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谷 鉄也が仕掛ける「インフルエンサー」ビジネスの魅力とは

赤字続きでもVAZには光が見えたので社長になって立て直す自信があった

インフルエンサー業界に入ったきっかけを教えてください。

谷氏:VAZで社長をやる時は、共同ピーアールというPR会社の社長もやっていたんですね。それもあって世間一般からは、PR業界からインフルエンサー業界に入ったというふうに、見られていると思うんですよ。共同ピーアールという会社は業界では老舗で、そこで新しくインフルエンサー事業に乗り出す事になるんです。これからの時代は“動画”だと感じていたのと、インフルエンサー関連はこれから絶対に伸びて行くと思ったので、VAZに出資しました。それがインフルエンサー業界に関わる最初のきっかけです。

そこからVAZの社長になられた経緯を教えてください。

谷氏:VAZはもともとは株主として出資する立場で見ていて、いずれは上場して行く会社だろうと見込んでいました。一時期バーって伸びたまでは良かったのですが、その後いろいろと問題が起こってしまって所属していたヒカルやラファエルといった看板YouTuberが辞めてしまったんです。そしたらもう業績は急降下ですよ。遂には創業者が『もうこれ以上は難しい』といい出すので、『じゃあ僕がやろう』という流れでバトンタッチしたんです。僕が社長をやる前、会社が一番酷かった時の話をすると、月の赤字を3,000万円も出していたんですよね。それも毎月です。毎月毎月3,000万円のキャッシュが消えて行くのって怖いですよ。それを目の当たりにして行動した事は、『僕に会社をまかせてください』って、26人の株主を順番に説得してまわったんです。25人まではすぐに首を縦に振ってくれたのですが、最後の1人がとにかく頑固な人で全然納得してくれない。結局、説得するまでに半年近くもかかってしまいました。その間、無くなってしまった手持ち現金が 1億5,000万。
スタートした状態はあとどれくらいで会社の現金がなくなるというカウントダウンのタイミングでした。共同ピーアールの経営危機を乗り越えた経験から「VAZを絶対に立て直さなくては」と決意しました。

社長としてはVAZと共同ピーアールは兼任されているのですか?

谷氏:今はVAZと新東通信という広告会社の社長、それから共同ピーアールの会長を兼任しています。

インフルエンサー事業に乗り出すにあたって、PR会社と広告会社が関連企業としてリンクしているのは最強だと感じるのですが、そういうイメージはありましたか?

谷氏:そこは凄く期待しましたね。時代とともに注目されるメディアが変わって来ていて、特にいまの若年層はテレビや新聞を見なくなっていますよね。それで何を見ているのかというと YouTubeやTikTokなんですよ。この業界で一番大きいのは Googleですがそういうのを見ていて、若い人に人気の YouTuberを抱えるプロダクションを自分でやるのって面白そうだなって凄く思いましたね。

「インフルエンサー」のような若い世代のものを扱う会社を立て直す上で、戸惑いや不安はなかったのでしょうか?

谷氏:弱っている会社を立て直すっていうと、「絶対にやめておけ!」とか「無理だ!」という人が結構いるんですよ。共同ピーアールの再建に取り組むときもそうでした。そういうまわりからの声をたくさん聞いてしまうと、正直戸惑うし不安にもなりましたね。

その声を振り切って、社長として『何とかしてやろう』という意識で前進できた理由は何だったのでしょう?

谷氏:やっぱり会社として大きな魅力があったからですね。VAZ、それと共同ピーアールもそうでしたが、私の目からはキラキラと輝いて見えていたからなんです。そんな磨けば必ず光る会社をみすみす潰してしまうのはもったいない!『ちゃんとやれば絶対に立て直せる!』、そう信じて前に進みました。

無駄を省き営業力を強化すれば利益が出せる会社へと昇り始めた

そういう思いからこのビジネスを具体的にどうやって立て直されたのでしょうか?

