【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証㉑官製ファンド、大学発ベンチャーに集中投資

2017.04.21

特集

編集部

ベンチャー財団の投資減少を映すように、民間VCが組成するベンチャーファンドの新規組成と投資が低迷。半面、中小投資育成など官製ファンドは、上場を計画する中小・ベンチャー等に集中して投資を行うなど際立った動きを見せた。

1991年度から1999度までの9年間の年度別ベンチャーファンド新規組成額の推移は、1991年度1029億8000万円、1992年度1085億6000万円、1993年度6700億円、1994年度と1995年度合わせて1600億円、1996年度1820億円、1997年度1314億円、1998年度1400億円、1999年度4968億円となっている。新規組成ファンド額全体では、約2兆2000億円にのぼる。

この2兆2000億円にのぼる新規組成ファンド額のうち、事業法人が54%と半数を占め、次いで銀行と保険が各18%を占めるなどこれら三者で資金源全体の90%を占めた。また、ベンチャーキャピタルの年度別投資額の推移は、1992年506億円、1993年359億9000万円、1994年と1995年合わせて1517億円、1996年1644億4000万円、1997年1290億5000万円、1998年1047億1000万円、1999年2347億4000万円と98年比2倍強の増加となった。

1999年に投資が大幅な伸びを示したのは、1999年にベンチャー向け新興市場のセントレックス、マザーズ市場が開設された事が主因。
こうしたVC投資の中、1963年に東京、中部、大阪に設立した官製VC「中小企業投資育成株式会社」3社の累計投資件数は、2000年3月で累計808社に達した。
3社合わせた投資件数(累計)の推移は、投資を始めた1963年から1970年3月まで8年間で153社、1970年3月から1980年3月の10年間で357社、1980年3月から1990年3月の10年間で478社、1990年3月から2000年3月の10年間で808社にのぼった。

中小投資育成3社の投資の仕組みは、自己資金による投資(本体投資)と中小機構などから集めた資金を投資組合組成のファンドに出資する二つの投資形態を中心に行った。

中小投資育成3社は、無限責任組合員となって初の投資育成1号投資事業有限責任組合を設立(1999年3月)。また、東京中小投資育成は、2000年9月に無限責任組合員となって東京中小企業投資事業有限責任組合(有限責任組合員東京都、中小企業総合事業団)を設立、上場の計画を持ち継続的に成長する創業7年未満の中小企業を対象に活発な投資を行った。

2000年から民間のVCが大学発ベンチャー支援ファンドを組成した事に伴い、日本政策投資銀行や新規事業投資、中小企業総合事業団が大口出資者になり投資を始めた。

大学発ベンチャー支援ファンドは、産学連携での研究開発成果を事業化し投資リターンが見込まれる特定の大学に限定したファンド。産学連携ファンドとも呼ばれる。中には、バイオやヘルスケアなど特定分野限定のファンドや地域活性化を目論んだ地域限定型ファンドも設立され、投資の矛先が「大学発ベンチャー」(*注釈)に向けられた。

*注釈

大学発ベンチャー
大学発ベンチャーを2002年度から5年間で1000社にする「大学発ベンチャー1000社構想」に基づき、大学の教官、学生及び公的試験研究所の研究成果を技術シーズとして事業化・創業する企業・事業主体者のことを指す。大学の教員(教授、准教授等)が自ら会社を興して役員となり事業化するものや技術を特許化して大学の技術移転機関(TLO)に登録し、学外の企業に特許の実施権を許諾して技術移転して事業化するもの。あるいは、企業との共同研究の成果を企業が事業化または教員等が起業に対し技術指導を行い、事業化する形態を含めて大学発ベンチャーと呼ぶ。2002年から2009年までの累計大学発ベンチャー数(経済産業省調査)は、2649社にのぼる

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