【連載】バイオベンチャーの光と影(1)バイオベンチャーの光と影

2013.05.27

特集

編集部

業績赤字でも上場可能、株式市場から資金調達

日本経済の閉塞感を打破し経済の成長発展を遂げるためには、ベンチャーの輩出は欠かせない。ここへきて新しい新薬や再生医療の開発を行うバイオベンチャーの勢いが増してきた。株価の上昇でバイオベンチャーが投資の対象になっていることや上場(IPO)を目指すバイオベンチャーが増えてきたことなどが要因。先行き2~3年間で4社から5社程度が新たに上場すると見られ、政府の新成長戦略にベンチャー創出が位置付けられたこともあってバイオベンチャーに賭ける期待は一段と高まっている。

株価の上昇は、ベンチャーへの投資を促す。株で儲けた資金は、投資ファンドやベンチャーキャピタル(VC)の投資資金となり上場が見込めるバイオベンチャーに投資が振り向けられている。
「業績は赤字でも将来黒字が見込めるベンチャーであれば上場可能」とするベンチャー向け株式市場「ジャスタック」や「マザーズ」などの新興市場が開設されていることもあってバイオベンチャーの上場意欲は強い。また、バイオベンチャーに投資するVCにとってもバイオベンチャーが上場することで、株価収益によるハイリターンが見込めるため、おのずと投資意欲は強まる。

現在、ジャスタックやマザーズなどの新興市場に上場しているバイオベンチャーは、23社を数える。
2011年から2013年5月までの間に上場した主なバイオベンチャーだけでもメビオファームやラクルオ創薬、ユーグレナ、ペプチドリームなど7社にのぼる。

今年5月に東証からマザーズ市場への上場が承認され、6月11日に株式を公開する東大発ペンチャ―、ペプチドリームの2012年6月期業績は、売上高2億6千万円、経常利益▼2100万円、当期利益997万円となっている。これが上場すると仮に1株70万円の株価が付いた場合、株価収益で70億円以上の資金が懐に入って来る。

同社は、2つ以上のアミノ酸が連なった化合物ペプチドの翻訳合成、修飾、スクリーニングの統合技術を持つ。ペプチド様化合物を自由自在に創製できるため、次世代の医薬品候補物質として注目されている。すでに同社は、米ファイザー、ノバルティス、英グラクソ、第一三共などと共同研究契約を結び初期段階から売り上げが発生している。同時に、契約締結時に契約一時金と売り上げに応じたロイヤリティ収入が入る。

バイオベンチャーが上場する最大の眼目は、VCやファンドのように上場が最終目標ではない。株式市場から調達した資金を継続して研究開発に回し、事業化のスピードを上げ経営を安定成長に持って行くことにある。

現在、上場している大半のバイオベンチャーが赤字に陥っているが事業の特質から利益が出るまでには、相当の時間、期間がかかる。経営の真価を問われるのは、上場した後にいかに収益を上げる体質に持って行けるか、に尽きる。

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