谷氏:最初はシンプルに無駄を省きました。必要のないものにお金をかけ過ぎていたんですよ。例えば事務所も凄くいい所に入っていましたしね。稼いでもいないのにそんな所で贅沢してかっこつける必要もないですし、すぐに安い所に引っ越しましたよ。それと社長の給料は赤字の間は給料0にしました。黒字化した今でも実は貰ってませんが(笑)。

社長の給料が無しというのは改革するのに響きますね。社員のみなさんを動かす上でも説得力があったのでないでしょうか。

谷氏:そう思います。でも節約だけしていても会社は立ち直りません。しっかりお金を稼がない事には潰れてしまいますからね。次に収益を上げるために何をすべきかを考えました。VAZはもともとインバウンド(お客様からの問い合わせ)案件が多かったのですが、それだけでは赤字のまんまです。『もっと自分たちから動こうぜ!』という意識から、営業力を強化したんです。最初にいた営業担当者は4人ですよ。それを3倍から4倍へと動く人数を増やして収益体制を強化しました。これをやって会社は大きく変化し出したと思います。

事業運営としてはさらにどんな改革をされたのですか?

谷氏:VAZが運営するメディアを3つのチャンネルに絞り込みました。以前はたくさんのチャンネルがあったのですが、僕が社長になって3つだけにしたんです。あれもこれもではなく、絞った事でVAZらしさをより明確に打ち出せるようになったと実感しています。

チャンネル制作の中では社長のどんな意見が反映されていますか?

谷氏:VAZでは「めるぷち」という少女YouTuberグループを持っているのですが、メンバーの中からグループの顔となる「選抜生」決定する「めるぷち選抜決定戦」というイベントを展開しているんです。要はAKB48の「選抜総選挙」みたいな企画で、このオーディションの映像をまるごとコンテンツ化したら面白いのではというアイデアを出してみました。この「めるぷち選抜決定戦」を動画コンテンツとしてYouTubeに載せた所、 2023年が500万回、2024年が1千万回再生して、大当たりしました。ここまでの大成功を収められたのはクリエイティブを担う優秀な現場スタッフの頑張りのおかげだと感謝しています。

「めるぷち」のような若い世代のコンテンツはどのように運営されているのでしょうか?

谷氏:どんな企画が当たるかとか、どんな番組をやればいいのかを考えるのは、現場に任せています。例えば小中学生の女の子たちが「筆箱の中身の動画」を見たいなんて、僕には想像もつきませんからね。でも、そういう企画で案外再生回数が出たりするんですよ。僕の意見だけで進めてしまったら怖いですからね。でも気になった時は『これどうなっているの?』って現場に聞くようにもしています。それで『これは違いますよ』『こっちの方がいいですね』って説明されて納得すれば、そこは真摯に受け止めます。逆に現場の考えが『このやり方は間違っていました。すみません』ってなる時もありますけどね。何より YouTubeっていうのは結論がすぐに出ますからね。やってみると、間違っているかどうかの答え合わせも早いんですよ。

現場の声を聞く耳を持って、色んな考えをしっかりと受けとめながら進める事は、社長という立場ではなかなかできないですよ。素晴らしいと思います。

谷氏:若者の事を分かっているふりもできないですし、そもそもZ世代やα世代の女の子たちの気持ちを僕が全て分かっていたら逆におかしいですからね。現場で制作している女性たちですら、その世代と比べたら10歳も上ですからね。ところがうちの現場スタッフたちはとても豊かで新しい感性を持った精鋭ばかりで、それを補えるだけの発想力があるからこそ、こうやっていいものを創り続ける事ができるのだと思います。

社長とそんな現場によって生み出されたVAZの強みはなんでしょう?

谷氏:VAZは少女向けの作品、少女インフルエンサーが圧倒的に強いです。先日も「人気インフルエンサーランキング」で、1位から10位までにOBも含めてVAZから4人がランクインしたんです。1つの会社から4人も選ばれるなんて、あり得ないと思います。

コンテンツ化に成功した「めるぷち」のパワーで少女向け企画で圧倒的な強さを発揮

少女向けの企画で、そこまでの強さを発揮できるようになった要因は何でしょう?

谷氏:やっぱり「めるぷち」の持つパワーだと思いますね。毎年「めるぷち」の新メンバーを決める「めるぷちオーディション」を開催していますが、今ではお金をかけなくても全国から1,200人以上の女の子たちがエントリーしてくれるまでに成長しました。ファイナリストは遠方から飛行機に乗ってわざわざ東京の決戦大会の会場まで来てくれるのですが、最終的に選ばれるのはたったの4人か5人ですよ。そこを目指して全国から集まって来てくれる少女たちの熱い思いに「めるぷち」への憧れはどんどん大きくなっていると感じます。

AKB48もそうでしたが、みんなが憧れるコンテンツを作ったら人は集まって来ますよね。

谷氏:そうなんですよね。今まで溶けていったお金はめるぷち等 VAZのコンテンツ育成のためになってゆくと信じて頑張ってきました。おかげで今ではVAZのアセットになって、企業としてのブランド価値を高める結果にも繋がっています。本当に続けて来て良かったです。そうしてVAZと関わってかれこれ4年。早いものですね。

VAZに4年関わられて、いまどんな感触をお持ちですか?

