半面、初期化したiPS細胞の「テロメア」は、いずれの供与年齢においても長さが回復していることが明らかになった。
こうした一連の研究から、異なる細胞に分化するというiPS細胞の特性は、細胞の供与年齢に関わらず、正常に機能することを確認。細胞に刻まれた老化の痕跡は初期化の過程で取り除かれ、iPS細胞の機能に影響を及ぼさない可能性が示唆された。
同社では、現在、iPS細胞化と供与者の加齢について遺伝子レベルでの知見を蓄積しながら、老化過程の再現やメカニズムの解明に取り組む一方、iPS細胞やそれを分化させた細胞を用いて皮膚の生理機能解析や化粧品成分の評価系の確立など次世代化粧品の開発に応用する取り組みを行っている。