【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【53】ファーメンステーション① ~コメからエタノール作る、自然派化粧品メーカー等に化粧品原料として販売~

2017.02.22

特集

編集部

株式会社ファーメンステーション(東京都港区、社長 渡辺里奈氏、2009年7月設立)は、化粧品の原料として使われるエタノール(写真)をコメから製造して、オーガニックコスメやアロマオイルなどのメーカーに原料として販売。同時に、同社のオリジナル化粧品開発にエタノールを配合して商品化した化粧品を全国の高級雑貨店で販売するなど、発酵ベンチャーとして事業が軌道に乗ってきた。

エタノールは、米を含む穀類などのデンプンを発酵させて作る天然醸造アルコールと科学的に合成して作る合成エタノールとがある。

同社は、米からエタノールを製造する方法として岩手県奥州市に研究開発拠点を置き、市内の休耕田だった田んぼに植えた非食用品種米を年間2~3トン程度仕入れて、米を酵母の力で発酵させる。発酵させたもろみを自社開発したエタノール製造装置で蒸留し、時間をかけてエタノールを抽出する。ほとんどが米を発酵、蒸留して作る手作業に負っている。

この天然由来のエタノールに消臭、脱臭、水質浄化効果を持つ有用微生物として長年利用されている天然のバクテリアを配合するなどして、オーガニックコスメやアロマオイルメーカー向けに原料として販売している。また、エタノール製造時に廃棄物として「蒸留残さ」が排出される。同社は、この蒸留残さを家畜の餌として養鶏農家に販売するなど、付加価値を向上させた。

現在、化粧品の溶剤として多用されている工業用エタノールの価格は、1リットル当たり100~200円が相場。
これに対して同社のエタノール価格は「その20~30倍の単価で取引されている」というから驚きだ。

「無農薬栽培された米を使用し、エタノール製造者が特定できるといった信頼感がユーザーの安心材料になり高値取引でも引き合いが多い要因」となっているようだ。

このエタノール事業は、もともと奥州市のエタノール実証実験を契機に出会った事業だが、2013年4月に同社の事業として奥州市から正式に引き継いだもの。
同社では「顔が見えるエタノール事業として小規模プラントシステムの販売や原料販売の売上比率を高めるなどして全国各地にバイオエタノール事業を増やしていきたい」と大きな目標を描いている。

同社が進めるエタノール開発事業は、農水省も休耕田の有効活用と非食米の活用策から力を入れている。

こうした中で同社のエタノール事業が全国の休耕田活用にどこまで浸透していくか、注目される。

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