谷氏:社長は他の会社と兼任でやっているので偉そうな事はいえませんが、VAZはやればやっただけ返って来る魅力的な会社だと感じています。毎月の赤字が3,000万円の時に関わって、前の社長と一緒に毎月の赤字を1,000万円まで減らしたんです。そこから僕が社長になって2年目で黒字化して、その先の利益は倍々に増えていますからね。今期は目標売上を達成できて7,500万円くらいの黒字が出ました。かなり売れましたよ! もちろん会社のみんなにもボーナスで還元できたので非常に良かったです。

やりたいのは芸能プロダクションではなくマーケティングカンパニーなんです

コスメヲタちゃんねるサラ、ぷろたんなどVAZを代表する人気YouTuberの等身大パネルがずらっと並ぶ。こういうのを作ってもらえるのも成功の証!
「SNS×芸能」で活躍できるスターを育成する新時代ハイブリッド型プロダクションとありますが、これまでの芸能事務所との違いはどんな所でしょうか?

谷氏:VAZは「YouTuberプロダクション」と思われていますが、僕自身はうちが「芸能プロダクション」だと思った事は一度もないんです。本当にやりたい事は「マーケティング」なんですよね。若年層に対して圧倒的なリーダーシップを持っている「マーケティングカンパニー」になりたいというのが我々の根幹にある考え方なんです。そこがこれまでの芸能事務所との違いだと思います。うちは影響力のあるYouTuberをたくさん抱えていて、それが会社の大きな武器になっているのも確かです。でもYouTuberを使って何を仕掛けるのかが大切であって、マネージメントがメインではないんですよ。YouTuberを使って色んな問題解決ができる「マーケティングカンパニー」なんです。その考えは変わる事なく、これからもそうあり続けたいと思っています。

「プロダクションコンテンツ事業」「ソーシャルマーケティング事業」「メディアプラットフォーム事業」と主に3つの事業を掲げていらっしゃいますが、それぞれについてどんな取り組みをされているのか教えてください。

谷氏:「プロダクションコンテンツ事業」は、先ほどいったYouTuberを抱えている事務所的な機能です。この事業ではタイアップなどもやっています。それをベースにSNSのマーケティングを展開しようというのが「ソーシャルマーケティング事業」です。 3つ目の「メディアプラットフォーム事業」は、この両方のノウハウを活用して展開しているチャンネル事業になります。現在 は「めるぷち」「Mel TV」「カルドラマ」の3つのYouTubeチャンネルがあって、要は自社でオリジナルメディアを持っているという考えですね。現在「めるぷち」のYouTubeチャンネルには40万人の会員がいるのですが、特に女子中学生に絶大な人気があって、『日本の女子中学生の半分は見ている』とまでいわれているんですよ。

プロダクションでありながら、自社メディアまでを持っている点は業界を勝ち抜くためにも大きな武器になっているという事ですね。

谷氏:その通りです。マーケティングができるという会社は、普通ならただ理論的なノウハウがあっても、例えば『明日ここにZ世代の女の子を300人を集めろ』といわれてもできないですよね。それがVAZならできるんです。なぜなら、自社のコンテンツを持っているので、そういう事までできてしまうんです。マーケティングの理論だけでなく、コンテンツと合わせて両方持っている点が他社にはないうちの特徴なんです。コンテンツとマーケティングを掛け算すると、そこにはデータが生まれて来ます。その結果「データマーケティング」もできるようになるんです。そういう意味では、「Z世代の女の子たちに関するマーケティング」がどこよりもできるポテンシャルが我々にはあると強く感じています。2025年はそういう領域でもさらに力を入れて行きたいですね。

ここ最近、子供のなりたい職業で「YouTuber」などのネット配信者が上位にランキングされていますが、そうなった要因はなんだとお考えですか?

