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在日フランス大使館 貿易投資庁‐ビジネスフランス日本事務所 二コラ・セスティエ氏

日本の料理と街の静穏さに感心

来日されてから、どのくらい経ちますか。

二コラ氏:2023年秋に赴任してきましたから、1年半です。私が所属するビジネスフランス(フランス貿易投資庁)は、主にフランス企業の輸出支援や、フランスに進出を希望する外国企業の事業展開のサポートを行う政府機関です。日本で言えばJETRO(日本貿易振興機構)にあたる組織です。もう14年間、ビジネスフランスで働いています。

日本に赴任してこられる前は、どちらの国におられたのでしょう。

二コラ氏:中国におりました。アメリカとチリにも赴任経験があります。日本に来てからは、それらの国々ともまた違う、日本独特の文化を体験しています。日々発見の連続です。もちろん、日本はフランスでは文化的にもよく知られている国の一つではありますが、実際に来て生活してみて初めて知ったことがたくさんあります。

初めて知ったことには、例えば何がございますか。

二コラ氏:一番は料理です。食材も調理の仕方も全然違う。フランスで食べて知っていた日本料理とは比較になりません。また、特に驚いたのは、街が静穏であること。私が知っているヨーロッパの街はもっと騒がしいのです。日本は、単に聞こえてくる音が静かというだけでなく、相手を慮るとか、お互いに敬意を払うという態度が一般的で、総じて穏やかで、他の国の大都市にある攻撃的な空気があまりないことに感心しました。

美容やヘルスケア関連では、ご自身の事柄で、赴任してきてから変わったことはございますか?

二コラ氏:食べる量が増えました(笑)。必要なエネルギーを違う食材で摂取するから、前よりたくさん食べないといけないのでしょうか。日本はお菓子の種類が多く、スナッキング(おやつ)の文化が発達している印象があります。あれは食事で足りないエネルギーを摂取しているのかもしれませんね。日本式で食事をしているとお腹が空くのです。フランスにいたときはそんなに間食をしませんでしたから。

日仏の美容業界の違いは、消費者のスタンスにも

美容に関心の高い日本の読者は、「フランスならではの美容習慣や、まだ日本に入ってきていない美容法があれば知りたい」と思っています。例えば肌の保湿に関しても、日本ではとにかく化粧水を肌に入れて入れて、“潤い保湿”を重視する傾向にあると思うのですが、基本的に日本より空気が乾燥しているフランスでは、どちらかというとクリームで、オイル成分でバリアを張る方向に発想しませんか?

二コラ氏:それに関しては、当部署の化粧品担当貿易専門官の椎名三花子から補足させていただきましょう。

椎名氏:フランスのスキンケアブランドは、メイクを落とすためのふき取り化粧水であるミセラーローションをラインアップに加えていることが多いです。乾燥を防ぐために、水で洗い流すタイプのメイク落としではないルーティーンを提案しているのかもしれません。一方で、フランスのブランドには、日本人女性がよく使用する保湿ローションがラインアップに欠けていることもあります。これは、化粧水よりもクリームやオイルでの保湿を重視しているからだと考えられます。

二コラ氏:フランス人から見ると、日本の人たちのほうが肌への関心が高いように感じます。いろんなスキンケア商品があり、種類が豊富でバリエーションも多い。日焼け一つとっても、日本では日焼けは肌によくないという意識をみんなが持っていて、親が子供にそれを教えたりする。それに比べるとフランスでは、「日焼けしてるほうがカッコよくない?」みたいな感覚がまだあります。やっと最近になって変わってきましたが。

その変化は世代的なものでしょうか。若い人たちのほうが昔の世代より肌への関心が高い、というような。

二コラ氏:そうですね…。たぶん、SNS等でたくさんの情報に触れられるようになったことが大きいと思います。肌はどうやって老化していくか、とか、自分が使っている化粧品が何でできているか、効果はどうか、といったことに関心を持つ人が、昔より増えました。それに伴って美容関連メーカーも更に開発に力を入れるようになってきていると思います。最近の傾向としては、若い人が新興ブランドを立ち上げる例が増えてきました。

フランスには昔から、世界的にも著名な美容化粧品ブランドがたくさんありますが、それらの老舗に押されて、実力ある新興ブランドがなかなか日の目を見られないといったことはございますか。

二コラ氏:もともとフランスは、大手ブランドだけでなく、中小企業の市場も非常にダイナミックです。大手ブランドがこうした若いブランドを取り込むことで自らの新陳代謝を図ろうとするケースもあります。一方で、若い世代が立ち上げたブランドは、作り手の顔が見え、何を目指しているのか、素材は何をどのように使っているのかなどがわかるという特徴があります。つまり、“クラフト”的なものがうけていると言えるでしょう。

パーソナルな香りを持つことで、人格にエレガンスが備わる

フラゴナール Belle de Grasse(ベルドグラース)「Les Fleurs du Parfumeur(レフルールデュパルフュマー)」シリーズ。
左からオードトワレ、ソープ、ハンドクリーム
仮にご自身がフランスの美容関連企業のCEOだったなら、日本の美容及びライフウェルネス市場のどこを、どんな商材で狙われますか?

