化粧品のM&A動向化粧品各社の企業買収意欲高い、大型案件影を潜める(下)
2017.04.21
編集部
国内化粧品市場は、横ばいの状態が続いていることや単一のブランド展開のみでは中長期的に顧客の需要に応えることが難しくなってきている。
株式会社シーズ・ホールディングス(東京都渋谷区、2015年12月にドクターシーラボから商号変更)は、2016年2月に美容テサロンを展開する「株式会社シーズ・ラボ(東京都渋谷区)」を買収し、傘下に収めた。また、同年7月には、「ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社(東京都千代田区)」(J&J)グループ企業との資本・業務提携を結んだ。
J&Jのシンガポール法人にシーズHDの化粧品ブランド「ドクターシーラボ」などのライセンスを供与し、海外での同社ブランドの認知度や収益性を高める。また、シーズHDは、J&J傘下のスイス企業「シラグ社」から出資を受ける。
同社は、メディカルコスメを発信し医療をバックグラウンドに通信販売や卸売・対面販売と複数販路で顧客の支持を受けてきた。
2017年7月期は、第5次中期経営計画の初年度としてこれまで構築してきたドクターシーラボのブランド価値と1千万人を超える顧客データベースを積極的に活用し、メディカルコスメの領域に留まらずOTC医薬品や他ブランドを取り込みながら事業領域を拡大合わせて海外での商品展開を本格化する計画。
株式会社スクロール(静岡県浜松市)は、天然由来成分の化粧品等を製造・販売する株式会社ナチュラピュリファイ研究所(東京都中央区)の株式を取得(今年1月)し、子会社化した。
アパレル会社「株式会社TSIホールディングス(東京都港区)」は、2016年5月にイスラエルの自然派化粧品「ラリン」を販売するラリンジャパン株式会社(福岡県福岡市)の発行済み株式70%を取得して子会社化した。
アイスタイルの連結子会社「株式会社コスメネクスト(東京都中央区)」は、2016年3月に富山県を中心に90年以上に渡って化粧品販売を行ってきた「株式会社Kコスメ・ボーテ(富山県富山市)」と資本業務提携を結んだ。店舗での集客向上が狙い。
株式会社総医研ホールディングス(大阪府豊中市)は、2015年5月に系列化粧品会社の株式会社ビービーラボラトリーズ(東京都渋谷区)の株式の一部(15.0%)を1億2000万円で中国の化粧品会社「ビューティプラス社」に譲渡した。
株式会社ナリス化粧品(大阪府大阪市)は、化粧品のOEM供給をしてきたインドネシアの製薬会社ファロス社と技術提携(2015年7月)した。
国内初の発毛剤を販売する大正製薬株式会社(東京都豊島区)は、2017年1月、キョーリン製薬株式会社(東京都千代田区)の連結子会社で化粧品通販事業を展開するドクタープログラム株式会社(東京都渋谷区)の株式100%を取得し完全子会社化した。
こうした国内化粧品各社の企業買収や資本・業務提携は、この2年間で22件に上る。
森永製菓のようにM&Aではないが独自技術で化粧品分野に新規参入したケースもみられる。また、アパレル大手の株式会社オンワードホールディングス(東京都中央区)は、オーガニック化粧品販売会社の株式会社ココバイ(東京都渋谷区)と製造会社の米イノベートオーガニクス(カリフォルニア州)2社の株式を取得(買収)して子会社化し、化粧品分野に新規参入した。
この2年数ヵ月の買収等の特徴は、一時期見られた大型の買収案件は影を潜めた。しかし、引き続き、化粧品各社の企業買収意欲は強く、3年後の東京オリンピック開催までに再燃レースが続く公算が高い。