谷氏:それは「スター」になれるからですよ。大谷翔平に憧れるのと同じです。大谷翔平みたいなスターが出て来たら野球選手になりたいと思うだろうし、井上尚弥が出て来たらボクサーになりたいと思うんですよ。我々の子供の頃もそうでしたが、いつの時代もその時のスターに憧れて自分もそうなりたいと願うんです。今の子供たちからすればYouTuberという仕事には夢があると映っているのでしょうね。

これからYouTuberやTikTokrになりという夢に向かって VAZのオーディションにチャレンジされる方も多いかと思います。そういった方が採用されるのに必要な条件は何でしょう?

谷氏:VAZではSNSでの発信を前提としているので、オーディションを受ける前にSNSをやっている必要があります。小学生、中学生の女の子なら「めるぷち」のオーディションを受けてもらうのがいいと思いますが、それ以外の方は条件としては自由なので、自分に自信があったらどんどんオーディションを受けてみてください。ただ誰でも受かるわけではなので、まずは自分の得意なジャンルを決めて、SNSでフォロワーを増やす努力をする事が必要ですね。

フォロワー数が多くないと採用はされませんか?

谷氏:フォロワー数が少なくても減点はされませんが多い子は注目されますね。フォロワー数は自分なりに努力した一つの結果ではあるので。契約にはエージェント契約と専属契約があります。専属契約だとマネージャーも付けますし、かなりのレベルの人材じゃないと契約はしません。エージェント契約はそこまでハードルは高くありません。フォロワー数が今は少なくてもやり方次第で全然伸ばせるので気にする必要はありません。稼ぐ基準でいうと絞ったジャンルで10万人くらいのフォロワーがいると案件が来始めるような気がします。

フォロワー数が100万人を超えるようなトップインフルエンサーになれるのは一握りだと思いますが、10万人にも満たない人を発掘したり、教育して育てて行こうという考えはありますか?

谷氏:ポテンシャルのある新人発掘はしていきます。もちろん事務所に所属しただけでは売れません。アドバイスや教育をやってゆく必要もあるのでインフルエンサーと事務所が一緒に成長していけるような環境をつくれたらいいですね。売れたインフルエンサーはもともと光る素質をもっていた筈ですが、自分だけでなく周りの力も借りて影響力のある存在になった筈です。いや俺は自分の力だけで有名になった、というインフルエンサーもいるかもしれませんが(笑)。その周りの力の中心点にVAZがなれればいいと考えています。インフルエンサーと事務所が共存共栄できる「インフルエンサー・エコシステム」とでもいうような生態系をつくっていきたいです。

個人でやる限界をフォローできるからこそ、インフルエンサーはVAZに所属する意味がある

では御社に所属する事のメリットを教えてください。

谷氏:オフェンスとディフェンスで分けると、オフェンスは、どうすれば再生回数が伸びるのかというデータやノウハウがありますから、そこはタレントとも共有できます。事務所に所属せず、自分で考えてやったとしていい時はあるんですが、必ず途中で伸びが止まってしまうんです。そこから立て直してさらに伸ばしていくには、やっぱり第三者の力がないとなかなか難しいと思うんですよ。昔のようにYouTubeもTikTokも誰がやってもむちゃくちゃ伸びた時代でもないですからね。特に今からYouTubeを始めても相当なパワーがない限り個人では難しいでしょうね。それと案件を取って来るのも我々の仕事で、それをタレントに供給できるのも所属するメリットだと思います。

ではディフェンスの部分では事務所に所属するメリットは何なのでしょうか?

谷氏:YouTuberというのはわりと「炎上」しがちなものなんです。なぜかというと再生回収を伸ばそうと危ない橋を渡ってしまいがちだからです。そんな「炎上」した時に、事態にどう対処すればいいか、裁判をする際は相手とどう闘えばいいのか、弁護士は誰に頼むのって、10代とか20代ぐらいの人だと対処できる知識はほとんど持ち合わせていないですよね。それが専属契約の人だと会社が手厚く対応しますし、エージェント契約の人でも必要に応じてフォローできる所もメリットでしょうね。

インフルエンサーの影響力を知る上でフォロワー数が判断材料になると思います。全体の0.1%とも言われるフォロワー数100万人以上のメガインフルエンサーを目指して、これから多くのフォロワー数を獲得するために必要な事はなんでしょう?

