肥満者の食生活と脳機能の研究始まる
2017.01.13
国際部
肥満の人の脳のエグゼクティブ・ファンクション(実行機能)と食事摂取の関係を検討した論文が12月29日、「Appetite」オンライン版に掲載された。
エグゼクティブ・ファンクション(executive function:実行機能)は、脳の前頭前野が司る高次の認知機能を指す。意思決定、行動の切り替え、計画、実行、葛藤、動機づけ、社会的行動などのヒト特有の思考を行う脳の重要な機能である。高齢化社会に伴う認知機能研究が注目される中、最も研究が待たれる領域でもある。
食行動は、この脳の実行機能の個人差に関連しているという研究結果が報告されている。実行機能の不全と不健康な食生活(野菜・果物が少なく、飽和脂肪酸が多い)との関連は、健康な成人で明らかになっているが、肥満成人では検討されていなかった。今回の研究では、実行機能と食事リコール(食べた物を思いだしてもらう調査)の行動尺度を用いて、過体重/肥満の人における飽和脂肪酸、果物および野菜の摂取と実行機能の関連を調べた。減量治療プログラムを開始する1カ月以内に3回の食事リコール評価を行い、知性、計画能力、抑制コントロールを測定する神経心理学的評価を完了した。抑制コントロールと3つの計画能力指数のうちの2つは、独立して果物と野菜の消費量を有意に予測し、抑制コントロールと計画能力の高い人では果物と野菜をより多く消費していることが分かった。
実行機能と飽和脂肪酸摂取との間には関係は見られなかった。研究者らは、過体重および肥満の成人における実行機能が摂食行動にどのように影響するかの理解を高め、肥満者のための栄養介入に実行機能トレーニングを含めることの重要性を示唆し、食生活と実行機能が双方向的に影響を及ぼす可能性があるため、因果関係を決定するためにはさらなる研究が必要であると結論した。