【連載】凌ぎを削るメディカルツーリズム(3)凌ぎを削るメディカルツ-リズム

2013.04.12

特集

編集部

日本、中国人富裕層を取り込む

国内の病院でいち早く医療観光に取り組んだのは、千葉鴨川市の「亀田メディカルセンター」。2009年に国際的な信頼を保証するJCIの認証を国内で初めて取得した。

JCIは、米国の国際的な医療評価機関の認証。認証審査は、極めて厳しい。審査は、医療安全、感染管理、職員の資格確認、組織のリーダーシップなど350の評価基準にパスする必要がある。JCIは、世界の医療患者にとって病院選びの最低条件になっていることから国内の著名な私立病院や県立自治体病院などを中心にJCIの認証取得に動き出した。現在、世界45ヵ国、300の病院が認証されている。

世界のメディカルツーリズムに乗り遅れまいと徳島県は、日本の自治体でいち早く医療観光に乗り出した。5年前から県内の大学病院と大手旅行会社の日本旅行と組んで中国人向けに糖尿病検査ツアーを企画。県内の大学病院に導入した全身を一度で診療・診断できる高度医療装置「陽電子放射断層撮影」を使って患者を診断。徳島県産の海藻を使った低カロリー食品、うず潮観光などをセットにして中国の患者と家族を呼び込んでいる。また、日本旅行は、大阪市の医療法人「聖援会」と提携して人間ドッグを受けた後、観光は東京、大阪など好きなところに行けるオーダーメイドが好評。

この中国人向け医療観光の値段は、一人平均100万円。中には、ホテルのデラックスル―ムや移動時にリムジンを手配、食事は三ツ星レストランと超豪華な観光を行う超富裕層もいる。

JTBは、医療ツーリズム専門部署を立ち上げ虎ノ門病院と提携して予約手続きの代行、通訳、病院への交通、宿泊施設の手配などのサービスを始めた。だが、中国、欧米、中近東、アジアなどの富裕層を病院で診療させるためには、医療技術にたけた通訳が極端に少ない。医療のPRにも制約があり販促に結び付きづらい。また、長期の医療ビザの発給、外国人に適応した食事、観光手配、帰国後のアフターフォロー体制など課題を抱える。また、旅行会社も治療面でのトラブルが起きた場合の対処法など慎重な動きにある。

政府は、新たに医療ビザの創設や対中国人の年収の基準緩和によるビザの発給などの施策を講じた。いずれも40兆円に達する医療費の削減や訪日観光外国人1800万人達成をメディカルツーリズムでも担うとの作戦。しかし、医療観光先進国の成功が日本にそのまま当てはまるか疑問だ。猿真似でない日本独自の医療観光戦略が官民挙げて必要となっている。

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