谷氏:いまの時点でYouTubeで100万人以上のフォロワーを持っている人は、もちろん実力があって色んな努力をしてきた結果だと思います。その多くのYouTubeがそんなに騒がれていない時期からスタートした人たちだと思います。きっと10年前にYouTubeを始めていれば、フォロワー数を伸ばす事は今よりたやすかったでしょうね。ところが配信者が増えすぎた今から始めて、100万人のフォロワーを得られるのは相当な人じゃないとかなり難しいです。色んなSNSがありますが、その時に伸びているメディアに乗っかる事もフォロワー数を増やす上では必要です。そういう意味では、今から始めるなら TikTokがいいかも知れないですね。

TikTokが伸びている理由は何なのでしょう?

谷氏:今流行りのショートムービーを広げたのはTikTokなんです。いきなり30分の長尺動画が流れても見てもらいにくくなってきていて、今ではYouTubeですらショートムービーが全盛の時代に入っていますからね。食いつきやすくて飽きのこない、 5分とか1分の短尺動画を高速で回して行くというのが主流のやり方で、そのショートムービーのジャンルで支持を得られたTikTokが伸びている要因だと思います。戦略でも切り抜きなどショートムービーをフックにして長編に誘導するという手法が人気です。そこで興味を持った人を本編に誘導するという方法を取る人が多いですね。

以前はテレビや雑誌が情報の発信源だったと思います。それが特に若い世代ではネットメディアが中心になった要因は何だと思いますか?

谷氏:これまではずっとテレビが主流でした。テレビが王様で、老舗として新聞があって、雑誌は専門メディアとして君臨していたわけです。あとラジオもありますが。そういったメディアの権威や信頼性は今でも強いのですが、それと比べてネットメディアはまだそこまでには至っていません。逆にそれがないから既存メディアができなかった表現が自由にできたんです。もちろんネットでも後から規制が強化されるようになって、違反すると「BAN」される事もありますが。そんなネットメディアに誰が飛びついたのかというと、若い人たちなんですよ。若者たちからすれば年寄りが偉そうな事いっているメディアより、ネットの方が面白いと(笑)。さらにいつでもどこでも見られる機動性という点でも、YouTubeやTikTokなどのネットメディアが若い人のニーズにマッチしたんだと思います。

強いコンテンツを持ったインフルエンサーと関わる事で美容業界は活性化できる

美容専門誌としての質問ですが、美容系インフルエンサーが注目される理由はどこにあるとお考えでしょう?

谷氏:注目されない方がおかしいと思いますね。美容系インフルエンサーをメディアで譬えるならば美容系の専門誌やネットメディアで、新聞やテレビのようなマスメディアではないと思うんです。専門メディアゆえに専門性、信頼性が担保された人たちなので、美容に興味のあるユーザーがピンポイントで欲しい情報は、美容系インフルエンサーが発信している情報なんです。自分の好きなインフルエンサーがどんな化粧品を使っていて、どんなメイクの仕方でこんなに美しくいられるのか、それを知って真似したいんです。SNSの時代では、美容系インフルエンサーから得る情報こそが最もホットでパワフルなんだと思います。

VAZで注目の美容系インフルエンサーをご紹介ください。

谷氏:YouTubeの登録者数が130万人の「コスメヲタちゃんねるサラ」という美容系インフルエンサーがいます。この数が美容に特化した130万人なので、総合的には500万人~600万人くらいの価値があると我々は思っています。彼女はすごく真面目で誠実な女性で、プチプラからハイブランドまでとにかくコスメが大好きな人なんですよね。何より美容系1本でここまでのトップインフルエンサーに登りつめた点でもイチオシなんです。たまに旦那さんも登場したりして、夫婦で仲良く展開してる所も人気だったりします。ぜひ注目してください。

美容業界は今後インフルエンサーとどう向き合い、どのように活用して行けば良いのでしょうか?

