「スキンケアが効かない」「肌がくすんで見える」── こんな“夏バテ肌”の実感を抱える人は、実は約3割にのぼるという調査結果もあります。猛暑と冷房、寝苦しい夜、生活リズムの乱れ… 夏の複合的なストレスによって、肌はバリア機能の低下、ターンオーバーの乱れ、インナードライなど、多面的なダメージを抱えたまま秋へ移行してしまうのです。その実態と、今こそ秋に向けて必要なケアを、最新のデータとメソッドを交えてご紹介します。
肌の夏バテ度は実は3割超!リアルなデータに基づく実感

参照:資生堂調べ(Web調査、15〜69歳 男性:洗顔料週5日以上使用者 女性:洗顔料 化粧水を週5日以上使用者 出現構成比に合わせてWeb集計)
「夏バテ肌」を自覚する人は少なくない。資生堂の調査では、男女ともにおよそ3割が「夏の終わりに肌の不調を感じる」と回答しており、症状としては乾燥・かさつき、くすみ、毛穴の目立ち、敏感化などが上位に挙げられている。これは一時的な印象ではなく、紫外線によるメラニン生成の持続、冷房環境下での角層水分量低下、自律神経の乱れによる血流停滞といった複合要因によって裏付けられる“科学的に説明できる現象”である。
夏バテ肌は、秋の“ゆらぎ”や冬の乾燥トラブルの前触れになる点だ。角層バリアの弱体化は外的刺激を受けやすくし、ターンオーバーの遅延はシミやくすみの固定化に直結する。つまり、夏のダメージを秋に持ち越すかどうかが、その後数か月の肌状態を左右するのである。
ダメージを蓄積する4つの原因と肌機能への影響
1. 夏特有のストレスの積み重ね
夏の紫外線は表皮に炎症を起こし、メラノサイトを刺激してメラニン産生を持続させます。結果としてシミ・くすみが固定化しやすくなります。さらに冷房環境による低湿度は角層水分量を減少させ、バリア機能を低下させます。加えて、寝苦しさや食生活の乱れはホルモンバランスに影響し、ターンオーバー周期(約28日)が乱れて肌再生力が低下します。これらが複合的に作用し、夏バテ肌として顕在化します。
2. 自律神経の乱れが血流&ターンオーバーに影響
猛暑と冷房による急激な温度差は、自律神経に過度な負担を与えます。交感神経優位が続くと末梢血流が滞り、酸素・栄養供給が不十分となり、肌のターンオーバーが鈍化。これにより「ごわつき」「くすみ」「毛穴の開き」が目立ちやすくなります。また、血流停滞は線維芽細胞の働きを弱め、コラーゲン産生の低下にもつながり、長期的にはハリ不足を招きます。
3. 汗によるうるおいの流出と雑菌リスク
汗の蒸発は体温調節に不可欠ですが、同時に角層の水分も奪います。さらに、汗と皮脂が混ざることで肌表面はアルカリ寄りに傾き、常在菌バランスが乱れ、黄色ブドウ球菌などの増殖を許してしまいます。これによりバリア機能は一層低下し、赤み・かゆみ・ニキビなど炎症性トラブルを引き起こしやすくなります。夏の「マスク蒸れ」も、このメカニズムによって肌荒れを助長しています。
4. インナードライによる肌の複雑化
一見ベタついて見える肌でも、内部の水分量が不足する「インナードライ」は夏に頻発します。皮脂分泌が活発な一方で角層水分は不足しており、肌は油水バランスを崩した状態に。これにより毛穴詰まり・大人ニキビ・炎症後の色素沈着など、多様なトラブルの温床になります。さらにインナードライはターンオーバー遅延を招き、古い角質が蓄積することでごわつきや透明感低下に繋がってしまいます。
4ステップで解消する“夏疲れ肌”──消費者ニーズと市場トレンド

1. リセット洗顔と角質ケアで肌土台を整える
