【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【32】構造機能科学研究所① ~大学教授らが設立、大学発ベンチャーのはしり~
2016.11.21
編集部
株式会社構造機能科学研究所(京都府京都市、社長 鈴木正夫氏)は、広域大学異分野研究者のコラボレーションによる研究の醸成と社会貢献を目指して、1999年7月に理工学、工学、薬学、医学にまたがる全国の大学教授(生命と健康を分子・遺伝子・細胞等の観点から追究している研究者)ら19人を母体(株主)に設立した日本初の広域大学研究者連携ベンチャー企業。
設立当初から研究拠点を関西文化学術研究都市の大学発ベンチャー第1号として「けいはんなプラザ・ラボ」に入居し、事業の重点領域を化粧品、医薬などスペシャリティケミカルズに力点を置いて研究開発、製造販売を行っている。しかし、起業してから以降、同社の事業は苦労の連続だった。
日本に大学発ベンチャー制度ができる4年前に立ち上げたことで、理・工・薬・医にまたがる広域大学異分野研究者の連携ベンチャーは、初めてのケースとなった。
そのため、異分野連携のベンチャー認定に向けて各省庁と折衝を行うなど、ベンチャーとしての認定に3年の期間を要した。また、技術開発の段階で、開発目標としたゼロエミッション・省エネルギー・ラボファクトリーテクノロジー(研究生産一体型技術)の技術完成までに約6年の歳月がかかった。特に、アトピー等の肌の弱い方にも好適なスキンケア新製品の開発に的を絞り、洗浄料に最大の力点を置いて開発に努めた。
従来の洗浄料では、肌バリアの要である皮膚常在菌(善玉菌)が生息する皮脂膜も洗い流してしまうため、洗浄後の肌は急速に乾燥する。そのため、化粧水やクリーム等の保護保湿剤が不可欠。
皮脂膜という皮膚本来のバリアを壊してしまうことと、用いる保護保湿剤は少なからず皮膚組織に異物性を有するために、皮膚の健康面についてはアトピー等の肌の弱い方にとっては負担になる面があった。
そこで、洗浄料開発の科学技術的課題として
①成分として皮脂膜の主要成分である脂肪酸系脂質をベースにして、添加剤等の余計なものは一切使用しない
②肌の汚れは落とすが皮脂等の保護物質は落とさない(分子間力を利用した選択洗浄機能)
③皮脂膜の修復再生可能な自己組織化能を有する分子集合体の創生(超分子機能) などを掲げて研究開発に力をいれた。
だが、創業時における技術開発や賃借料、人件費、販売費など、常に問題になったのが資金問題。「販売実績を挙げるまで事業に投じた費用は、莫大な金額に上る。薬事法に基づく製造事業に対する融資は、極めて厳しいのが現実」と、事業を展開するうえで資金問題が重く肩にのしかかった。