化粧品OEM・ODM各社の「ユーザーニーズに対応するわが社の事業展開」【5】 独自技術で差別化はかる容器開発~三洋化学工業(上)
2014.07.30
編集部
化粧品を入れる容器は、化粧品産業の幅広いすそ野を形成する重要な位置を占める。そうした化粧品と密接な繋がりを持つ化粧品容器メーカーとして三洋化学工業株式会社(大阪市、社長井上厚弘氏=写真)の事業展開が注目される。
同社は、1976年にプラスチック製品製造業として創業。1996年に女性用化粧品容器に着目して経営路線を化粧品容器の開発・OEM生産に業態転換した。2001年にプロピレン(PP)樹脂製2層構造の円筒形容器「ミスティ」を商品化以降、広口容器を中心に開発を進めこれまで、PET樹脂容器の「バサラ」をはじめキャップの内部空間にシートを封入しオリジナルデザインを可能とした「エル」や2層の樹脂の間にフィルムを挟み込み、イラストやグラデーションを可能とした「エウレカ」、ミニサイズのPET樹脂容器で、コストパフォーマンスに優れる「リノ」など現在、事業の主力を成す化粧容器を相次いで商品化し、化粧品、OEMなどのユーザーに提案・販売している。取引社数は、仕入先を含めて約200社。この内、約50社がメインの取引で、売上高の約8割を占める。
いずれの化粧容器も、化粧品を保護し腐敗を防ぐ容器の機能性向上と合わせて2層の樹脂の間にフィルムを挟み込み、イラストなどのデザインを可能とした衝撃に強い点に特徴がある。
ここへきて第3世代の化粧容器と位置付ける「テコ」(T-eco=写真)を開発した。エコを考える意味合いを込めて名付けたテコは、大阪地域創造ファンド事業に採択されて開発したもの。取替式容器のシール密封技術を確立するなど具体的成果を実現した。
テコは、金型と樹脂を一体成型したインサート成型の外容器に、詰め替え用容器(リフィル)をセットして使用する。使い終わったリフィルは、プッシュ部分を指でつまむと外容からワンタッチで取り外せて新しいリフィルと交換できる。利便性、環境に優しいアメニティ型化粧容器。
こうした差別化を図った化粧容器の開発を実現したのは、樹脂の中にラベルを一体化させた「夢現デコレーション技術」と名付けた独自技術に負うところが大きい。
化粧容器に文字やイラストなどのデザインを入れる場合、通常の方法では、容器表面に直接印刷するか、別途ラベルに印刷しておいて張り付ける方法が取られる。しかし、表面に凹凸加工してある容器の場合、技術的な制約からデザインが制限されること。また、容器を二層構造(外側は透明な素材)にしてその隙間にラベルを挟み込む手法が採られている。だが、工程が複雑になるため、納期やロットの面で問題があった。
そこで同社は、2層の素材(プロピレン樹脂とアクリル樹脂)の間のラベルを密着させて一体成型し2次、3次加工を不要にして生産できる「夢現デコレーション技術」を開発、特許出願した。
井上社長は「2層の素材を一体化しているため、空気の層がなくプラスチック素材の内面からデザインが浮き出るような美しい仕上がりになる。また、容器表面に立体的な加工を施すことができデザインの自由度が高いことや販代が必要なく一体成型で納期が短縮するなど生産の面でもメリットが大きい。さらに容器の開発を進化させて行きたい」と強調する。
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