谷氏:日本でいうインフルエンサーは、YouTube、TikTok、InstagramなどのSNSに出ている人の事を指している場合が多いですよね。これが海外だと、その業界で影響力のある人物を意味するKOL(キーオピニオンリーダーの略)というんですね。インフルエンサーとはインフルエンス(影響力)を持つ人という意味なので、本来はSNSは関係ないんですよ。ある意味、専門的な事に強くて影響力があるなら 、S N Sをやっていなくてもその人はインフルエンサーなんです。それが今は SNSを通じて、自分の持つコンテンツを影響力をもって拡散できる人がインフルエンサーと呼ばれるようになりました。でも最も大事なのはコンテンツです。どんなに魅力的な人であっても、コンテンツが強くなければユーザーには届きませんし興味を持ってもらえません。美容業界でも、中身のあるコンテンツを強い発信力を持って展開しているインフルエンサーを見極めた上で関わっていく必要があると思います。そういう美容系インフルエンサーをうまく活用して、業界の活性化に役立てていただきたいです。

話は変わって、谷社長が今ハマっているような事があれば教えてください。

谷氏:僕はいつも何かしらにハマっているはずなんですけどね。今は何だろう? やっぱり仕事ですかね(笑)。僕にとっての仕事は“沼”なので、もう抜けられないですよ。それは面白い事でもあるし、大変な事でもありますね。でもなんだかんだいって、自分の好きな事をやっているのでトータル考えれば「仕事は面白い」ですし、これからの新しい展開にも期待しています。「まだまだこんな所で終わりたくない!」という思いでやっています。

谷社長が今注目されている事はありますか?

谷氏:「銀座」ですね!ここは本当に魅力的な街で、なくなって欲しくないものがたくさんあります。今風なものばかりではダメで、昔ながらのバーとか、スーツの仕立て屋だとか、着物屋さんとかがあって、若い人だけでなくダンディなおじいちゃんが胸張って歩いている。そんな銀座は世界一の街だっと思っていますので、その魅力や文化を広く伝えて、後世にも残して行きたいですね。

銀座の魅力や文化を伝えるために取り組んでいる事があれば教えてください。

谷氏:僕は銀座という街が大好きで、銀座に育ててもらったと思っています。そういう思いから銀座には感謝を込めて恩返しがしたいんです。それで10年前から「銀座プロジェクト」として銀座にあるバーやバルなど60店舗を束ねて、毎年イベントを開催しています。それ以外にも「銀座クリエイティボ」として、銀座オリジナルのクリエイティブ作品を作って、それを世界に発信しようという活動も行っています。また弊社の2階スペースはキッチン兼スタジオで、普段ここは社員食堂としても利用しています。ちなみに今日は納会だったので、おでんを作って社員のみんなと美味しくいただきました。このキッチンスペースをイベント会場として活用して、銀座にゆかりのある料理を作って食文化を発表するという企画もやっていますね。

社内のキッチンで展開されているイベントで好評だった企画があれば教えてください。

谷氏:惜しまれつつも閉店した銀座の老舗洋食店で「キャンドル」というレストランがあったんですね。そのお店で伝説のメニューといわれた「チキンバスケット」を復活させたイベントは大好評でしたね。このキッチンがオープンする時に、100人分のチキンバスケットを作ってくれたら、全メディアでPRする宣伝広告費は無料で行いますというバーター条件を持って、キャンドルの人を口説きに行ったんです。その交渉が成立して、1日限りでしたが伝説の「チキンバスケット」を復活させて、たくさんの方に喜んでいただけました。

最後の質問になりますが、2025年の新しい年に向かって新たな取り組みや展望をお聞かせください。

谷氏:VAZという会社が、2025年にさらに大きく羽ばたくためのチャレンジをします。本当の「Z世代のリーディングカンパニー」になるために、「めるぷち」に続く新しいコンテンツの発表、新しい商品も開発していきます。また名古屋支社を作って、さらに広い範囲での活動を目指します。かなり色々な仕掛をしていますので、そこで僕の想像を超えた大きな収穫があると思っています。ご期待ください!

株式会社VAZ 代表取締役社長 谷鉄也氏 /1970年愛知県生まれ。青山学院大学、ロンドン大学を経て、2000年に新東通信入社。ダイレクトマーケティング、新規事業立ち上げ、 M&Aなどを手掛ける。2013年9月代表取締役社長就任。2015年8月共同ピーアール代表取締役社長、2020年12月VAZ代表取締役社長、2024年4月新東通信代表取締役社長就任。

ヌーヴェル日本版(LNE)公式サイトwith美容経済新聞 2025年6月正式リリース!

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編集部(東京)

ヌーヴェル日本版 編集部(東京)…株式会社美容経済新聞社が、フランスLes Nouvelles Esthétiques社より国際的な美容ヘルスケア専門誌『Les Nouvelles Esthétiques』の日本版ライセンスを取得。東京編集部では独自の特集企画とフランス版翻訳記事をオンラインとオフラインで配信しています。

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