【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証㉓大学発バイオベンチャーが相次ぎマザーズに上場
2017.04.26
編集部
米国の人ゲノム解析によるバイオベンチャーの台頭や国内での大学発ベンチャー1000社計画、大学TLO設立、大学教職員の民間企業での役員兼業解禁、製薬会社の主力医薬品の特許切れ問題などを要因に、バイオベンチャーが一挙に台頭した。同時に、独立系VCを中心にバイオベンチャーに特化したファンドが組成され、大学発バイオベンチャーへの投資が活発化した。政府系金融機関の日本政策投資銀行や新規事業投資などもVCが組成したバイオファンドへの出資を積極的に行った。
そうした中、2002年に大学発バイオベンチャーが新興市場に上場する動きが出てきた。大学発バイオベンチャーの上場第1号は、2002年9月にマザーズ市場に上場したアンジェスMG株式会社(大阪府大阪市)。
同社は、大阪大学のバイオ創薬技術をベースに民間への技術移転が奏功して上場を実現。同時期に、インターネットプロトコル(IP)電話やテレビ会議システムなどのソフトウエアを開発する北海道大学発ITベンチャー株式会社ソフトフロント(東京都港区)もジャスダックに上場した。
この2社に続き、同年12月に熊本大学で開発された抗体技術を製薬企業などに技術移転して成果を収めた熊本大学発バイオベンチャーの株式会社トランスジェニック(福岡県福岡市)がマザーズ市場に上場した。
2003年には、バイオ創薬の株式会社メディビッグ(東京都港区)が会社設立(2002年2月)後1年でマザーズに上場。株式会社メディネット(神奈川県横浜市)、株式会社総合医科学研究所(大阪府豊中市)、東京大学発バイオ創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンス株式会社(神奈川県川崎市)なども相次いでマザーズに上場した。
大学発ベンチャーの上場は、大学のブランド向上と合わせて株式売却益の増加をもたらし、大学の財政に直接、貢献した。
東大の場合、オンコセラピー・サイエンス上場に伴い、上場時の株式売却益は、約23億円にのぼる。また、技術移転によるロイヤリティ収入は、2002年、2003年の2年間で、年平均1億5000万円程度と見込まれるなどいかに上場効果が大きいか、が伺い知れる。
2004年には、産業再生機構(*注釈)で経営再建中のカネボウについて化粧品部門カネボウ化粧品を花王に売却することを決定。2006年1月に花王が4100億円でカネボウ化粧品を買収した。
*注釈
産業再生機構
不良債権の処理と再建を果たすための公的資金を活用した官民ファンド。2003年4月に政府と民間企業共同出資で設立。2003年から2007年までの4年間事業を実施後、解散した