夏の紫外線や皮脂酸化は過酸化脂質を生み、角質肥厚やターンオーバー停滞を招きます。これが「くすみ」や「ごわつき」の正体です。
【市場動向】
2025年上半期は、「摩擦レス」角質ケアが大きな潮流。スクラブから酵素・PHAへと移行が進み、「毎日でも使えるマイルド酵素洗顔パウダー」が国内外で売上を伸ばしています。特にZ世代は「毛穴ケア × 肌負担レス」を重視し、SNSでのレビュー拡散が購買を牽引。
【注目カテゴリ】
酵素洗顔パウダー、AHA/BHA入り角質ケア化粧水、敏感肌対応の低刺激ピーリング
2. 深層保湿でバリア機能を再構築
冷房乾燥や汗の蒸発により角層水分量(TEWL)が低下し、インナードライを助長します。バリア機能を再構築するには「水分補給+脂質補強」の二段階が必須です。
【市場動向】
近年、敏感肌対応の高機能保湿が市場を拡大。特に「高濃度セラミド配合」「微細カプセル化ヒアルロン酸」などの差別化処方が支持を集めています。2025年は「セラミド原料高騰」にもかかわらず、プレミアムラインからマス市場まで幅広く投入され、保湿市場の競争が加速。
【注目カテゴリ】
ヒト型セラミド美容液、高分子+低分子ヒアルロン酸配合クリーム、ナイアシンアミド入りオールインワン
3. 抗酸化・鎮静ケアで炎症をクールダウン
紫外線後は炎症と酸化ストレスが持続し、メラニン過剰生成やコラーゲン分解を引き起こします。これを放置すると「シミ」「たるみ」として固定化。
【市場動向】
世界的に定着したのがCICA(ツボクサエキス)市場。韓国発のCICAは2024年に欧米でも市民権を得て、2025年は「CICA+ビタミンC」「CICA+レチノール」といった複合処方へ進化。日本国内でもプチプラからデパコスまで幅広く展開され、消費者の「鎮静ニーズ」に応えています。
【注目カテゴリ】
ビタミンC誘導体美容液、CICA配合鎮静マスク、アラントインジェルローション
4. インナーケアと生活習慣の調整
外用ケアだけでは補いきれない肌回復には、食事・睡眠・ストレスケアが重要。
【市場動向】
国内の美容サプリ市場は前年比二桁成長を継続。特に「ビタミンC+コラーゲン」「プロテイン+美肌成分」の複合型がZ世代・ミレニアル層に支持されています。さらに**「美肌ドリンク×スキンケア」のクロスマーケティング**がブランド戦略として広がり、外側と内側の両輪ケアを打ち出す企業が増加。
【注目カテゴリ】
ビタミンB群・オメガ3・コラーゲンペプチド入りサプリ、美容ドリンク、睡眠サポートデバイス
まとめ ― 秋の肌を支えるのは“エビデンス × 習慣”の両立
“夏疲れ肌”は、紫外線・冷房乾燥・生活リズムの乱れなどが複合的に重なった結果として現れる、一過性ではない肌トラブルです。その影響を放置すれば、秋の「ゆらぎ肌」や冬の乾燥トラブルへと連鎖し、消費者にとってもブランドにとっても長期的な課題となります。だからこそ今求められるのは、科学的エビデンスに基づいた正しい知識と、生活の中で無理なく続けられる習慣の両輪です。角層水分量やターンオーバー周期といった皮膚科学の理解を背景に、酵素洗顔・高濃度セラミド・CICAなどの製品を適切に提案すること。そして同時に、睡眠・食事・ストレスマネジメントといった生活習慣改善を組み合わせることが、秋の肌を健やかに保つ鍵となります。市場の視点から見ても、こうした「エビデンス× 習慣」を橋渡しできるブランドが、シーズナル美容の信頼を獲得し、消費者との長期的な関係を築くことになるでしょう。