【連載】化粧品各社のイノベーション研究【22】ロート製薬④~4月から副業制度などの新人事制度スタート~
2016.04.27
編集部
ロート製薬は、今年4月から本業以外の副業を認める兼業解禁制度「社外チャレンジワーク制度」と、他部署と兼務で働く「社内ダブルジョブジョブ制度」の新人事制度をスタートさせた。
社外チャレンジワーク制度は、終業後や土日、祝日などを利用して本業以外の副業を認める制度。
同制度の対象者は、正社員約1500人のうち勤続3年以上の正社員が対象。社員のプロジェクトによるアイデアから生まれたもので、企業戦略「コーポレートアイデンティティ」(CI)に基づく「NEVER SAY NEVER」(不可能は絶対にない)を実現するための取り組み。
条件は、副業申告書を人事部に提出し、人事部と経営陣が面談して本業に差し障りがない範囲で副業を許可する。
同社が休日や祭日などに社員の副業を認める社外チャレンジワーク制度を導入したのは、企業の枠に縛られずに視野の広い人材を育成し、社会に貢献する社員を数多く輩出すること。同時に、会社の枠を超えて培った技能や人脈を持ち帰ってもらい、会社の多様性(ダイバーシティ)を深める狙い。同社は、申告人数や許可人数について「非公開」として明らかにしていない。
一方、社内での他部署兼務を認める社内ダブルジョブ制度は、個人の意思に基づいて手を挙げて応募する挙手制度。部署の枠に縛られることなく働くことで、社員のスキルアップや働き甲斐を向上するのが狙い。これも社員のアイデアから生まれた。
同社の副業解禁について医療、化粧品業界のみならず広く産業界に話題として一石を投じたのは、多くの企業が就業規則により従業員の副業を禁止していることが要因。
だが、副業解禁の背景には、同社の経営多角化と無縁ではない。同社は、主力の目薬などの医薬品とスキンケアなどの化粧品事業に加えて、最近では、アイスキャンディーの販売や飲食店の展開、伝統野菜の栽培など事業の多角化を進めている。
同社の機能性食品やサプリメントなどその他の事業は、現在、総売上高の約1割を占めるまでになっている
多角化をさらに強化するには、副業で幅広い人脈や視野を持った社員を育てて、新事業を創出する人材を輩出する戦略が横たわる。
従業員に副業先を事前に届け出させて「会社が副業について審査をする」ことで、新事業の創出を図って行く。
その意味で、同社の副業解禁は「社員個人が副業で収入を得る」といった近視眼的な発想とは異なる内容を持つ。外部に視点を置きながら新事業を創出する社内ベンチャー制度といえなくもない。