二コラ氏:私はフランスの商材全部をPRするのが仕事ですので、特定の商品を推すことは難しいですが、香水にチャンスがあると考えています。もしかしたら、香水は日本ではまだ美容のカテゴリーに入っていないかもしれませんが、フランスでは香水は非常に重要な美容のアイテムです。一人ひとりが“自分の香り”を持っていて、それがその人の“人となり”にエレガンスをプラスする。この文化は日本の方々にもマッチすると思いますよ。

なぜ、そう思われるのでしょう。

二コラ氏:日本人は感覚が細やかです。一般の人たちも身だしなみがきちんとしていますし、電車が発着する際に鳴る音が駅によって違っていたりしますよね。そんな日本人なら、嗅覚も豊かなはずです。何も、強い香りである必要はないのです。日本人らしい、繊細で柔らかな香りでいい。私は時々、自分が知っている人で「この人にはこの香りが合うだろうな」と想像することがありますよ。

フランスの香水ブランドというと、例えば何がございますでしょう。

二コラ氏:「フラゴナール」をご存じでしょうか。本国フランスでは誰もが知っている、昔からある老舗の香水ブランドです。この企業が、私どもが昨年11月に開催した「フレンチ ビューティエクスペリエンス」というビジネスイベントに出展したとき、私はそのブランドの香りに再会して即座に、懐かしい祖母の面影を思い出しました。同じような例では、フランスではお母さんが子供を幼稚園に連れていって別れ際に子供が寂しがって泣いたとき、自分が付けている香水を子供の服にかけたり、持ち物にかけたりします。すると子供が安心して泣き止む。香りがその人の象徴になっているのですね。そういう文化がフランスにはあります。

素敵な文化ですね。ちなみに、フラゴナールは日本にはもう入ってきているのでしょうか。

二コラ氏:現在、日本側の代理店を探しています。フランスにいらした日本人観光客の方がよくお土産にされるので、日本人の好みに合っているのではないかと思います。

変えてはいけないものがある、それでこそ本物の文化

柔らかな緑色の瞳をもつニコラさん。
今年は東京日仏学院を会場に、化粧品からファッション、インテリアなどフランスのライフスタイルを提案する「Exposition Art devivre Tokyo 2025」を計画している。

二コラ氏:いずれにしても、日本に進出したい香水メーカーに対しては、キツイ印象を抱かせない、柔らかい香りの商品が日本向けには合っていますよ、とアドバイスしています。フランス企業に日本の文化や商習慣を伝え、理解を深めてもらい、日本でのビジネスの成功をサポートすることが私たちの役目ですから。

なるほど。他にはどんなことをアドバイスされていますでしょう。

二コラ氏:香りを変える必要はないですよ、むしろ、変えてはいけませんよ、とアドバイスしています。強い香りの香水を日本市場向けに柔らかく調整することはあっても、香りそのものを変えてはいけない。フランスの香水はフランスの香りがするものであるべきです。それが本物のフランスの文化を輸出するということですから。

日本の消費者も、日本向けに別物にされた香水なら惹かれないと思います。『ヌーヴェル・エステティック』日本版もまた、本物の価値を読者に届けることがテーマです。よろしければ、新装復刊になった本誌にエールをいただければ幸いです。

二コラ氏:フランス本国で『ヌーヴェル・エステティック』誌は、美容のプロフェッショナルのための業界誌として、古くから定評があります。新しく始まる日本版は業界向けから一般の方向けに読者ターゲットが変わるとお聞きしました。美というものはたくさんの人のためのものだと思います。今後のご発展を期待しています。

在日フランス大使館 貿易投資庁-ビジネスフランス日本事務所
〒106-8514 東京都港区南麻布4-11-44
公式サイト:http://www.businessfrance.fr
Tel:03-5798-6118
(化粧品担当官直通・日本語対応)

二コラ・セスティエ/在日フランス大使館 貿易投資庁 ビジネスフランス日本事務所貿易投資部次長 上席貿易専門官
経営学の学位取得後、国際分野でキャリアを重ね、貿易投資庁-ビジネスフランスではフランスの輸出支援を担当。アメリカ、チリ、フランス、中国などへ赴任し、各地でさまざまな異文化を体験した。現在は日本事務所の次長に就任し、化粧品・装飾・住居分野といった消費財部門の統括を兼務。フランス大使公邸を会場に、フランスの美容関連商材に特化して紹介するビジネスイベント「フレンチ ビューティ エクスペリエンス」を一昨年、昨年と続けて開催。今年はその拡大版として、東京日仏学院を会場に、化粧品からファッション、インテリアなどライフスタイル全般を網羅する「Exposition Art de vivre (アール・ド・ヴィーヴル展)Tokyo 2025」を6月に開催するべく、計画を進めている。

ヌーヴェル日本版(LNE)公式サイトwith美容経済新聞 2025年6月正式リリース!

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編集部(東京)

ヌーヴェル日本版 編集部(東京)…株式会社美容経済新聞社が、フランスLes Nouvelles Esthétiques社より国際的な美容ヘルスケア専門誌『Les Nouvelles Esthétiques』の日本版ライセンスを取得。東京編集部では独自の特集企画とフランス版翻訳記事をオンラインとオフラインで配信しています。

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